「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回は、不動産投資家であり事業家でもある後藤専氏にお話を伺いました。

  • 不動産投資家であり事業家でもある後藤専氏

後藤専氏プロフィール

元銀行員・元外資系証券マン
現在は、東京都内で貸しビル業。茨城県で接骨院を経営。著書に『お金は行列に並ばない人のところにやってくる!(主婦の友社)』がある。"どや顔社長"の名前で、商売をがんばる人を応援中。

日本人が持つ普遍的価値観を大事にしたい

――本日はありがとうございます。後藤さんとは、私がまだバリ島に住んでいる頃にメールをお送りしてからのご縁ですね。ネットサーフィンをしていたら、たまたま後藤さんを発見して。ブログにメールアドレスが載っていたので、「面白い人だなぁ」と思ってご連絡した記憶があります。

確かあれは、『お金は行列に並ばない人のところにやってくる!』という本を出した後で、ちょうど土浦で接骨院を始めた頃だね。

――後藤さんはすでに不動産投資家として成功されていて、事業投資を始めた頃でしたね。フランチャイズ投資研究会という会も発足して、面白そうだったので私も参加しました。あの会で出会った人も多くて、実に楽しかったです。接骨院も順調みたいですね。最近はどんなことに焦点を当てていますか?

おかげさまで、採用も良い人が来てくれるので選考しないといけないほどになっちゃった。今、強く思うことは"日本人が持つ普遍的価値観を大事にしたい"ということかな。

歴史に興味があって、時間があると勉強しているんだけど、日本人って正々堂々すぎるというか。日本の長い歴史の中で育まれてきた思想や努力の仕方、価値観を世界で埋もれさせたくないって気持ちがある。やがて世界が勝手に日本人のことを理解し始めるだろうけど。

例えば先の大戦中、命令で敵国の戦艦を撃破したけど、日本の兵士は敵国の兵士を救助したっていう記録が残っていると学んだことがあって。

命令だから戦艦は撃破した。でも、兵士は助ける。兵士がやがて母国に帰ったらまた敵としてやって来るかもしれないとわかっていても助けた。あくまでも人道的ってことなのだけど、世界でも稀に見るお人好しだよね。

お人好しゆえに損もしてきたのだろうけど、こういう日本人が持つ普遍的価値観を大事にして共感できる人を増やしていきたい。だから、事業で雇用を増やして生活を守るというのが僕のビジョンかな。

不動産投資を始めたきっかけ

――そのような背景があって、事業投資にも積極的なのですね。後藤さんが不動産投資を始めた頃は、まだ今ほど不動産投資は一般的ではなかったと思いますが、なぜ不動産投資を始めようと思ったのですか?

今はもうみんな不動産投資をやっていますよね。僕が始めたのは2004年で、当時はまだバブル崩壊後の雰囲気が残っていた。だから、『借金をして不動産を買う』なんて、リスクもあるしイメージが悪くて手を出す人は少なかった。

でも、何度も自分でシミュレーションをして、特にリーマンショックのときは『あれ? 儲かり過ぎるな』と思ったのだけど、何度シミュレーションしてもそうなるから買った。

たくさんのリターンを見込める事業と感じたので。はじめに買ったのは渋谷の店舗物件で、契約すると家賃収入が入ってくる。今月も入ってくる。また今月も…それで6棟まで物件を増やして。

当時は借金をしてまで不動産を買うなんて、犯罪くらいのインパクトがあって。競合がいなかったというのがありますね。

ユーザーフレンドリーな不動産オーナーでありたい

――後藤さんは、不動産オーナーでありながら入居者の支援もされていますよね。かなりユニークなオーナーさんだなぁと出会った当時思いました(笑)。

不動産業界では見逃されていたところで、入居者がお客さん扱いされていなかった。あくまでもオーナーが上という感じ。昔ながらの悪しき慣例みたいなものなのでしょうね。だから僕は、ユーザーフレンドリーなオーナーになれば良いんだと思ったわけ。

入居者の方には、契約の前に『家賃という売上が決まって入ってくるから、僕の事業は成り立っている。だから入居者の方には感謝している』と伝えるようにしていて。それでビルや僕のファンになってくれれば良いわけだし、本当にありがたいから感謝している。テナントさんとの立場を理解して、正しいことをしているだけという感じかな。

以前は、取引先になりそうな人や企業をご紹介したりもしていたのだけど、僕はその業界の素人だからマッチング率は低かった(笑)。中には上手くいったケースもあって、捨てネコの親を探すネコマンションなんて事例もある。メディアにも取材していただけて。

他には、もともと銀行員だから金融機関をご紹介したり、条件変更の仕方や交渉の仕方をレクチャーしたりもしていた。

でも、実は入居者のみなさんにとっては、物件としてスペックを満たしていれば十分だったということに3年くらいして気づいた(笑)。エレベーターがちゃんと動くとか、エアコンがちゃんと利くとかね」

――オーバーなサービスだったわけですね(笑)

そういうこと(笑)。もちろん相談があればご紹介したりもするんだけど、物件のスペックを満たすことがまずは第一。

それでもときどき設備の調子が悪いときがあって、入居者の方にお詫びに伺うのだけど、気を遣われないよう『みかん農家が知り合いで、いっぱいもらっちゃったから、食べきれないのでよかったらどうぞ……』みたいに伺ってます(笑)。

接骨院で「仲間と一緒に成功する幸せ」を感じたかった

――気を遣わせないように気を遣う不動産オーナーさんってステキですね(笑)。不動産投資で成功された後、事業投資で接骨院を始めるわけですが、きっかけは何だったのですか?

銀行で9年、証券会社で10年働いたので、サラリーマン生活が長かった。その後、不動産を買ってお金の面では心配はなくなったんだけど、幸せの中で欠けていることがあるなって感じて。

それが、仲間と一緒に成功するということだった。でもその経験は、実はサラリーマン時代はやっていた経験で。

できなかったことができるようになったり、困難を乗り越えたり。それを仲間と一緒に実現したり。仮に一度ダメでもまたいける。また挑戦できる。そういう人たちを増やしたいし、一緒に喜べる人を増やしたい。

そう思って、人を雇ってできる事業を探して始めたという感じかな。それが接骨院だった。

――人を雇用すると、トラブルもあったり、採用や人材の定着が難しかったりしますが、後藤さんはマネジメントにも秀でていますよね。"7回以上褒めてから指摘しないと相手には響かない"という言葉が印象に残っています。

普段から観察してたくさん褒めろ、ということなんですよね。褒められると、信頼関係がマイルのように貯まる。マイルが貯まっていれば、指摘という1がちゃんと相手に入る、ということ。それをしないで指摘ばかりしても、いくら正しい指摘であっても相手には伝わらないでしょう。

接骨院にとっては来院してくださる患者さんがお客さんなのだけど、社長にとっては施術者やスタッフがお客さん。だから、お客さんである施術者やスタッフみんなの幸せを全力で考えて、実行することが社長の役割。

褒めることが目的ということではなくて、全力で幸せにするための方法のひとつということかな。

――それって頭でわかっていても実行するのは難しいですよね。言葉では立派なことを言っているけど、実際は…という人は多いですし。

人に雇われた経験がないとできないかもしれないですね。立場を理解していないとできないのかも。僕はサラリーマン時代に理不尽なこともたくさん経験したので(笑)。

みんなが価値を認めているものはダメ

――最後に、後藤さんが投資で気をつけていることを教えてください

これは哲学とか生き様と言えるのかもしれないけど、みんなが価値を認めているものはダメというのがありますね。

不動産投資を始めた頃は、まだ借金をして不動産を買うことが良いってバレてなかった。接骨院も、まだまだ業界の地位も弱いし、なんとなく良さはわかっているけど、広く認知はされていない。だからチャンスがあるわけで。

自分の頭で考えて判断すると、おいしいものがちゃんと中にはある。すでにみんなが認めているものは、正しいものかもしれないけど、豊かになれるものではない。

本当に良い投資対象は、本人しか見えないものかもしない。10人に話したら10人が否定するものの中に、本当に良いものが隠されているんじゃないかと思いますよ。

――共感します。私も仮想通貨(暗号資産)や海外不動産に投資した時は、周囲から否定しかされませんでした(笑)。投資先を見極める目利き力は、自分で磨いていかないといけないんですよね