乗用車においても席次がありますが、タクシーの場合と、上司や訪問先のお客様が運転する場合では席次も違ってきます。

タクシーの場合

タクシーの場合は、車の構造上最も安全な場所である運転席の後ろが上座です。後部座席に3人で座るときには、座り心地が悪い真ん中が下座ですが、さらに4人で乗るときには助手席が一番下座になります。

  • タクシーにおける席次

ただし、一番奥の席は乗り降りがしにくいので、和服の方や身体的理由で入り口すぐに座ることを希望なさる方もいらっしゃいます。そういったときには「和服をお召しになっていらっしゃるので、手前にお座りになった方がお楽でしょうか。私が奥に入りましょうか」といった言葉で意向をお聞きすると、心づかいのできるより優れたビジネスパーソンになります。

上司や訪問先のお客様が運転する場合

一方、訪問先の方が駅まで迎えに来てくださったり、上司や取引先の部長が車を出してくださってその車に便乗するような場合は、助手席が一番上座になります。その次は後部座席の運転手後ろ、助手席後ろ、真ん中が一番下座になります。運転をしてくださる方と会話を楽しむことができる上位者が助手席に座ることにより、運転者へ敬意を表す「席次」になるわけです。

  • 上司や訪問先のお客様が運転する車における席次

新幹線や飛行機においても上座と下座があります。席次を考えるときの基本は「大切な人を危険から守ること」という危機管理の面がありますから、上位者には「入り口から遠い方」「暴漢から襲われにくい場所」という「上座」に座っていただくわけです。そしてさらに、「相手が快適に心地よく過ごせる場所」を上座とします。

そのように考えると乗り物における席次も、自ずとわかってきます。

1.窓側が上座、通路側が下座
2.ドアから遠い方が上座、近い方が下座
3.対面するボックス席においては、進行方向を向く方が上座

  • 新幹線における席次

このようになるわけです。

上位者と一緒に乗るような場合はそういった基準で席次を配慮しますが、どのようなケースでも「下座だから私はここ」と決めつけてさっさと座るのではなく、上司の動向を見守り、必要に応じて「窓側にお座りになりますか」「通路側の方がよろしいでしょうか」などと声掛けをすることが、心づかいのできる社会人と言えます。

エレベーターにおける席次とマナー

上位者やお客様と同行してエレベーターに乗り込む場合は、まず上位者に先に乗っていただきます。自身はエレベーターのドアやエレベータ外の「▲▼」のボタンを押さえて、上位者が乗り込んでから最後に乗り込み、操作盤の前に立ちます。そして行き先階を押し、ドアの開閉操作をします。

席次の順位としては、操作する人の後ろが上座で、席次は時計回りになります。目的階に着いたら上位者に「降りて右手にお進みください」などと声をかけ、先に降りていただき、自分は「開」のボタンを押したり、ドアを押さえたりして最後に降ります。

  • エレベーターにおける席次

日本においては、駅のエレベーターでも我先にとサッサと降りて行く人がほとんどですが、操作盤前に立った場合には、全員の方が降りるまでドアの開閉を操作するという配慮ができる人になれるといいですね。

そして、先に降りて行く人も、操作盤前で「開」ボタンを押してくださっている方に「ありがとうございます」とひと言声をかけながら足を進める、そういったコミュニケーションがその場を明るくする心地よい空間を生み出すことになります。

席次は「おもてなし」の心につながる

2回にわたり、さまざまなシーン別の席次の基本をお伝えしてまいりました。何より大切なことは、これらの基本を押さえたうえで、その場の状況に合わせて臨機応変に対応できる力を身につけることです。

上座・下座といった席次は「堅苦しく面倒くさい」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、この席次は、「大切な方を居心地の良い場所へご案内して、ゆっくりくつろいでいただきたい」という「おもてなし」の心からきています。目上の人や上司・年長者、お客様などに対して敬意やおもてなしの気持ちを表すことができるのであれば、ぜひ相手に座っていただく位置・自分が座るべき位置を理解して、1ランク上のできるビジネスパーソンになりましょう。