幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第100回は……私、この連載の筆者である小林久乃が最近思うバイプレイヤーについて。例えばひとつの連続ドラマや映画といった"作品"があるとしたら、皆はやはり主演の二文字を目指すと思う。ただその席数は少ないうえに、なかなか空きがない。

そんな状況下を加味したうえで私が「バイプレイヤーのほうが良いのでは?」と思うのには、理由がある。まずは彼らの圧倒的な出演数がある。1年間を通じると毎クール出演していることは当然で、時には掛け持ちで出演していることも。主演に比べると圧倒的に露出が多い。いやらしい話だけど、ひょっとしたらギャランティも年収で換算すると主演よりも金額が多いかもしれない。加えて経験値も格段に増えていく。

好ポジションに2022年はどんな人たちが君臨したのか。年末が押し迫った今、振り返ることにする。

愛らしさと、勝気な雰囲気が心を揺らした

  • 醍醐虎汰朗

まずは出演作数もまだまだ発展途上の段階にある、若手軍で気になった人たちを2名ほど。

現在放送中の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)に出演中の醍醐虎汰朗(だいご・こたろう)さん。航空学校で主役の岩倉舞(福原遥)と同期生の吉田大誠を演じている。母子家庭に育ち、母親を支えるためにパイロットを目指した吉田学生。努力家で成績は優秀。私の読みでは舞のことが好きだ。

役に着くまでが難関と言われている、朝ドラ出演。NHKにとんでもないコネクションがない限り、オーディションで配役が決定する。そこへ登場した醍醐さん。「おっ……」とつい、彼の名前を検索してしまうほどの愛らしさを放っていた。単純に可愛いだけではなく、勇ましい雰囲気にも振れそうな雰囲気の顔立ち。来年あたりはTBSの火10放送枠で、恋の当て馬役を演じていてほしい。

この愛らしさとは真逆で、気の強そうな雰囲気に惹かれたのが仁村紗和(にむら・さわ)さん。夜ドラ『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)で演じた、バツイチのシングルマザーで、元キャバ嬢で、最終的にはトラック配達員。山崎亜子を好演した。曲がったことを忌み嫌い、誰に対しても歯に衣着せぬ発言をする。要は人当たりが平等な亜子。その人物像のイメージを少しも裏切らずに、仁村さんは演じていた。当たり役なのか、役が彼女に向かって走ってきたのか。「この人、来年くらいからすごいことになるんだろうなあ」というのは、ドラマオタクの推測である。

2022年、全クール、連続ドラマ出演のベテラン勢

新人が踏ん張りを見せるのなら、ベテランだって負けていない。ペースを一切緩めることがなく走り続けたトップランナーが2022年にもいた。

まずは夏帆さんとMEGUMIさん。このふたりの名前も顔も知られているスターでありながら、主演作はまだ少ない。ただ2022年を振り返ると、ふたりとも全クールのドラマに出演している。

  • 夏帆

例えば夏帆さんの出演履歴はこうだ。冬は『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』(日本テレビ系)、春は『それ忘れてくださいって言いましたけど。』(paravi)、夏は『拾われた男 Lost Man Found』(NHK総合)、秋は『silent』(フジテレビ系)。他にはNetflixで配信された『First Love 初恋』など。「よく観た!」という言葉そのままである。どの役も「あともうちょっとで完璧な幸せを手中にできそうなのに……」ともどかしさを感じさせる役柄。良く似合っていた。

そしてMEGUMIさん。冬は『おいハンサム!!』(東海テレビ・フジテレビ系列)、夏は『探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り』(読売テレビ・日本テレビ系)、秋は『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(TBS系)。冬には自身が出演、プロデュースを担当した『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』(テレビ東京系)で締め括った。ふたりともベテランと言われる域にいながら、止まることを選ばない。人生100年時代と言われる現在、まさに理想的な働き方だ。きっとこのまま40、50、60、70代と駆け抜けて。働く女性たちに新しい背中を見せてくれるに違いない。

  • 藤原季節

ちなみに男性の俳優さんで気になったのは、藤原季節さん。彼の公式ツイッターのプロフィールに書かれている「藤原のシーズン来ました」の一言には妙がある。この言葉通りなのか、今年は『プリズム』(NHK総合)で見せた、バイセクシャルの森下陸役がヒット。続編を希望する声が後を絶たない。とはいえ、藤原さん、2022年のシーズン前から映画を中心に多くの作品に出演している。きっとそういう活躍を見せる俳優さんとは、数多いる。その中でも「よく観るなあ!」と思わせるのは、出演数だけで測ることのできない、才能というやつがあるのだろう。

一説では恋も仕事も、一番手よりも二番手がカッコいいと言われている。けしてグッドルーザーではなく、あくまでも勝者であるバイプレイヤー。私が気になった人たちは来年もまだまだ走り続けるのだろう。そして来年はそこに誰が並走してくるのか。