大同生命保険(以下大同生命)では、2013年の人事制度改定により、女性の活躍のフィールドが広がった。だが、女性が育児をしながら働きやすい職場を実現するためには、男性の理解と協力が不可欠。そこで、男性の意識改革の1つとして、男女共に育児休業取得率100%を促進し、2014年度には達成。実際に育児休業を取得したことで男性社員の意識はどう変わったのか。前編に引き続き、同社人事総務部人材力向上推進室長の大枝恭子さんに話を聞いた。

勤務時間も会議も「スリム化」し、家庭との両立を実現

育児休業を取得した男性社員からは、「配偶者の大変さがよくわかり、早く帰りたいと思うようになった」といった声が多くあがっているそうだ。その結果、無駄な残業をしなくなったり、より効率的な仕事のやり方を考えたりするようになった。マネジメントも周囲に効率的に動いてもらえるような方法に変わっていき、生産性の向上につながる好循環が生まれているのだという。

本社にあるコラボレーションエリア

前編で紹介した「リミット20」や「早帰りデー」といった早帰りの推進もそれを後押ししている。このほかにも2014年には本社社員を対象に在宅勤務制度を導入した。さらに、会議は原則45分までで効率よく終えるなどの「仕事スリム化運動」も推進している。

昨年末のオフィス移転を機に、オフィスのペーパーレス化も進めた。すべての会議室にはあらかじめプロジェクタが備えられ、会議ではパソコンの画面を共有することで資料準備の手間を削減。既存の紙の資料はPDF化して共有サーバーに保存し、どこからでも閲覧可能にした。「ITを駆使して仕事を効率化し生産性をあげていけば、もっと仕事と家庭を両立しやすい環境が整ってくるはず」と大枝さんも期待を寄せる。

ただ、生産性にこだわるあまり、コミュニケーションをおろそかにしたくないというのが同社の考え。新オフィスには「コラボレーションエリア」という社員が自由に使えるコミュニケーションを目的としたフリースペースが設けられ、「男女関係なく、みんながいきいきと働ける職場」作りに貢献している。

「小1の壁」にも対応

仕事と出産・育児・介護の両立のための「両立支援ハンドブック」

また、仕事と家庭が両立できるように、両立支援制度の拡充にも力を注いでいる。2015年4月には育児中の時短勤務を「小学校就学まで」から「小学校1年生の3月末まで」に延長し、いわゆる「小1の壁」(保育園に比べて、学童クラブの預け時間が短いことに起因する問題)に対応。また同じく去年4月よりフレックスタイム制度の対象を「本社・関連会社のみ」から「支社」へも拡大した。

さらに「制度、いわゆるハードは整ってきたが、環境や上司の理解というソフトの部分が足りていないのでは? 」という声があがってきたので、「両立支援ハンドブック」を作成して、イントラネットにアップした。ハンドブック自体は以前からあったものだが、単純に制度の内容を案内するだけのものだった。そこで新たに「制度を利用しやすい環境づくり」という項目を設け、育児中の社員に対し、上司や同僚が心がけたり、気を付けたりするべきことなどを盛り込んだのだ。

ハンドブックには、かなり細かなシチュエーションごとのアドバイスがあるのもポイント。例えば、女性社員から妊娠の報告を受けた場合には、つわりなどの体調不良があることも考慮したほうがよい旨を明記。事務担当者なら仕事の分担を見直して残業しないですむ体制にしたり、営業担当者なら長時間の運転が必須となる代理店の担当変更をしたりするなど、具体的な調整がしやすいようにしている。また、配偶者が出産した男性に対しては、育児休業の取得や早帰りなど、育児参加への理解や配慮を心がけるようにと書かれている。「従来は気の利く人だけがやっていたことですが、本来、上司であればここまで配慮すべき。このハンドブックによって、部下を持つ男性への意識づけは徐々に浸透しつつあると思う」と大枝さんは話す。

「イクメン企業アワード2015」グランプリの受賞は、こうした一連の取り組みが評価されたものだと同社では考えている。本当に働きやすい企業風土は一朝一夕にできるものではない。こうした地道な努力を惜しまない企業が今後さらに増えていくことを期待したい。

【DATA】

正社員数(内務職員数): 3,104名

平均年齢: 40.5歳

育児休業からの復帰率: 100%