ビジネスパーソンにとって「仕事を受ける」機会は数多くあることでしょう。取引先からの依頼であったり、上司からの依頼であったり。「仕事を受ける」ことによって、それが成績につながる、あるいはキャリアを積み重ねることなどにつながっていきます。ここでは、ビジネスの場にふさわしい「メールでの仕事の受け方」について考えてみましょう。
誤解を与えない言葉選び
・分かりました
・了解しました
いずれも相手の言ったことを理解したと伝える表現で、ビジネスシーンでもよく耳にする言葉です。しかし、目上の人、特に取引先や上司に対して使うのは失礼だという見方もありますので注意が必要です。人によって言葉の受け取り方、ニュアンスは変わってきます。
実際のところ、「分かりました」「了解しました」が失礼であるかについては諸説あります。とはいえ、もしも相手の方が失礼だと感じているならば、その言葉を使うことによって、送信者であるあなたは、知らず知らずのうちに評価を落としている可能性があります。円滑なコミュニケーションを取るためには、相手に誤解を与えない言葉を選択するのが第一歩です。
・承知しました
・かしこまりました
・お引き受けいたします
・承りました
これらの言葉を使うことによって、誤解なく、きちんと仕事を受ける姿勢を示すことができます。
ビジネスメールで仕事を受ける際のコツ
メールは電話や対面の場合と違って、表現が無機質に感じられる、さらに言えば冷たく感じられるという声をよく聞きます。それは言葉以外の副次的な情報が不足しているからです。対面の場合を想像してみてください。相手の方が笑顔で「かしこまりました」と答えているのであれば、内容を理解したのと同時に、納得している、あるいは嬉しそうなどの感情が伝わってきます。電話の場合でも、声の大きさやトーンから、やはり相手の状況を垣間見ることができます。
メールは主にテキストのみで用件を伝える手段です。言葉以外の副次的な情報がない状態で「かしこまりました」だけでは、実は依頼主としては物足りなさを覚えるものです。あっさりした人だなという印象を持つかもしれません。「かしこまりました」のあとに、状況に応じてもう一言添える。それがビジネスメールで仕事を受ける際のコツです。
試作品の製作について承知いたしました。
弊社の商品が貴社のお役に立てるのであれば、これほど嬉しいことはありません。
プレゼン日時の件、かしこまりました。
〇〇様のご期待に添えるよう、精一杯がんばります。
取引先からの仕事の依頼はありがたいものです。そしてその依頼の背景には、提供する商品やサービス、あるいはあなた自身に寄せられる大きな期待や信頼があります。仮にあなたが営業職であれば、取引先からのご注文、ご契約をいただくことを、とてもやりがいに感じているはずです。大きな喜び、安堵、さまざまな感情が湧き上がっていることでしょう。ぜひその想いをメールに乗せてみてください。
依頼主の想いに応える
社内において、上司からの依頼であっても同様です。あなたの得意な業務であったり、あなただからこそ依頼された仕事があるはずです。
専用システムの構築について承知いたしました。
必ず来期のスタートに間に合わせますので、お任せください。
期日までに責任を持ってやり遂げる姿勢を表現しています。上司の方も、きっとあなたに頼もしさを感じ、安心して仕事を任せてくれることでしょう。
新規プロジェクトチームの発足について、承知いたしました。
ぜひやらせてください。夏のイベントも必ず成功させます。
新しいチャレンジ、今より高い役割を担う機会もあるかもしれません。そんなときには前向きな姿勢、実現したい目標などを伝えてみましょう。
ひとつひとつの仕事の依頼に一喜一憂する必要はありません。淡々とこなすだけの仕事も、もちろんあるでしょう。しかし、それだけでは収まらない仕事も必ずあるはずです。多くの葛藤や苦労を乗り越えたうえで依頼された仕事。いつか実現させたいと願い、いよいよ巡ってきたチャンス。仕事への想い、それは依頼を受けるあなただけではなく、依頼するほうの心にもあります。喜びや感謝の気持ち、仕事に取り組む意気込みなど、ぜひ表現してみてはいかがでしょうか。仕事を円滑に進めるとともに、きっと新たなチャンスにも恵まれることでしょう。
井上賢治
一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師
1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を活かし、新たな印刷会社の立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、ヘッドハンティングにより移籍した会社では東京支社長に就任、20名の部下を統括する。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を活かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。
日本ビジネスメール協会
日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。