ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今回のテーマは、「トークンエコノミーの可能性」について。

トークンエコノミーってなに?

トークンエコノミーとは、言い換えれば「独自の経済圏」のことです。トークンとは、第22回第23回の記事でご紹介したように、「他の価値と交換できるもの」のこと。仮想通貨やアマゾンポイント、楽天スーパーポイント、商品券などもトークンの一種です。

このトークンを発行して、独自の経済圏を新たに作ろうというのがトークンエコノミーです。一般的には、商品やサービスを購入する際、円やドルなどの法定通貨を決済に利用します。給与や報酬も、ほとんどの人は円で受け取っているでしょう。納税も円でしますよね。そのため、日本は円というトークンの経済圏(エコノミー)です。

しかしトークンエコノミーでは、商品やサービスを提供する事業者が独自のトークンを発行することができます。その独自トークンを利用する人が増えれば、トークンに新しい経済的価値が発生したことになります。トークンの価値は、需要によって決まるという仕組みです。発行枚数(供給)が限定されている仮想通貨(トークン)であれば、需要が高まるほどその価値は上昇します。

どんな種類があるの?

トークンエコノミーには、すでにさまざまな種類があります。本稿では、「PoliPoli」「VALU」「ALIS」「LINEトークンエコノミー」「GMOオープンソースブロックチェーン」の5つのトークンエコノミーについてご紹介します。

「PoliPoli」は、トークンエコノミーを利用した政治家と有権者のコミュニティサービスです。仮想通貨・ネムのブロックチェーンを使って発行されたトークンを、コミュニティ内で利用することができます。有権者は、政治に関係するアンケートに回答するとトークンを入手できたり、手に入れたトークンを応援したい政治家へ送ったりすることが可能です。改ざんが極めて難しいブロックチェーン技術を利用していますから、賄賂などの不正利用は不可能でしょう。

「VALU」は、コミュニティ内で自分のトークン(VALU)を発行して売買することができます。発行したVALUの価格は、自分で決めることが可能です。他のユーザーのVALUを購入することで、その人のタイムラインや限定コンテンツを閲覧することができるようになります。自分で応援したい人を見つけてVALUを購入したり、自分自身に新しい価値をつけたりすることができるSNS的なサービスです。

「ALIS」は、信頼できる記事を書いた人や見つけた人が報酬を獲得できるプロジェクトです。情報に溢れている現代では、どの情報が正しいのかわかりにくくなっています。ALISは、正しい情報を提供したり見つけたりした人が評価される仕組みです。報酬は、ALISの独自トークンで支払われます。記事を書く人は、広告料を受け取ることなく報酬を得ることができるため、ポジショントークをすることなく、信頼性の高い記事を書くことができます。

「LINEトークンエコノミー」は、メッセージアプリとして有名なLINEが提供するブロックチェーンを利用したプラットフォームです。コンテンツ作成やレビュー投稿などをすると、「LINK Point(国内向けコイン)」と呼ばれるトークンが獲得できます。LINK Pointは日本円への換金はできないため、仮想通貨というよりはポイントに近いと考えたほうが良いでしょう。獲得したLINK Pointは、LINEポイント(LINEのサービスなどに使えるポイント)に交換することができます。

「GMOオープンソースブロックチェーン」は、企業や地方自治体などが独自トークンを発行できる「地域トークン」のオープンソースです。小渕首相時代に、地域振興券という仕組みがありましたが、それと同じようなものです。紙を印刷する必要もありませんから、コストや手間をかけることなく独自トークンを発行できます。地域トークンを観光客向けに発行し、地元の店舗で使ってもらうことでポイントを還元することも可能です。

どんなメリットがあるの?

トークンエコノミーには、いくつかのメリットがあります。「無価値から価値を生み出せる」「銀行に頼らない資金調達ができる」「契約や決済を自動的に行える」などです。

トークンエコノミーが実現すれば、これまで価値のなかった趣味や特技、時間などに価値をつけることができます。VALUやALISなどがその一例です。「価値をつける」というより、「価値を見出し、その価値を認めてくれた相手と取引ができる」と表現したほうが正確かもしれません。これまで価値を見出せなかった経験や知識にも、価値をつけられるようになるかもしれませんね。

まだ実績のない新興企業が株式を発行して資金調達をするには、高いハードルがあります。また、銀行や金融機関からの資金調達にも、当然ですがハードルがあります。しかし、トークンエコノミーによって、株式をブロックチェーン上のデジタルトークンとして発行することで資金調達が可能です。企業だけでなく、個人でも夢の実現のために資金調達することが可能になるでしょう。銀行からの融資に頼らなくても起業や事業拡大できるのは良いですよね。

トークンエコノミーでの取引に、第5回の記事でご紹介したスマートコントラクトを活用すれば、管理者や仲介者を経由せずに契約や決済を自動的に行えるようになります。スマートコントラクトでは、ブロックチェーン上に決済履歴とともに契約履歴が残るため、書面の作成や認証が不要です。契約と決済が同時に処理できるのは便利ですよね。

たくさんの可能性を秘めたトークンエコノミーですが、まだまだ新しい概念なので、普及するまでには時間がかかるでしょう。トークンが使える場所はまだほとんどなく、通貨としての役割を果たすには不十分です。しかし、それだけ伸びしろがあるということですから、今後が楽しみですね。

次回は、「仮想通貨の発行枚数(発行量)って何のこと?」というテーマについてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。