多くの読者の皆さんは、中学校で英語の勉強を始めた方が多いと思います。私自身の記憶では、英語を学び始めた頃に先生から指摘を受けた項目の代表格は、「三単現のs」(三人称単数が主語の現在形の文では、動詞の後ろに”s”がつくというルール)です。この他の英語の先生からの指摘も、文法事項の間違いに対するものが多かったと思います。

また、英作文では、日本語で書かれた和文をいかに「正しい英語に」訳すかに指摘のポイントがあり、文章全体が説得力のあるものになっているか、理解しやすい文章になっているかという点については、あまり力点が置かれていなかったのではないかと思われます。

学校英語で身についた発想のくせ

大学受験を意識してか、これまでの学校英語では、コミュニケーション力の高さよりは、まず文法的に正確な英文を書くことや一文一文を正確に訳出することが重視されてきたようで、そのため、社会人になっても、「英語の学習と言えば、文法であり、正しい訳出である」という思いが、多くの人の共通認識となっているのではないでしょうか。

私がこう感じるのは、一般社団法人日本ビジネスメール協会主催で行なっている英文ビジネスメール講座などの研修で多く出る質問の多くが、文法的な正確性についてのものや「この和文の英訳はこれで良いのか」といったものであり、文章全体としての機能性(つまり、自分が望んでいる行動を起こしてもらい、仕事を前に進めることができること)に関するものがあまりないからです。

「一文一文が文法的に正確」だけでは仕事は進まない

しかし、皆さん、考えてみてください。メールを一通書く際に、文章を構成する一文一文が、文法的に正確でスペルミスがないことと、文章全体として機能性が高いこととは別問題ではありませんか。仕事を前に進めることのできるメールには、例えば次のような要素が備わっているはずです。

文と文のつながりが論理的であり、全体として理解しやすい。
一文一文が簡潔で、短い。
ことばづかいが丁寧で、気遣いが感じられる(※)
箇条書きや記号が適宜使用されており、段落ごとにスペースがあるなど、見た目にも読みやすい。


(※文法的に正確であっても、ぞんざいな表現は、良いコミュニケーションにはマイナスです)

実は、こうした点は、日本語でメールを書くときにも心得るべきポイントであり、日本語でメールを書く時には、多くの方がこうしたことを意識しているはずです。

しかし、同じ趣旨のことを、英語のメールにしようとした途端、文法的な正確さやスペルミス、その他、宛名の書き方はどうすればよいのか、結辞(日本語の「敬具」にあたる”Best regard,”や”Sincerely,”)の書き方などが気になって、機能性を確保するためのポイントが頭から抜けてしまう傾向があるのです。

機能性の高い英文ビジネスメールを書くには、ここに掲げたようなポイントを押さえる必要があります。協会で提供しているセミナーでは、それを英語で実現するにはどのようにすればよいのかも、具体的にお伝えしております。

日本語の論理性と英語の論理性

厄介なことに、一つめのポイントとして挙げた文と文のつながりの論理性については、日本語と英語で考え方が違うことがあります。そして残念ながら、英語でメールを書く際には、英語の論理性に合わせた方が意思を伝えやすいため、英語の論理に慣れる必要が出てきます。具体的には、何をどの順番で書くかの違いですが、こうしたこともセミナーでお伝えする対象です。

簡潔で短い文を書くコツ

二つめの簡潔で短い文を書くためにも、さまざまな手法があるのですが、最も基本的なものは、「文を能動態で書くこと」です。学校文法では、能動態をどんな場面で使い、受動態をどんな場面で使うかについては、あまり教えてもらわなかったような記憶がありますが、皆さんはいかがでしょう。

実は、ビジネス文書の作成や、会話、プレゼンテーションなど、多くのコミュニケーションの場においては、能動態を基本的に使用する傾向にあります。つまり、「能動態が主、受動態は従」という関係にあります。基本的には能動態で書き、受動態は受動態で書くべき時に使われるのです。どんな場合に受動態なのか、この点も、セミナーでお伝えする内容になっています。

心遣いが現れる英語表現

また、英語においても、心遣いは重要であり、そのため(前回も触れました)敬語表現にあたるものも多くあり、言葉の丁寧さの順を把握することも必要になってきます。過度に詳しく知る必要はありませんが、「こうしていれば、まず問題はない」という安全圏を知ることは、非常に大切です。

ここでも、実は、学校で習った仮定法などが活躍するのですが、学校では、仮定法を丁寧表現、尊敬表現して使うという使用目的については、あまり教わらないようです。

冒頭、学校英語とメールの英語を対比してご紹介したため、「学校英語と仕事の英語は別物」との印象を持たれたかもしれませんが、実はそうではありません。学校で身につけた英語は、仕事で使う英語の中でも、基礎として十分に使えるものです。

協会が提供するセミナーでは、せっかく身につけている学校英語を、仕事で使えるよう、その活用法をお伝えしているとご理解いただければと思います。

戸田博之

戸田博之

一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。オフィス エイ・エイチ代表。早稲田大学、法政大学、東京医療保健大学講師。2017年3月、東京大学大学院修士課程総合文化研究科言語情報科学専攻修了、現在同博士課程在学中。研究テーマとしては、ビジネス英語教育、特にライティング、プレゼンテーション等に力点を置いている。執筆や翻訳活動の他、ビジネス英語、英文メールおよび金融商品と社会保険関連セミナーなどの講師をつとめる。 また、金融ライターとして、東洋経済等一般経済誌他、金融業界誌への寄稿多数。著書に、「投信・個人年金セールス実践マニュアル」(こう書房)、「これで安心!年金をしっかりもらう本」(秀和システム)、「英文ビジネスEメールがサクサク書ける 自律的ライティングのすすめ」(研究社)がある。

日本ビジネスメール協会

日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、これまでにメールに関する書籍を中心に28冊出版(内2冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,000回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信してきた。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行っており、本調査は、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールに関する研修(講師派遣)や講演(公開講座)を実施。2時間でビジネスメールを学ぶ、「ビジネスメールコミュニケーション講座」は東京を中心に毎月開催。研修の問い合わせも受け付け中。