「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、ビットバンク株式会社 代表取締役CEOで、日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社(JADAT)でも代表を務める廣末紀之氏にお話を伺いました。

廣末紀之氏

ビットバンク株式会社 代表取締役CEO
野村證券株式会社を経て、GMOインターネット株式会社常務取締役、ガーラ代表取締役社長、コミューカ代表取締役社長など数多くのIT企業の設立、経営に従事。2012年ビットコインに出会い、2014年にはビットバンク株式会社を設立、代表取締役CEOに就任。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)理事(副会長)、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)会長を務める。また、デジタルアセットに係る新しい資産管理サービスの提供を目指す日本デジタルアセットトラスト設立準備株式会社(JADAT)でも代表を務めている。

日本のレギュレーションがグローバルスタンダードになるか

――昨年2022年5月に行われたJADATに関する記者会見の数ヶ月後にはFTX騒動があり、「海外に比べて厳しすぎるのでは?」とネガティブな意見もあった日本の規制に対する見方が大きく変わった出来事でもあったと思います。

廣末紀之氏(以下、廣末氏):これまで何度もハッキング等の問題は起こってきましたが、過去とは違い今は政官民の連携ができていますから、建設的な対話ができる環境があります。FTX事件後は、「日本が世界基準になれる」という期待も高まっています。分別管理など厳しいままにしておくべきことはそのままに、取り扱う銘柄の審査やレバレッジなどの規制緩和、ステーブルコインの発行と流通に関するルールづくりなどが進むでしょう。

アメリカの暗号資産業界では、SEC(米証券取引委員会)による訴訟などさまざまなことが起こっていますが、日本はある意味では対岸の火事です。ルールを含めた業界のイノベーションを進める良い機会ではないでしょうか。

日本の場合、突然訴えられるということはありませんから「日本でweb3関連事業を始めること」に対してポジティブな見方が増えるかもしれません。そうなれば、アジアの金融センター、国際金融センターとしてweb3立国ができるのかもしれません。多くのプロジェクトが日本で立ち上がれば、それだけ人も資金も集まることになります。治安や物価などを考えると、日本ほど暮らしやすい場所はなかなかありません。

  • ※画像はイメージ

――確かに、物価が安いわりに品質が高いのは日本くらいだと思います。海外では、安かろう悪かろうが普通。それぞれの都市も大きく、東京や大阪、名古屋、福岡以外にも都市がたくさんあります。文化も多様で歴史が深いですから、飽きることもないと思います。観光だけでなく、「日本に住んでみたい」という人が世界から集まるかもしれませんね。

ドルやビットコインで収入を得て日本で暮らすだけでも、レバレッジが利きます。私は以前、インドネシアのバリ島に住んでいましたが、日本円で収入を得てインドネシアルピアで生活するのは効率が良かったです。

しかし、日本は長年のデフレでデフレ思考が定着してしまっていると思います。そろそろインフレ思考に脳を切り替えないといけないのかもしれません。「インフレの30年(1960〜90年)」と「デフレの30年(1990〜2020年)」を経て、2022年から再びインフレ局面に入っていくのではないでしょうか。日本経済、ひいては世界経済をweb3プロジェクトや企業が牽引してくれたら良いですね。

クリプトの冬にどう向き合う?

――とは言え、「クリプトの冬」と呼ばれるように、次のビットコイン半減期までは冬が続きそうではありますが、廣末さんはどう捉えていらっしゃいますか?

廣末氏:冬の話題と生成AIブームの方にばかり目が向いていて、押され気味と感じています。しかし、長期的に見れば確実に良くなっていくという考えは変わっていません。ルールが整備され、マーケットがついて来れば、業界にとって良いコンディションになります。

値動きだけを見ていると「良くなっている」という印象はあまり受けないかもしれませんが、イベントなどは盛んに開催されており、プロジェクトの勢いは落ちていません。

――その言葉をお聞きできて嬉しいです。私はクリプトの冬はビットコイン半減期とともに訪れる「恒例行事」と呼んでいて、「真冬と真夏(祭り)しかない世界」と言い続けています。多くの人は1サイクル(夏と冬)ほどでせっかく保有したビットコインなどを手放してしまうのですが、私はメジャーなコインをドルコスト平均法で買い続けるのが良いと思っています。アルトコインはどうなるかわからないのですが。ある程度メジャーなコインを保有したら、ペーパーウォレットにして貸金庫に入れておいて「持っていることを忘れちゃう」くらいが精神衛生的には良く、手放さない握力が大事ではないでしょうか。5年後、10年後もきっと同じスタンスで「Buy and Hold…and Die(生涯保有)」と言っていると思います。長期投資という意味では、NISAやiDeCoでビットコインを買えるようにしてほしいくらいです。

よりダイバーシティ・インクルーシブなIT企業に

――では最後に、どんな人と一緒に業界をつくっていきたいかもお聞きできればと思います。

廣末氏:現在ビットバンクでは、日本だけでなく韓国、中国、インド、アメリカ、イタリア、ベトナムなどの人たちが働いてくれています。国籍や年齢は一切問わず、「クリプトが好き」で以下のビジョン・ミッション・バリューに賛同してもらえればだれでも大歓迎です。

VISION

オープンでフェアな社会を実現する

ビットコインをはじめとした暗号資産は、誰でも参加、利用できる、特権者に支配されない、強制されない、という究極の「オープン」「フェア」な形です。インターネットは情報の領域でそれらを実現しましたが、あらゆる価値を流通させることができるビットコインの関連技術は社会をさらに前進させることでしょう。私たちは、私たちの究極の願いである、誰もが自由になれる社会の実現に向けて、その一助になりたいと考えています。

MISSION

ビットコインの技術で、世界中にあらゆる価値を流通させる

VALUES

Integrity
何事にも真摯に取り組み、関わるすべての人を尊重する。率直に意見し、言行に責任をもち、誠実であることを誇る。

Challenge
あらゆるチャンスを素早く捉え、最大の価値を実現し続ける。そのため、何事にもチャレンジし続ける。

One team
何事にも仲間を信じて、仲間と一緒に取り組む。

やはり、社員のみんなとは同じ話題で盛り上がりたいという気持ちがあります。一緒になってビットコインやweb3の未来を信じられるかどうか。「こんなプロジェクトを見つけた」「こんなアルトコインが出てきた」「ビットコイン・ピザ・デーは社内でピザ食べよう」とか、そんな共通の話題で盛り上がれたら良いですよね。仕事への熱量も違ってくると思いますし、ずっと大切にしたいことです。

国籍も年齢も問いませんから、面接もリモート対応、業務も完全リモートでOKです。コロナが落ち着いて出社スタイルに戻っている企業もありますが、リモートか出社か選択できるのが良いと思います。大雨や雪の中で出社しないといけないのは不便ですし、家事や育児やプライベートとの両立、両方の充実を考えると、リモートの良さはやっぱりあると思います。フレキシブルに働けますから、ぜひ一緒にオープンでフェアな社会をつくっていきたいですね。