悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、仕事の優先順位をしっかりとつけられるようになりたいと悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「仕事量が多く、うまくさばけない。よい優先順位のつけ方を教えて欲しい」(47歳男性/営業関連)

  • 仕事の優先順位、正しくつけるには?


少し前にも、「次から次へと仕事が舞い込んでくるので、効率的なやり方を身につけたい」というご相談をいただいたことがありました。今回は優先順位のつけ方についてのご相談ですので、共通する部分がありますね。

そのため、「また同じような悩みか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、考えてみていただきたいのです。これは、「一度取り上げたから解決する」というほど単純な問題ではないということを。

組織のなかで働いている人がいる以上、そして労働環境が「働きやすさ」と乖離しつつある以上、そのような悩みは今後も増えていくはずなのです。

そもそも、「より少ない人数で、より大きな成果を」などという考え方自体がナンセンスです。けれど、それがどうにもならないのであれば、やはり効率化を高めていくしかありません。いや、そういうネガティブな表現はやめましょう。それが得策なのです。

だからこそ、細かく考えていけば、優先順位のつけ方などには決して無視できない価値があるわけです。それは、過酷な環境下で自分自身になるべく負担をかけないための、つまり、よりよく生きていくための手段だとすら言えるかもしれません。

なんだか大げさな気もしますけれど、現代のビジネスパーソンは、そんななかで生きていく必要があるのでしょう。だとしたら、やはり「少しでも楽な方法」を見つけるべきではないでしょうか。

時間の価値を決める4つの要素

『スピードと成果が劇的に上がる戦略 最強の優先順位』(美崎栄一郎 著、かんき出版)とは、いかにも頼もしいタイトルです。花王で衣料用洗剤「アタック」などの日用品、化粧品ブランド「ソフィーナ」などを担当していたという著者は、残業100時間から「12時出社・5時退社」を実現した実績の持ち主。

つまり本書では自身の体験を軸として、効率化における重要なポイントである「優先順位づけ」のノウハウを明かしているのです。

大事なことを最優先すればいい。基本原則はこれで間違いありません。でも、現実の世界では、割り込み仕事が入るのです。(中略)では、どうすればいいのか? それは、割り込み仕事、そして些末な仕事があることを前提にして、優先順位をつけていくことです。(「はじめに」より)

  • 『スピードと成果が劇的に上がる戦略 最強の優先順位』(美崎栄一郎 著、かんき出版)

優先順位づけとは、「いま、なにをすべきか」を決めること。重要度や緊急度にかかわらず、抱えている"すべてのタスク"を処理できるように割り振っていくことにより、仕事が最適化され、結果として生産性が上がるということです。

優先順位をつけることは、時間の価値を最大化することだといいます。ちなみにここでいう時間の価値とは、「その時間でやるべき仕事の種類」と、「1時間あたりの生産性」。

そして時間の価値を決める要素としては、次の4つが挙げられるそうです。

1.今いる場所
2.まわりの環境
3.時間帯
4.体調
(44ページより)

詳しくは本書に譲りますが、まず大切なのは、自分自身がいる場所によって時間の価値が変わる(場所によってやるべき仕事が変わる)と認識すること。たとえば東京のオフィスで仕事をする3時間と、地方出張時の3時間とではやるべきことが違うということです。

しかも、周囲の環境(ワークスペースの快適性、仕事相手の行動パターンなど)を鑑みて、その場に適した仕事の優先順位を決め、割り当てることも重要。

さらには出勤直後、お昼前、昼過ぎ、夕方など、自分のワークスタイルに合わせて1日を分割し、各時間帯に最も合った仕事を振り分けることも無視できません。そしてもちろん、体調によって時間の価値が変わることも意識しておくべきだということです。

「自分の予定」を最優先にする!

『仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」』(石川和男 著、PHP研究所)の仕事の仕方も、効率化を実践するうえで参考になるかもしれません。なぜなら著者は、建設会社役員・税理士・大学講師・時間管理コンサルタント・セミナー講師と5つの仕事を掛け持ちする"スーパーサラリーマン"だから。

どう考えても忙しそうですが、時間のやりくりがうまくいかず悩んだ結果、「仕事の効率を極限まで高め、自分の人生を取り戻す」と決めたのだとか。

それからの私は、時間管理や仕事効率化の本を年100冊のペースで読み漁り、ビジネスセミナーにも月1回をノルマにして参加しました。いいと思ったコンテンツやノウハウは書き留め、実践し、習慣化していきました。そして気がつけば、「残業ゼロ」になるほど、効率的に仕事を進める術をマスターするに至りました。(「はじめに」より)

  • 『仕事が速い人は、「これ」しかやらない ラクして速く成果を出す「7つの原則」』(石川和男 著、PHP研究所)

そんななかで見つけた「最速仕事術」の要点は、「仕事の力の入れどころを見極める」能力。つまり本書では、誰もが応用できるそんなメソッドを公開しているわけです。

優先順位に関しては、「『自分の予定』を最優先せよ!」と記しています。「仕事が速い人たち」がハードスケジュールのなかにありながら余裕を感じさせるのは、「まず自分との約束をスケジュールに入れてしまうから」だというのです。

仕事が速い人は、「自分との約束」を何より最優先し、スケジュールに入れてしまっているのです。さらに約束の期限までに仕事を終えるように集中するので、ますます仕事が速くなります。(「はじめに」より)

そして、自分の予定を最優先するためのコツは、「まわりに宣言すること」。たとえば「いま、○○に向けて語学の勉強をしている」など、なんらかの宣言をしている社員がいたら、上司や同僚も「集中させてあげよう」と思ってくれるものだというのです。

この項では、プライベートな時間を確保するための策としてこの方法が紹介されているのですが、自分のなかで大切な仕事を優先する際にも、大きく役立てることができそうです。

仕事を「テキトー」にするとは?

『仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣』(吉田幸弘 著、あさ出版)の著者は、研修や講演、コンサルティングなどを通じて3万人以上の人々と接し、仕事時間や量を減らす方法を伝えてきたという人事育成コンサルタント。

本書では、そのなかから特に効果が高いもの、評判がよかったものを中心に、仕事を早く終わらせるためのコツや考え方、感情との向き合い方などを紹介しているのです。

たとえば今回のご相談に対しては、「早く終わる人はテキトーに仕事をし、終わらない人は常に全力で取り組む」という項目が特に役立ちそうです。

毎日朝から夕方まで、全力を出し続けることができる人はいません。(中略)すべてのことに全力を注ぎ、完璧にしようとしても、パワーがもちませんし、時間も足りなくなります。どんなに残業しても仕事が溜まり続けてしまいます。 完璧主義の反対は「テキトー」です。仕事が早い人は、時に「テキトー」に仕事をします。テキトーというと、サボりや欠陥品をつくるなど、悪いイメージで受け取られがちですが、本来の「適当」とは、適正な案配を意味するものです。重要度に応じて取捨選択したり、優先順位をつけたりすることが大切ということです。(95ページより)

  • 『仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣』(吉田幸弘 著、あさ出版)

なお、著者はここで、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した「パレートの法則」を引き合いに出しています。「20%の顧客が売上げの80%の利益を生み出す」というものですが、これは仕事の量にもあてはまるというのです。

つまり重要な20%の仕事が、80%の成果を生み出しているということ。だからこそ本当に重要な20%に力を入れ、重要性の低い80%はなるべくテキトーにするべきだという考え方です。

仕事には「こなす」仕事と、「頭を使う」仕事があります。
「こなす」仕事は、伝票作成、報告書作成などです。
「頭を使う」仕事は、企画書の作成や来季に向けての戦略の考案などです。
「頭を使う」仕事が20%の重要な仕事で、「こなす」仕事はテキトーにやっていい、重要性の低い仕事です。(96ページより)

たしかにこの点を意識してみるだけでも、確実に仕事の効率化を実現できることでしょう。


仕事に限ったことではありませんが、どんな物事にも「逃げ道」や「迂回路」はあるものです。あらかじめ指定された道を進むよりも、もっと効率的なコースがあったりするものだということ。

もちろん仕事も同じですから、まずは自分の「やりやすさ」を優先して考え、最適なルートを見つけ出すべきではないでしょうか?

印南敦史

作家、書評家。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家として月間50本以上の書評を執筆。ベストセラー『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)を筆頭に、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)ほか著書多数。4月8日発売の最新刊は、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)。