仕事でメールを使っている人の多くが、一日に複数回メールを確認していると思います。メールを確認することから仕事が始まる、退勤前には必ずメールをチェックする、こうした方も多いのではないでしょうか。私も、朝は大抵メールの確認からスタートします。前日から当日の朝までに届いたメールにすべて返信。退勤前にも必ずメールをチェック。営業時間内に届いたメールは、基本的にその時点までにすべて返信することで、退勤時の未処理メールをゼロにしています。

「今日できることは、今日のうちにやってしまおう」こうした考えを仕事に取り入れている人もいるでしょう。先送りしないことが、業務を円滑に進めることにつながります。何より、やり切ることで気持ちの上でもスッキリしますよね。ただし、なんでも今日中に片づけてしまおうというスタンスは、ビジネスメールでは注意が必要です。

メールには、相手から届いたメールに対応する「返信メール」と、自身が発信元となる「新規メール」があります。「返信メール」であれば、当日中の対応はメリットばかりです。早いレスポンスが相手にも好印象を与えるでしょう。一方、「新規メール」については、そうとは限りません。「今日できることは、今日のうちにやってしまおう」という気持ちから、思わぬデメリットをもたらすこともあるのです。

メールを送るタイミングが未対応リスクを高める

福利厚生の見直しを進めることになった総務部の田中さん。広く意見を集めようと、メールで社内アンケートを取ることにしました。返信期限は一週間後に設定。今日できることはやってしまおうと、退勤間際にこのメールを送りました。果たして、この後どのようなリスクが考えられるでしょうか。

アンケートという特性上、メールを見た相手も、すぐに回答が必要な内容ではないと捉えるでしょう。実際、返信期限には一週間の余裕があります。退勤間際の慌ただしい時間帯。相手がメールを開いても「後で対応しよう」と判断することは容易に想像できます。結果的には、そのまま返信自体を忘れられてしまうかもしれません。

確かに、どの時間帯に送ろうとも、返信を忘れられる可能性はあります。しかし、そのリスクがより高まるタイミングがあることは理解しておきたいところ。未対応メールの管理方法は人それぞれです。受信トレイ上で何らかの印を付けたり、別フォルダに移動する人。あるいはアンケートに回答することを、スケジュールやTODOリストに追加する人もいるでしょう。いずれにせよ平常時であれば、相手は後で回答するための適切な対応を、その場で取ることができたはずなのです。近年は、働き方改革により退勤時間の管理もシビアに。慌ただしい時間帯にメールを送り、瞬時に後回しにする判断をさせてしまうことが、相手の適切な対応を阻害し、忘れられるリスクを高めることにもなります。

メールを送ってスッキリ、でも相手は!?

メールを送った田中さんには、仕事を翌日に持ち越したくないという心理が働いています。その気持ちは理解できますが、相手も同じ気持ちを抱く可能性は十分に考えられます。退勤間際に届いたアンケートに対して、今日のうちに終わらせてしまいたいと考えたならば……。相手は既定の勤務時間をオーバーしてでも回答するかもしれませんよね。相手に必要以上の時間的負担を強いるのは、田中さんにとっても本意ではないはずです。

退勤間際のメールは、時に時間的な負担だけではなく、精神的な負担さえ与えてしまうことがあります。田中さんは、メールを送ることによって今日できることをやり遂げ、気持ちの上でもスッキリしているかもしれません。一方、メールを受信した相手にとってはどうでしょう。対応は翌日以降に回したとしても、意見を求められたことによって、退勤後も仕事のことが頭をよぎる。とてもスッキリした状態とは言えませんよね。

勤務時間外の「新規メール」送信は、より注意が必要です。テレワークの導入やデジタルツールの普及によって、会社外でもメールを確認できる環境が広がっています。退勤後のプライベートな時間。そこに仕事を想起させるメールが届いたとしたら、相手のさらなる不快感にもつながりかねません。

金曜日のメールは、特に慎重に

退勤間際や勤務時間外のメール。金曜日ともなれば、送るべきかどうか、より慎重に判断すべきです。次の出勤まで日にちが空くことによって、忘れられるリスクはより高まります。仕事を翌日に持ち越したくない人にとって、翌週に持ち越すことはよりストレスに感じられることでしょう。週末のプライベートな時間を邪魔されたと思えば、怒りすら覚えるかもしれません。想定されるデメリットの比重は、さらに大きくなります。

例えば、クライアント向けの提案資料。「今週中にメールでお送りします」と、なんとなく区切りの良いタイミングを期限にしていませんか。せっかくの提案資料も、送るタイミングを間違えてしまえば、相手にとっての負担や、不快感を生むメールにもなり得ます。安易な期限設定は考えものです。

仮に、退勤後はメールを見ない相手だとしても、決して効果的とは思えません。提案資料が開封されるだろう月曜日の朝。このタイミングは、相手にとって最も未処理メールがたまっている状態ではないでしょうか。じっくりと目を通してもらえるか疑問が残ります。

メールは、いつでも送れる手軽なコミュニケーションツール。しかし、そこには必ず相手がいることを忘れてはなりません。仕事をやり切る姿勢も大切ですが、一方では相手の都合に配慮する心遣いも欠かせません。メールには「下書き」の機能があります。ソフトによっては、予約送信機能を持つものもありますので、ツールと上手に付き合いながら、最適なコミュニケーションを図りたいものですね。