「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。
今回のテーマは、「Web3(暗号資産、NFT、ブロックチェーン技術、メタバース)の基礎知識と投資意義」。連載内シリーズとして、何度かに分けてご紹介します。
メタバースとは、仮想空間のこと。「meta(超)」と「universe(宇宙)」を合わせた造語で、メタバースという言葉が最初に使われたのは、ニール・スティーヴンスンが1992年に世に出したSF小説「スノウ・クラッシュ」です。現実空間が仮想空間に置き換えられる、あるいは現実空間の補助的な役割として仮想空間があるというよりも「もう一つの現実世界が生み出されること」が注目すべき点でしょう。
2000年頃(今もありますが)の「セカンドライフ」や、2001年から続く「どうぶつの森シリーズ」、2011年に正式リリースされた「マインクラフト」などもメタバースと言えます。メタバースは、案外身近な存在です。
メタバースの定義
2021年頃のブーム以来、さまざまなメタバースが生まれています。では、メタバースの定義はどんなものなのでしょうか。まだ確立してはいませんが、主に以下の6つの要素があります。
・ほぼ無限に広がる仮想世界
・常時のライブ状態で現実世界と同期され、永続性を持つ
・人数無制限の同時アクセスが可能
・自律的に機能する経済圏が成立している
・プラットフォーム間、デジタルとリアル間の相互運用性
・膨大な数のユーザーによる管理、運営
メタバースの中には、同時アクセスに制限を設けているものもあります。そういったメタバースは、メタバースもどきのようなものです。また、「経済圏が成立している」メタバースはまだまだ少ないのではないでしょうか。それほどアクティブユーザーは多くはないからです。
メタバースと暗号資産
セカンドライフやどうぶつの森の他にも、メタバースはあります。「サンドボックス」や「ディセントラランド」が有名でしょう。
サンドボックスは、2020年に発売を開始した仮想ゲームシステムです。自分だけが所有・管理できるNFTアセットを構築し、自由に世界を形づくることができます。「VoxEdit3D」というソフトを使って動物や乗り物、道具などのNFTアセットを作成し、「SandboxNFTマーケットプレイス」で自由に売買が可能です。プレイヤー自身が独自の3Dゲームをつくれるソフトウェアも搭載しています。サンドボックスのネイティブトークンは「SAND」で、SANDはサンドボックス内で売りに出される土地、キャラクターやアイテムの取引等に使用できます。
ディセントラランドは、2015年末に開発されたメタバースで、土地区画、不動産、洋服、名前などをNFTとして購入することができます。ディセントラランド内で流通する通貨は「MANA」です。ディセントラランドでは「Agora」という投票アプリケーションを使い、ディセントラランドの将来的な方針をユーザー投票によって決めています。ユーザー中心の政治的システムへの取り組みは、完全なメタバースの実現に近づける効果が期待できるでしょう。
サンドボックスもディセントラランドも、メタバース内では独自の通貨(暗号資産)を使用しています。国境のない世界共通通貨として生まれた暗号資産ですが、メタバースのような国境という概念のない空間では、暗号資産が決済などで利用しやすくなるでしょう。個人的には、各メタバース独自の暗号資産を使用する必要はなく、すでに現実世界でも価値を認められつつあるビットコインで良いのではないかと感じますが。その方が、現実世界とメタバースをシームレスにつなげることができそうですし、現実世界とは切り離されたweb3独自の経済圏が生まれたとしても、ビットコインの決済利用が増えそうです。
メタバースへのアクセスは、ゲームやSNS、XRなどがメジャーな方法です。会員証的なNFTも、メタバースへの入り口として利用されていくでしょう。また、「ゲーム+NFTや暗号資産」「XR+SNS」のように、掛け合わせでメタバース構築を狙っているプレイヤーが多数います。ゲームでは、フォートナイトやロブロックスなど。SNSでは、メタやティックトックなど。XR(VR、AR、MR)では、ゴーグル以外にXRルームやプロジェクター型など、さまざまな入り口からメタバースへアクセスするようになるでしょう。
メタバースで重要なのは生態系
2021年前後はブーム感のあったメタバースですが、重要なのは生態系(エコノミー)があることです。生態系とは、「そこに人がいること」です。どんなに優れたメタバース空間があったとしても、そこに人がいなければ経済圏は生まれません。
メタバースが普及すると、これまで平面だったSNSやゲームが立体=ほぼ現実世界と変わらなくなります。二次元で行われていたインターネット体験が三次元化し、リアルとの境界が薄らぎ、人によっては「仕事も趣味もメタバース上で良い」となるでしょう。
メタバースという3D空間でアバターを使って仕事や趣味をし、SNSのような交流機能でコミュニケーションを取り、暗号資産で決済する。そういった人が増えれば、そこに生態系が生まれ、経済圏も生まれます。
遅かれ早かれより身近になるであろうメタバースやweb3ですが、サービス化・事業化するにあたり重要なのは基本に立ち返ることです。
お客様はだれですか?
お客様の課題や実現したいことはなんですか?
どんな課題解決や価値創造ができますか?
という基本に立ち返り、突き詰めて考えることです。
2021年前後は、メタバース・web3投資バブルで「猫も杓子もweb3状態」でした。「web3ありき」「ブロックチェーンありき」「メタバースありき」で考えるのではなく、基本に立ち返ることが重要でしょう。
「基本に忠実」が一番大事
web3やメタバースについて書いていると新しもの好きと思われがちですが、個人的にはベーシックなもの・ことが好きです。投資・資産運用に関して言えば、NISAやiDeCoなどの制度を活用してインデックスファンドに積立投資するという退屈な投資も続けています。
暗号資産に関して言えば、「保有し続けるのは難しい」ようで、元億り人はたくさんいます。多くの億り人は、ICOや海外不動産などの他の投資に手を出して失敗したり、ビットコインFXでレバをかけすぎて失敗したり、浪費散財したり、事業を立ち上げて失敗したり、税金が払えずに元億り人になりました。中には、開発のために毎月1BTCをエンジニアに支払い、「あのまま保有していれば」と後悔している人もいます。
すでにビットコインを保有しているのなら、握力を磨くこと(保有し続けること)。まだ保有していないのなら、ドルコスト平均法でメジャーな暗号資産を余剰資金で買い続けることです。
株の世界でも言われている「バイ&ホールド(投資したら忘れる)」というベーシックなこと、投資の原理原則を守ることが資産形成や資産防衛につながるのではないでしょうか。