管理職でも時短勤務ができるなど、子育てがハンディにならない制度が整っているカルビー。女性活用が急速に進んだ背景には、充実した育児支援制度があった。多様な人材をいかす「ダイバーシティ」を推進してきた、同社人事総務部部長 高橋文子さんに話を聞いた。

子どもの看病をしつつ仕事ができる

人事部長自ら「温かい会社」と表現するだけあって、カルビーには時短勤務以外にも働く親に優しい制度があるという。例えば、出産時のお祝い金の他、不妊治療にかかる補助金を出す制度。また育休の期間を短縮して復職した人には「早期復帰感謝金」なるものも用意されるそうだ。「席を空けて待っているので早く戻ってきてね、という会社からのメッセージなのですが、この制度を立ち上げるにあたり、男性と女性で意見が割れました」と高橋さん。出産後に戻る場所があることで不安なく産休に入れると、女性たちから好評だった一方、中には反対する男性もいた。「そんなに急いで戻ることはない。子どもは3歳までお母さんが抱っこして育てるべきだ」と。

最終的には高橋さんの権限でこの制度を作るという結論に至った。「もちろん、女性自身がそう考える場合はそうしていい。一方で早く戻りたい人には戻るための後押しをしてあげたかった」とのことだ。多様な働き方の選択肢を設けることで、それぞれが自分に合ったバランスで仕事と育児を両立していくことが真の育児支援であると高橋さんは言う。

従業員が多く利用する「在宅勤務制度」の様子

会社が復帰を奨励していることもあり、育児休業からの復帰率は100%という同社。ただ戻ってきても乳幼児のうちは熱を出しやすいなど、子どもを預けながらの仕事は不安定だ。そんな時は一定の条件を満たせば、週2日まで「在宅勤務」ができる。子どもの看病をしつつ仕事ができるので、子育て中の従業員にとってはありがたい。

「カルビーはルールがあってルールがない、ルールを超えてもっと柔軟に対応していく会社。在宅勤務は本来、週2日までですが、特別なことがある場合、週3日の在宅勤務も上司に相談できる会社です。誰もが置かれている状況でどうしたら仕事がうまく回るか考えながら働いていて、頭ごなしにダメとは言わないのです」と高橋さんは力をこめる。

カルビーの女性従業員の平均勤続年数は12.2年。これは厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査(平成26年)における全国平均9.3年を大きく上回る。同社の働きやすさ、居心地のよさを表す数字ともいえる。実際、育休明けから半年という女性社員に話を聞いたが、周りにも子育て中の先輩社員が多いので、辞めようとは思わなかったと言う。

今後は男性側の意識改革も必要

育児支援策は万全といった印象の同社だが今後の課題はあるのか。高橋さんによると「男性の育児休業取得率を上げていきたい」とのこと。「育児休業というと1年や2年休むイメージかもしれませんが、月単位、週単位で取れるということを知らせていきたい。自分は大して育児をしていないと思っている男性でも、奥さんの代わりに子どもの送り迎えをすることはあるでしょう。彼らが自覚を持って、もっと育児参加しやすいような雰囲気や制度を作っていくことが課題です」。

同社には妻の産休期間中に5日分の休暇がとれる「配偶者出産休暇」という制度もあるが、5日間まるまる取得する人は少ないという。先に話を聞いた育休明け後の女性社員も、社内結婚したご主人はこの制度を使わなかった。男性はプライベートなことで休みを取ることに対する抵抗が、女性よりも強いようだ。

「休んでも休まなくても昇進には響かない。そこを理解してもらうまでの時間は人それぞれだと思いますが、必ず浸透させたい」と高橋さん。今後取り組むべきはパートナーとしての男性の意識改革だ。

【DATA】

従業員総数: 3477名(2015年3月時点)

社員の男女比: 51対49

平均年齢: 39.0歳

育児休業からの復帰率: 100%

看板商品を思い起こさせるような、カルビーのダイバーシティ推進スローガン