幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第89回はタレントの滝沢カレンさんについて。もうバラエティー番組の顔、と言われることも少なくなっていくのではないでしょうか。演技、ダンス、料理と、自分の興味のその先へ着実に活動範囲を広げているのが、見事です。そんな彼女を見ていたらとあるベテラン女性タレントさんが浮かんできました。

新人女優とは思えない、堂々ぶり

  • 滝沢カレン

現在、滝沢さんが出演している『未来への10カウント』(テレビ朝日系)のあらすじを、ざざざっと。

48歳、フリーターの桐沢祥吾(木村拓哉)は母校でボクシング部のコーチを請け負うことになった。何の取り柄もなさそうに見えた、愛想のないおじさん、実は高校生の頃にボクシングで四冠を達成した実力を持っていたのだ。弱体化した部を立て直すため、桐沢が動き出す……。

このドラマで滝沢さんが演じているのは、会社員の折原楓。桐沢がコーチ兼、非常勤講師として勤務する(ようになった)ボクシング部の顧問、折原葵(満島ひかり)の妹役。シングルマザーとなった姉をサポートするため、同居をしている。どうやら料理上手らしい。滝沢さんはハーフなのに、満島さんと並んで姉妹でもさほど違和感がないのは、すごい。彼女、まだそんなに演技経験はないはずだ。

確か滝沢さんの演技を認識したのは『G線上のあなたと私』(TBS系・2019年)でのこと。この以前にも出演はあるようだけど、そちらは記憶にない。ただこの当時「滝沢カレンがドラマ……?」と世間がざわついた。それまでバラエティ番組で見ていたパブリックイメージとは、結び付かなかったからだ。

将来は『カレンの部屋』がスタートするのか

滝沢さんといえば、独自のワードセンスでブレイク。冠料理番組が放送されたこともあるほど、料理上手な一面を活かして発売したレシピ本はベストセラーに。レシピなのに分量などの詳細は全く掲載がなく、ご本人独特の言葉で全てが構成されていた。そんなレシピ本がこの世に認められるとは、誰が想像しただろうか。長い間、出版業界に身を置いているけれど聞いたことがない。最近では、ダンスに打ち込む様子をテレビで見た。彼女の興味はどこまで続くのか。

さらに興味をそそられるのは、全てのアクションにおいて"一生懸命さ"が伝わってくること。ファンでもない私にも届いているので、ご本人の熱量は相当なものであるはず。

数年前、彼女がモデルとしてデビューした時。現在のように縦横無尽の活躍をすると誰が想像しただろうか。当時、女性雑誌から続くハーフモデルブームと、天然の新キャラが登場したのだと思っていた自分を恥じる……と、活躍を振り返ると未来の滝沢さんを彷彿させる一人の女性が浮かんだ。それが黒柳徹子さんである。黒柳さんも幼少期から「変わった子」扱いをされて、女優デビューをして。嫌味のない突飛な発言が目立ったけれど、不快な思いをする人はなく、活躍はいまだに続いている。

滝沢さんの進む道は、このまま「カレンの部屋」へ続くのかしら。そんなことを想像してしまった。