ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
今回のテーマは、「仮想通貨やフィンテック関連企業などが集う、ロンドンのCCフォーラムに行ってきた」。
CCフォーラムとは
CCフォーラムは、2019年10月14日から16日にかけてイギリス・ロンドンのクイーンエリザベスIIカンファレンスセンターで行われたイベントです。
CCフォーラムには、世界中からフィンテック・ブロックチェーン・仮想通貨・AI関連企業が集まり、革新的なテクノロジーへの投資を検討しているファミリーオフィス、投資ファンド、VCキャピタルが参加しました。
フォーラムのステージでは、ビットコイン・ジーザスとして有名なロジャー・バー氏や、仮想通貨ビリオネアとして知られるブロック・ピアス氏、サトシ・ナカモトの正体とされている人物、FUSION BANK(フュージョンバンク)の役員陣、フォーブスのジャーナリスト、大使の方などが登壇。
さらにロンドンの国会議事堂では、参加企業のパネル展示や昼食会なども行われていました。
今回のフォーラムで最も注目を集めたのは、仮想通貨と法定通貨の両方を扱うハイブリッド銀行「FUSION BANK」開行の正式発表と今後の計画で、フィナンシャル・タイムズ、フォーブス、BBC、CBSなどの記者が来場するなど、メディアの注目度の高さも感じました。
銀行をエスクローとしたOTC取引がスタンダードになる?
フォーラムに参加して私が感じたのは、今後、銀行をエスクローとした仮想通貨・暗号資産のOTC取引が、世界のスタンダードになるかもしれないということです。
OTC取引(Over The Counterの略)とは、元々は証券取引の世界で使われていた言葉で、証券会社が手持ちの債権などを投資家と直接売買することを指します。
株式などの有価証券は、証券取引所の取引市場で売買されるのが一般的ですが、取引市場を通さず、証券会社の窓口(カウンター)越しに行われる取引ということから、Over The Counter取引と呼ばれるようになりました。
仮想通貨取引では、仮想通貨取引所で売買を行うのが一般的です。しかし、仮想通貨の世界でも徐々にOTC取引のニーズが高まっています。
仮想通貨の世界におけるOTC取引には、「仮想通貨取引所が大口取引として投資家に提供するサービス」と「取引所を介さずに、個人・企業が直接仮想通貨の売買を行うこと」の2パターンがあります。
後者の場合、取引する相手との信頼関係が重要になりますが、直接取引には当然リスクがありますから、信頼の置ける第三者を仲介させて取引の安全を担保する第三者預託(エスクロー)を利用することがあります。
今回フォーラムで注目を集めたFUSION BANK(フュージョンバンク)でも、OTC取引サービスを提供するとのことですが、FUSION BANKのように仮想通貨と法定通貨の両方を扱う銀行・金融機関が世界中で増えていけば、私は、それらが第三者預託(エスクロー)として最適なのではないかと考えています。
仮想通貨は今、モラルを問われている
今回参加したフォーラムの雰囲気や注目度の高さを見ても、海外、特にヨーロッパでは仮想通貨・暗号資産は「可能性を秘めた新しいテクノロジー」と認識されている印象です。 一方日本では、仮想通貨・暗号資産というと「何やら怪しいもの」「詐欺」というネガティブなイメージが強く、せいぜい「投機」という印象だと思います。
この認識の違いは、2016~2017年に起こった仮想通貨ブームが影響しているのでしょう。ブーム時は、「仮想通貨投資で大儲けしよう」「儲け損ねたくない」と、多くの日本人の方が仮想通貨投資を始めました。なかには「3カ月で数十倍・数百倍になる」と謳われた仮想通貨もあり、狂気に近い状況だったと思います。
広めていたのは、ほとんどがネットワーカーたちです。解釈はいろいろとあると思いますが、言い換えればマルチ商法やねずみ講。すべてのネットワークビジネスが悪だとは思いませんが、最初から悪意を持って(騙す意思を持って)お金を集めていた仮想通貨プロジェクトもあったでしょう。最初から悪意がなくても、お金で人が変わってしまう(お金が集まったことでトンズラしてしまう)ケースもありました。
仮想通貨の歴史をひも解いてみると、世界でも犯罪に悪用されてきた歴史はあります。闇サイト・シルクロードでは、武器や麻薬の密売にビットコインが利用されていました。仮想通貨ブームのときは、ICOなどの資金調達の手段として仮想通貨が利用され、投資詐欺も起きました。
仮想通貨が、速くて安い送金・決済手段として優れていること、目利きができれば投資対象として優れていることは事実ですが、悪用されてきた歴史も認めなければなりません。
そして各国で仮想通貨に関する法整備やルール作りが進められている今、企業であれ個人であれ、仮想通貨を使う側のモラルが問われているのだと思います。正しいモラルを持った企業や個人が、仮想通貨を正しい方向に進めていかないと、本当の意味での普及は実現できないでしょう。
次回は、「仮想通貨の買い時・売り時」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。
オフィシャルブログも運営中。