ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今回のテーマは、「改めて知りたい、仮想通貨を使うメリット」について。

海外送金が安くて速い

私が仮想通貨を持とうと思った理由は、海外送金代わりに便利だからです。バリ島に移住し、バリ島で事業を始めることになったという経緯もあり、海外送金をする頻度が高くなるだろうと思ったことも理由のひとつです。法定通貨の海外送金に比べれば、仮想通貨の送金は手数料も安く済みますし、送金速度も速く一瞬で相手に届きます。

今ではたくさんの種類の仮想通貨が生まれましたから、どの仮想通貨も安くて速いというわけではありませんが、送金に便利な仮想通貨はたくさん存在します。海外送金を頻繁に行う人は、資産の一部を仮想通貨に変えておくのも良いかもしれません。仮想通貨の送金は中央機関を介さないため、高い手数料や面倒な送金手続きが不要になります。

長期保有していれば利益を得られる可能性がある

仮想通貨選びに失敗しなければ、長期保有しているだけで利益を得られる可能性があります。まだ価値の低い仮想通貨であれば、将来大きく価値が上がるかもしれません。

仮想通貨の種類は、国内外の株式や投資信託などの銘柄に比べれば、まだまだ数は少ないでしょう。仮想通貨投資でも投資先の選定が大変というのは変わりないのですが、保有したいと思える主要な仮想通貨はそう多くありません。主要な仮想通貨をまずは少額ずつ買ってみる、というのも良いかもしれませんね。すでに価値がある程度上昇している主要な仮想通貨であれば、「数百倍」という大きな利益はもう期待できないかもしれませんが、数十%の上昇や数倍でも十分な利益だと思います。

仮想通貨の市場は、まだまだ成長段階です。第35回の記事でご紹介したように、実需が増えなければ市場も広がらないでしょう。送金や決済で利用されるという実需に即した成長のほうが、2017年の仮想通貨ブームのような急成長よりも健全です。

現在あるさまざまな仮想通貨とそのプロジェクトを見ると、今後はフィンテックの領域だけでなく、あらゆる分野でブロックチェーン技術が利用されるようになるでしょう。今はまだ価値の低い仮想通貨でも、ビジョンに共感し、プロジェクト初期からの応援者としてその仮想通貨を保有しておけば、将来花開くかもしれません。日々の価格の乱高下に一喜一憂するのではなく、未来を見据えた長期的な視野で考えたほうが良いでしょう。投資したことを忘れるくらいがちょうどいいです。

資産の分散になる

円やドル、ユーロなどの法定通貨は、インフレの影響を受けて大きく価値を下げてしまうことがあります。資産を法定通貨だけで保管するのはリスクもありますので、一部を仮想通貨にしてみても良いでしょう。

過去には、海外の国が金融危機に陥った際、資産の避難先としてビットコインが選ばれたこともありました。2013年3月に、ギリシャ危機の影響を受けて金融危機に陥ったキプロスには、ヨーロッパ圏の多くの富裕層が資産を預けていました。金融危機によってキプロスが預金封鎖や預金課税を行なったことで、キプロスに資産を預けていた富裕層たちは資産をビットコインに逃避させたわけです。このとき、ビットコインは一時的に大きく値を上げました。

最近ではドイツ銀行の経営不振といったニュースもあり、またリーマンショック級の金融危機が起こるかもしれませんし、日本発の金融危機が起こる可能性もゼロではないでしょう。また何かの仮想通貨に資産が逃避される可能性もありますね。

ただし課題もたくさん

仮想通貨やそれを支えるブロックチェーン技術は、さまざまな領域で活用が期待されています。しかしまだ歴史が浅いため、世界で広く利用されるためにはさまざまな課題を解決する必要があるでしょう。仮想通貨が脱税やマネーロンダリングに利用されていることは看過できない問題です。健全に市場が育つためには、世界各国で規制を進めていく必要もあるでしょう。仮想通貨自体のセキュリティレベルが高くても、それを扱う仮想通貨取引所がハッキングされてしまうリスクもあります。

二段階認証の設定や、コールドウォレット(オフライン)での仮想通貨の保管など、仮想通貨を利用するための一定の知識が必要です。運用や管理を人任せにするのではなく、利用者自身が管理できるように、情報リテラシーを高める必要もありますね。

次回は、「トークンエコノミー」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。