「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

新しい地域でかかりつけ医探し

みなさんは、「かかりつけ医(※)」をお持ちですか?

私は東京在住の頃、自宅のそばに、頼れる医師がいたので、体に違和感があるとき、すぐに受診することができました。身近に信頼できる医療機関があることは、日常生活をする上で安心でした。

(※)体のことで何か不安になったとき、また病気になったとき、何でも相談できる頼りになる医師のこと。

新しい地域での生活がやっと落ち着いた頃、「風邪をひいたとき、どの診療所に行こうか?」「歯科検診に行きたいけど、どの歯医者がいいのだろう?」と、インターネットで自宅近くの医療機関を検索してみました。

どの医療機関のホームページもきれいな施設、親切なスタッフ、丁寧な診療などをアピールしていて、インターネットの情報は本当なのか、不明でした。地元の方々に良い医療機関を聞いたり、地方自治体の医療相談窓口などに問い合わせしたりした方が、インターネットよりは信ぴょう性の高い情報だと私は思います。

東京より人口が少ない現在住んでいる地域でも、街中を歩いていると、東京と同じくらい多くの医療機関があると感じました。人口は少ないが、医療機関が多いので、医療費も東京と同じくらいあるのだろうかと思いました。そこで、今回は、地域ごとの医療費などについて調べてみました。

都道府県別・国民医療費(平成27年度)

まずは、都道府県別の国民医療費について見てみましょう。表1の左側、「国民医療費」をみると、断トツで東京都が4兆1,433億円と高く、次に大阪府が3兆2,193億円、3番目に神奈川県で2兆7,186億円となっています。

全国の合計医療費が約42兆円(各都道府県の国民医療費の合計)なので、国民医療費の約4分の1がこの3都市に集中していることになります。東京都、大阪府、神奈川県は、最も人口の多い地域であるため、地域全体としての医療費が高くなっているようです。

  • (表1)都道府県別にみた国民医療費・人口一人当たり国民医療費
    ※出典「平成27年度 国民医療費の概況 結果の概要」(厚生労働省)

しかし、表1の右側、「人口一人当たり国民医療費」をみると、高知県が44万4,000円と最も高く、次に長崎県が41万1,100円、3番目に鹿児島県が40万6,900円となっています。したがって、総医療費が高い地域が、人口一人当たりの医療費も高いというわけではありません。

また、人口一人当たり国民医療費の全国平均である33万3,300円の縦に引かれている点線をみると、全国平均を上回っている地域は、西日本の地域に多くみられます。人口一人当たり国民医療費が最も高い高知県は、「高知県医療費適正化計画」として県民の健康を維持していくための様々な取り組みを行っています。

特定検診とは

特定検診とは、生活習慣病の予防のために、40歳から74歳までの方を対象に、メタボリックシンドローム(※)に着眼した検診のことです。検診を受けることで、糖尿病や高血圧などの予防になり、年々増加している医療費の削減の効果も見込まれています。

(※)運動不足や肥満などが原因で内臓脂肪が増え、生活習慣病や血管の病気になりやすくなっている状態。

表2をみてみると、都道府県別で特定検診を受診している割合は、東京都が最も高く63.4%、次に山形県が60.0%であり、60%以上は、この2都市しかありません。また、北海道が最も低く39.3%となっていて、40%を切っています(黄色で表示)。50%を下回っている地域が多いことから、特定検診受診率数の向上への取り組みが地方自治体などで行われています。

  • (表2)平成27年度 都道府県別特定検診受診率
    ※出典「特定健康診査・特定保健指導に関するデータ」(厚生労働省)の「特定健康診査 平成27年度」

終わりに

国民の健康の維持増進や病気の予防への取り組みの1つとして、「セルフメディケーション税制」というものがあります。市販されている一定の医薬品を購入した場合、上限はありますが、所得税の納付額が減額される制度です。

この税制を適用する要件のなかには、「健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行っていること」とあります。この「一定の取組」として該当されるものの1つとして、特定検診があります。つまり、検診などを受診して自分自身の健康維持に努めている人が、薬局やドラッグストアで薬を購入した場合、税金を安くすることで、検診の受診者を増やすことを促しています。

健康的に暮らし、定期的に検診を受け、それでも、体に不調を感じるときは、頼れる医師にいつでも相談できる、そんな環境で暮らせることができたら、私たちは幸せですね。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。