「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

地方での図書館利用は快適

皆さんは、図書館に行きますか? 学生の頃に、テスト前に自習をするために利用して以来、大人になってから一度も行ったことがないという方もいらっしゃるでしょう。逆に、長年読書に親しんでおられて頻繁に利用されている方もいらっしゃるでしょう。

私は、図書館に行くこと自体が好きです。静かな空間と、ゆったりと流れる独特な雰囲気が心地よく、図書館内で本を読んでいると、本の内容とは関係なく不思議と仕事や私生活でのアイデアが浮かぶことがあります。

東京在住の頃に行った図書館では、パソコン利用OKであるデスクが用意されていましたが、利用する地域住民が多いせいか、パソコン利用OKのデスクに関しては、最大2時間の時間制限が設けられていました。

現在住んでいる地域の図書館には、パソコン利用OKデスク利用の時間制限は設けられていないので、パソコンを横に置いて調べものをする際に、時間を気にせずに利用できるので、ありがたいです。

最近では、「図書館での自習は禁止」とされている図書館もあるようですが、現在私が住んでいる地域では、「自習OKのデスク」と「自習禁止のデスク」を分けて設けている図書館があります。

東京は最も人口が多い都市なので、住民の皆さんが図書館を公平に利用できるようにいろいろな「制限」を設けているのかもしれません。

図書館数は右上がり

表1によると、図書館は右上がりに増加しています。平成17年は2,979施設、10年後の平成27年は3,331施設。10年で352施設増加していますので、「図書館が近くにできて利用しやすくなった」という方もいらっしゃるでしょう。

  • (表1)図書館数の推移
    ※「平成27年度社会教育統計(社会教育調査報告書)」(文部科学省)を加工して作成

図書館の利用者数と国民1人当たりの貸出冊数

図書館は右上がりで増加しているので、利用者数も比例して増加しているかというと、そうではないようです。表2によると、図書館1施設当たりの利用者数は、平成16年度間の58,042人がピークであり、平成22年度間の57,991人と平成26年度間の55,234人を比べると、2,757人利用者が減少しています。増減率としてはマイナス4.8%になります。

また、国民1人当たりの貸出冊数は、平成22年度間から平成26年度間はわずかに減少していますが、平成4年度間から徐々に増加しています。平成26年度間では、国民1人当たり1年間で約5冊の本を図書館から借りています。みなさんは、1年間で本を何冊借りますか?

  • (表2)図書館の1施設当たりの利用者数と国民1人当たりの貸出冊数
    ※「平成27年度社会教育統計(社会教育調査報告書)」(文部科学省)を加工して作成
    ※図書館の1施設当たりの利用者数=「(諸集会の参加者数+図書を借りた延べ人数)÷施設数」
    ※国民1人当たりへの貸出冊数=「貸出冊数の総数÷総務省統計局の各年10月1日現在推計人口(総人口)」

終わりに

今回は、図書館について調べてみました。図書館は、その地域に暮らす幼い子供から高齢者まで、幅広い年齢層の人が利用します。大人が絵本を読み優しい気持ちになったり、子供が少し難易度の高い歴史の本や文芸書を読むきっかけになったり、利用する人それぞれに、新しい発見がある場所だと思います。

図書館は、本を借りるだけでなく、学習や研究、調査などをする際にもどのような本が良いのか、図書館のカウンターで相談すること(レファレンスサービスとも言います)もできます。市区町村の図書館と都道府県立の図書館とでは、蔵書も異なるようなので、「あなたの学習の参考になるような本は、市内の図書館にはありませんが、県立の図書館にはあります」という回答を得ることもできます。

また、書店やカフェと併設されている図書館があったり、会議や研究会、学習会などに使用できる会議室が設けられている図書館があったり、図書館ごとに特色があります。

自分が住んでいる地域の図書館だけではなく、旅行先の図書館に足を運んでみるのも面白いと思います。旅行先の地域のイベント情報が掲示板に貼ってあったり、その地域ならではの歴史本があったり、観光とは違う一面を見ることができます。

図書館の利用から遠ざかっていた方は、図書館で本を借りて、秋から冬にかけての長い夜に読書をするのも良いのではないでしょうか。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。