今年もいよいよ梅雨の大雨や台風が話題になるシーズンに。天気予報を参考にしたり、空の様子を見て「そろそろ雨が降るかも?」と思ったりすることも増えそうです。そんな天気が気になる季節、数ある大気現象のなかでも観察しやすく、さまざまな姿を見せてくれる「雲」に迫った書籍が出版されました。
シリーズ累計40万部『すごすぎる天気の図鑑』シリーズ最新作、『すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑』(2023年3月発売・KADOKAWA刊)より、一部を紹介します。
"雲研究者"荒木健太郎先生による雲の知識と最新の研究結果を盛り込んだ一冊、読めば空の様子や天気予報がより面白くなるかもしれません。
全5回の連載、第3回は「積乱雲が集まるとどうなる?」です。
積乱雲が集まるとどうなる?
単一の積乱雲は寿命も短く、地上にもたらす雨量はせいぜい数十㎜です。では、積乱雲が集まるとどうなるのでしょうか。
とくに梅雨の時期には積乱雲が風上側で次々と発生し、狭い範囲の同じ場所に数時間にわたって強い雨を降らせつづけ、集中豪雨が発生することがあります。このときの線状にのびた雨域や雨雲のまとまりを線状降水帯といいます。一方、いくつもの積乱雲が横に並ぶようにまとまって進むものはスコールラインといい、突風や落雷、短い時間の強い雨をもたらします。
日本の南海上で多くの積乱雲がまとまると、クラウドクラスターが発生します。これが低気圧となったものが熱帯低気圧で、最大風速が17.2m毎秒以上で台風になります。
冬季の日本海上では積乱雲が列をなす筋状雲や、発達した積乱雲が連なるJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)が大雪をもたらすことも。積乱雲が集まって規模が大きくなると、より激しい現象をもたらして災害につながることがあるのです。
クラウドクラスター
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『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より
北西太平洋の北緯10度付近には、北東から吹く貿易風と赤道を越えてきた南東から吹く貿易風がぶつかる熱帯収束帯(ITCZ:Intertropical Convergence Zone)があり、積乱雲がまとまりやすい。熱帯低気圧になる可能性のあるクラウドクラスターはインベストと呼ばれて監視される。
熱帯低気圧
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『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より
積乱雲内の潜熱放出による地上気圧の低下で渦が強まる。温かい海からの多量の水蒸気をごはんにして育つ。熱帯低気圧をつくる積乱雲がより発達して対流活動が活発化(対流バースト)し、台風になることが多い。
台風
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『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より
熱帯低気圧の最大風速が17.2m毎秒以上になったもの。鉛直シア(高さ方向の風のズレ)が小さいこと、海水温が水深60mまで26℃以上あること、中層が湿っていて大気の状態が不安定など、いくつかの条件がそろうことで熱帯低気圧は台風へと発達する。
筋状雲
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『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より
日本の西にシベリア高気圧、東に低気圧がある西高東低の冬型の気圧配置になると、北西から吹く季節風に乗って大陸から寒気が吹き出す。この寒気は日本海から多量の熱と水蒸気を供給され、積乱雲が列をなして発達する。日本海側の地域に雪を降らせ、とくに山地で大雪となる山雪をもたらす。
JPCZ、ポーラーロー
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『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より
JPCZは日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar airmass Convergence Zone)のこと。朝鮮半島のつけ根の長白山脈を回り込んだ寒気が日本海上でぶつかって上昇気流が強まり、発達した積乱雲が帯状に連なったもの。短時間で積雪が急増するドカ雪をもたらす。平地で大雪になる里雪の要因のひとつ。秋田沖には暴風雪をもたらすポーラーローという低気圧もある。
尾流雲
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『雲の超図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)より
冬に上空に強い寒気が流入すると、関東でも積乱雲が発達することがある。積乱雲からは霰などが降り、落雷やダウンバーストが起こることも。冬の低い空で写真のような尾流雲が見えたら、天気の急変に注意しよう。
雲の豆知識
夏の陸上では午後に強い雨が降りやすいですが、海上では早朝に降りやすく、集中豪雨も夜間に多いです。これは夜間に海上で湿度が増すためという説がありますが、詳しいしくみは未解明です。
なお、荒木先生のYouTubeチャンネル「荒木健太郎の雲研究室」では動画での解説を見ることもできます。
「『雲』を誰より深く知りたいときに読む本」
『すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑』(KADOKAWA刊)
著者:荒木健太郎、定価:1,375円(電子版もあり)
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超詳しいけど誰でもできる「雲の見わけ方」をはじめ、雲の色や寿命、積乱雲の意外な性格、難しい雲の予報など、これを読めばあなたも立派な雲研究者。
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