漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「模様替え」である。

私が模様替えしたい、などと言ったら、まず部屋を片付けろと言われるに決まっている。

実家にいたころ、着替えをしているだけで「そんな時間があるなら部屋を片付けろ」と言われたことがあるので間違いない。

私は模様替え以前に、インテリアというものに対し他人のサクセスと同じぐらい興味がない、というかインテリアに興味を抱けるレベルにない。

まず、整理整頓ができないのに、さらにそれを見栄え良く見せるなんて、難易度が高すぎる。

よって、どうぶつの森のような、箱庭ゲームをやると、楽しめないを越えてパニックを起こすため、全く続かない。

ちなみにキャラクターをカスタマイズするゲームも苦手だ。散らかっているのは現実の部屋と顔だけで十分である。

ゲームなら途中で投げ出しても良いのだが、私のような人間は、模様替えも整理整頓も必ず途中で飽きるのだ。

つまり、和テイストだった部屋を北欧風にする途中で投げ出すため、部屋がどんどん多国籍軍になっていく。

それならまだ良いのだが、階段のど真ん中で家具の移動に飽きたりするので、整理整頓をしようとするたび生活が困難になっていく。

そもそも面倒くさがりで、地元からも一歩も出たことがない人間である、環境を変えて心機一転という気持ちがないのだ。

私が「ミニマリストに憧れている」と再三言っているのは、キレイ好きだったり、整理整頓ができる人だったりするからではなく、私のようにパニックを起こした結果、目につくものを全部捨てて、整理する必要をなくした人だという認識だからだ。

つまり、宗派は同じだと思うので親近感がわく。収納とか言っているのは異教徒だ。

私はまだそこまで悟りが開けていないので、煩悩という名の家具一式を窓から捨てることは叶わず、未だにゴミに埋もれて生きている。

しかし「無駄なものに囲まれて暮らすのも、幸福である」というようなことを、最近21年ぶり2度目のシャブで逮捕されたアーティストの方も歌っていたので、これも1つの「ライフスタイル」だ。

ちなみに今のはエリカ様を意識した。

私がインテリアにこだわれないのは「物をすぐ壊す、汚す」というせいもある。特にオシャレな部屋には不可欠であろう、雑貨など小物の命は儚い。

置いておくだけのものが、何故そう簡単に壊れるのか、どんな事故物件なのか、平将門の首塚にでも住んでいるのか、と思うかもしれないが、片づけられない奴の部屋というのは当然物が多いのだ。

特に机の上など文字通り「一触即発」と言っても過言ではない、いつ内乱の火ぶたが切って落とされても不思議ではなのだ。

よって、机の物に肘が当たったりすると、それが引き金となり、サイドテーブルに積み重ねておいたものが倒壊するという悲劇を巻き起こすのである。

構造的に、負の連鎖が起きやすい、魔のピタゴラスイッチ空間なのだ。お子様の悪い意味での情操教育に最適である。

つまり、私の部屋にあるものは、頻繁に床に叩きつけられがちということである。

よって、スマホが伝説の老兵の如く傷らだけの人間には気をつけた方が良い。片づけられない人間である可能性が高い。

さらに、床に落ちたものをそのままにして置くこともしばしばだ。

そういう人間にとっては床も収納の一部なので珍しいことではない。その結果どうなるかというと「よく踏む」のだ。

レゴブロックのように、踏んだ方が致命傷を負うものばかりならよいが、大体壊れるのは物の方である。

ちなみに、そういうタイプは机で充電中のスマホを頻繁に落とすため、充電器の差込口の寿命が異様に短い、これマメな、である。

よって、私は必要なものなら仕方ないが、飾るだけの小物は自分では買わないし、極力自分の部屋には入れない。

入れたとしても、私の部屋にある風雲たけし城のパーツになるだけである。

あと小さき物にとって、私は不器用なゴリラみたいなものなので、繊細なものは、触っただけで壊したり汚す恐れがある。

最近流行りのツルバニアファミリーの赤ちゃんの人形をもらったのだが、握りつぶして「ドウシテ、オレ、ナカヨクシタカッタダケ……」とその場に立ち尽くしてしまいそうなので、箱からも出さずに玄関に飾ってある。

不思議なことに、玄関に飾っておけば、そうそう落ちないのだ。

やはり、物を綺麗に並べるより、家の物全てを投げ捨てる方が性にあっているのだ。

しかし、片づけられない人間には「収納名人」という一面もある。

掃除をすると、明かに部屋の体積より多いゴミが出てくるのである。一体どこにしまっていたのか、人生を散らかすことにより魔法が使えるようになったとしか思えない。

ただ、収納方法は「限界まで積み重ねる」というシンプルなものなので、テクニックというよりは、才能の問題かもしれない。

あと、耐震強度に欠けるのもたまにきずだ。

またインテリアには向いていないが決してセンスがないわけではない。

本棚1つとっても、ゲームが入っているのはまだ普通で、すね毛を剃るシェーバーなどが安置されているなど、本棚という常識に囚われない斬新な使い方がされている。

何かの間違いで「逆にオシャレ」と言われても不思議ではない。

やはり部屋というのは生活空間なので、見た目より、快適なのが1番だ。

では私の部屋が快適かというと、全然そんなことはない。正直、暮らすには難易度が上がり過ぎている。

だがそれでも「整理整頓」に比べればまだ、イージーモードなのだ。

筆者プロフィール: カレー沢薫

漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。「やわらかい。課長起田総司」単行本は全3巻発売中。