ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
今回のテーマは、「仮想通貨ブームで生まれた億り人たちの末路」。
億り人とは? さらに兆人も?
「億り人」という言葉は、2017年の仮想通貨ブーム・ICOブームで生まれた造語です。仮想通貨投資によって、資産総額が1億円を超えた人を「億り人」と呼ぶようになりました。
滝田洋二郎さんが監督を務めた2008年の日本映画で、第81回アカデミー賞外国語映画賞や第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞した『おくりびと』をもじったものですね。
2017年当時、資産総額が億どころか兆に達した投資家も少なからずいます。日本人投資家よりも外国人投資家に多いですが、そんな人たちは「兆人」と呼ばれているかもしれませんね。と言っても、私が勝手に呼んでいるだけですけど。
宝くじ当選者と似た末路……?
そんな億り人たちですが、その後はどうなったのでしょうか。
2017年のブームは、やはりただのブームでしたから、その後はビットコインやリップル(XRP)、イーサリアムなどのメジャーな仮想通貨の価値はどれも下がっています。ですから、「億り人だった」「あの頃は良かった」という人が大半かもしれませんね。
しかし、中には狂ったようにお金を使った人もいるでしょう。まさに「あぶく銭」という感じです。タワーマンションや豪邸を買ったり、プライベートジェットを買ったり、高級車を買ったり、高級な腕時計を買ったり、高価なジュエリーを買ったり、夜の遊びに散財したり……。宝くじに当選して人生が狂ってしまった人と似たような末路をたどった方も多いと思います。物欲や自己顕示欲で一瞬は満たされるのかもしれませんが、私はそこには全然興味がありません。
人格の成長・成熟と収入は、階段を上がるように比例しながら着々と上昇した方が良いと思います。その方が、人生を崩さずに済みそうですからね。急に大金を手にすると、人生を狂わせてしまう人が多いようです。
中には堅実に使った人も
散財してしまった人も多いようですが、「子どもの教育費に使った人」や「夢だったカフェをオープンした人」「起業の準備資金にした人」もいます。そういう使い方には夢がありますよね。
もちろん、経営は簡単ではありませんから、カフェを開業したり起業したりした人が、その後も幸せな人生を歩み続けているのかはわかりません。早々に廃業してしまった人もいるかもしれませんが、短い期間でも夢を叶えられたのですから良い使い方だと私は思います。
多くの人はICO投資で塩漬け状態or詐欺に遭った
億り人になった人の中には、ICOに投資して失敗した人も多くいるでしょう。早い時期からビットコインなどに投資していた人には、「自分は投資の天才だ」と錯覚してしまう人もいます。これは致し方ないことだと思いますが、錯覚は怖いですよね。
自分を投資の天才だと過信し、さらに投資に回せる資金が潤沢にあると、一瞬で資産はなくなります。日常生活で1億円を消費するのは大変ですが、投資で1億円を失う(浪費する)のは一瞬です。
特に「自分は仮想通貨の目利きができる」と過信した人は、当時流行っていたICOに投資してしまったでしょう。塩漬け状態で動かせないだけなら、「いずれは現金化できるかもしれない」という淡い救いが多少ありますが、「そもそも悪意のある案件だった」という詐欺被害に遭ってしまった人も少なくないはずです。
なぜかセミナー講師になる人も
そして、中には「億り人が教える仮想通貨投資セミナー」というようなセミナー講師に転身する人もいます。
「自分はこんなに仮想通貨投資で儲けた!」
「悠々自適で豪華な生活を送っている! (羨ましいだろう)」
「その成功ノウハウを教える!」
というようなストーリーで勧誘してきますが、このセミナー講師は本当に投資で利益を出したのか、セミナー受講料で稼いでいるのかよくわかりません。投資で稼いでいるならそのまま投資をしていれば良いのですから、わざわざセミナーをする意味がわかりません。
目立ちたがりで人前で話すのが大好きという人を除けば、投資で生計を立てている人は、セミナーなんて面倒なことをわざわざやらないでしょう。投資で生活するようになると、目立つことや有名になることにメリットを感じなくなりますし、家族や友人と静かに暮らすことを望む人の方が多いと思います。私の周囲も、そういう人の方が多いですね。
本連載は、「仮想通貨の普及」というライフワークの一環として続けています。記事を見た方から、ときどきセミナーなどの登壇依頼をいただきますが、友人づての依頼でなければ基本的にはお断りしています。知らない人の前で話すのは恥ずかしいですからね。
投資案件の勧誘など、記事を読んだ人から営業行為を受けることも多くありますが、そんな人が周囲に寄ってきてしまう自分はまだまだだなと反省しますし、もっと成熟しないといけませんね。
次回は、「仮想通貨の使い道」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。