「リモートワーク」という働き方が徐々に浸透してきていますが、コワーキングスペースやサテライトオフィス、カフェ等では、在席できる人数が限られているため、リモートワークをする場合、主な働き場所は「自宅」としている方が多いでしょう。
在宅勤務をする場合、自宅に敷いたインターネット回線を使ってオンライン会議等するときは、通信費がかかります。また、仕事部屋の照明をつける、パソコンを充電する、エアコンをつけるなどする場合は、電気代がかかります。
さて、これらの費用は、私たちの生活費として負担しなければならないのでしょうか? それとも、会社側の費用として、負担してもらえるのでしょうか? 「在宅勤務手当」が毎月定額支給されるわけでもなく、在宅勤務に係る費用負担がルール化されているわけでもないまま、在宅勤務をしている方もいらっしゃると思います。
そこで国税庁は、在宅勤務をした際の費用の取り扱いについて指針を公表しています。その概要を、ピックアップしてお伝えいたしますので、ご参考になさってください。
通信費の場合
結論からお伝えしますと、在宅勤務をした日数分の通信費のうち、2分の1は仕事で使ったものとして認められます。残りの2分の1はプライベート(生活費)とみなされます。
会社からスマートフォン等が支給され、仕事中の通話や通信はすべて会社支給のスマートフォン等で行うように指示されている場合は、費用に関して自己負担がないので、気にする必要はないでしょう。一方、プライベートで購入したスマートフォンにもかかわらず、頻繁に業務連絡を取り合ったり、通信回線は自宅に敷いたものを使用したりする場合は、通話料もインターネット回線料等も家計から出費していることでしょう。
では、仕事の費用、プライベートの費用の「線引き」はどこなのか? 下記の【算式】が目安となります。
【算式】
業務のための使用した通信費=[従業員が負担した1か月の通信費]×[その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数]×1/2※上記の「通信費」は、通話料や基本使用料、インターネット接続に係る通信料等を合算したものです。なお、「通話料」に関しては、通話明細書等により「業務のための通話に係る料金」が確認できるのであれば、上記の【算式】にあてはまることなく、会社に「通話料」の負担を求めることができます。また、顧客や取引先等と電話で頻繁に連絡を取り合う機会が多い業務をしている従業員については、通話明細書等による業務のための通話に係る料金に代えて、上記の【算式】により算出したものを「業務のための通話に係る料金」としても差し支えありません。
※上記の「1/2」の根拠は、1日(24時間)のうち平均睡眠時間(8時間・総務省統計局データによる)を除いた時間に占める法定労働時間(8時間)の割合です。 労働時間の8時間÷(24時間-睡眠時間の8時間)=1/2
[具体例]
従業員が11月に在宅勤務を20日間行い、1か月に基本使用料や通信料1万円を従業員が負担した場合の業務のための使用した通信費の計算方法。
10,000円×20日間(在宅勤務日数)/30日間(11月の全日数)×1/2=3,334円(1円未満切上げ) 上記の計算により、従業員負担:6,666円・会社負担:3,334円と分けることができます。
電気代の場合
電気代に関しても、上記の通信費の【算式】と考え方は同じですが、電気代では、仕事部屋のみの電気代(床面積割合で算出)を業務のために使用した電気代としてみなされます。
【算式】
業務のための使用した電気代=[従業員が負担した1か月の電気代]×[業務のための使用した部屋の床面積/自宅の床面積]×[その従業員の1か月の在宅勤務日数/該当月の日数]×1/2※上記の「電気代」は、基本料金や電気使用料等を合算したものです。
※上記の「1/2」の根拠は、通信費と同じです。
これは、あくまで国税庁の指針ですので、各会社によって在宅勤務の費用負担や手当支給に関する取り扱い方は異なると思います。とはいえ、在宅勤務に係る費用負担について、まだルール化されていない、ルール化されていたとしても従業員に周知されていない場合もあるでしょう。在宅勤務をしている方は、在宅勤務に係る費用割合等について直属の上司や総務部や経理部等に確認するとよいでしょう。