幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第117回はタレントの関口メンディーさんについて。「うメンディー」「ごメンディー」と二文字めに「メ」とついたら、もうその言葉は彼のもの。老若男女問わず、「メンディー」連呼する現象が、日本で続いている。おそらく高齢者は彼の姿形は知らずとも、この言葉だけは知っている。そんな彼の出演するドラマが非常に楽しいので、文章にしてみようと思う。

登場1秒でテレビ画面をざわつかせる

  • 関口メンディー

現在、メンディー(敬愛を込めてこの呼び方に)が出演する『パリピ孔明』(フジテレビ系列/毎週水曜22:00~)のあらすじを。

壮大なスケールのコメディードラマ。かつての三国時代に軍師、政治家などとして、その名を轟かせた、諸葛孔明(向井理)。あるハロウィーンの夜、彼は渋谷にタイムスリップをして、姿を表す。出会ったのはライブハウス「BBラウンジ」で働きながら、歌手を目指す月見英子(上白石萌歌)とオーナーの小林(森山未來)。英子の歌声に聴き惚れた孔明は、彼女と同じ職場で働きながら、歌手としての活動をサポートすることになる

「……あなどっていた……」と放送後に大反省。最近、地上波ドラマに流行している漫画原作と、タイムスリップという設定。その前振りだけで、疑心を抱いて第1話を観てしまった。

ところが『パリピ孔明』、めちゃくちゃ面白い。毎回、豪華絢爛の衣装で登場する孔明の所作にはじまり、英子が売れるために実行する作戦に一寸の隙なし。さすが軍師として数々の戦を勝ち抜いてきただけある。愛好家ではないのでうっすらとしか記憶はない私にも、三国志の香りが漂ってくるではないか。

加えて出演者たちの歌がうまい。上白石萌歌、八木莉可子……と「この曲、リリースをしてくれないか」と思うほど、美声を聴かせているのも見どころ。映像のグラデーションも見やすく、毎週、孔明の奏でる戦術を楽しみにしている。

そんなドラマオタクの私が褒めちぎる『パリピ孔明』にメンディーはスーパーアーティスト・前園ケイジを演じている。この役、登場だけで視聴者を唸らせるものがある。

楽しそうな姿に覚えた、とある既視感

毎週、放送の終盤に登場して(第4話より)、一瞬の映像で人気者ぶりを見せつけるメンディーこと、前園。ド派手グラサンに、アクセサリーのじゃら付けと、要は派手なパリピ系。とにかく一般庶民には圧が強い。前園ケイジはどうもオーナーの小林と因縁の関係らしい。ドラマ放送中盤を折り返して、ここから彼のシーンが増えるはず。

メンディー、多くのドラマに出演しているような気がしていたけれど、振り返るとまだ10本足らず。やはりグループアーティストとしての顔のほうが際立つ。彼が所属する(株)LDHには多くのタレントがいるけれど、その中でも彼が印象に残るのは、彼が多くのグループに所属しているからだ。

GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILEをはじめ、ざっと6グループを掛け持ちしているらしい。LDHには多くのグループがあり、仕事でご一緒するときのある私でさえも、理解が追いつかないときがある。そんなときは「ここのグループにはメンディーがいるから、このグループで……」と彼を目印にして、多くのグループを把握していた。

アーティストとしてのパフォーマンスだけではなく、自由闊達なキャラクターはバラエティー番組でも大活躍。彼が出演する番組では、共演者たちが口々に「うメンディー!」と真似て、場を和ませているのを見かけた。もう「メンディー」という単語は魔法だ。

以前、ご縁あってGENERATIONS from EXILE TRIBEのライブに行かせてもらったことがある。つい「メンディーは……」と目で追った彼のダンスはダイナミックで素晴らしかった。もちろん(?)MCでも会場を沸かせ、ひたすら楽しそうだった印象がある。

そんな彼を見ながら、ふとCHA-CHAの松原桃太郎を思い出した。私が幼い頃のうっすらとした記憶から、当時、絶頂の人気アイドルだったグループに、ひとりだけキャラクターの違う松原がいた。いわゆる、お笑いポジションに立ち、テレビ番組でも和ませ役だった。今のメンディーの活躍ぶりとは重ならないけれど、人柄の良さは重なる気がする。そんな既視感を覚えた、私のメンディー論、これにて終了。