悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、仕事を続ていくうえでやりがいを感じられなくなり、悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み
「いまさら転職も出来ない、仕事に対してやりがいを感じられず困っています」(45歳男性/公共サービス関連)

  • 40代、仕事に飽きたが転職もできません(写真:マイナビニュース)

    40代、仕事に飽きたが転職もできません


毎日続けていると、特にルーティンワークが多い場合、仕事に対する新鮮味はどうしても失われていくもの。ましてや慣れていることであれば、なおさらやりがいとはほど遠いものになってしまうかもしれません。

しかもご相談にも書かれているとおり、40代になると転職もままならないはず。そんなわけで、精神的に追い込まれてしまうことも十分に理解できます。

ただ、だからといっていつまでも苦悶しているわけにもいきません。悩めば悩むほど、またどんどん自分を追い込むことになるからです。

では、どうしたらいいのか?

これは、発想の転換に尽きると思います。いま目の前にある現実を変えることはできないのですから、まずはそれを受け入れる。そして、「そこからなにができるのか?」を考え、少しずつでも行動に移していけばいいのではないでしょうか?

少なくとも、僕はずっとそうしてきました。決して合理的ではないでしょうし、回り道である可能性も否定できません。が、そもそも人生を合理的に進めることなど不可能な話なのです。だったら、できることからしていけばいいわけです。

そして、「なにができるのか、わからない」ということであれば、答えを本のなかから探し出すのもひとつの手。そう考え、今回は以下の3冊を選書してみました。

まずは「人間らしく生きる」こと

人間誰しも「もうイヤだ」と思うことがある。逆に言えば、「もうイヤだ」と思わない人間などいないのだ。私など、根がいいかげんなものだから、困難にぶつかるたびにすべて投げ出したくなる。そんなことはこれまで何度も経験した。(「はじめに」より)

『「もうイヤだ!」と思ったとき読む本』(斎藤茂太 著、あさ出版)の冒頭にはこう書かれています。著者は著名な精神科医・医学博士ですが、そんな人物でも「もうイヤだ!」と思うことはあるわけですね(当然ですが)。

  • 『「もうイヤだ!」と思ったとき読む本』(斎藤茂太 著、あさ出版)

    『「もうイヤだ!」と思ったとき読む本』(斎藤茂太 著、あさ出版)

しかし、あとになって振り返ると、つらい経験の数々はとても大事な経験だったと思えるのだそうです。いいかえれば、これまで味わってきた数々の「もうイヤだ」という体験は、のちのちすべてプラスに働いていったということ。

そこで本書では、著者自身の人生経験、そして医師としての経験も踏まえ、「もうイヤだ」という気持ちに対処するためのさまざまなヒントを紹介しているわけです。

なかでも第2章「会社の『もうイヤだ!』をラクにする」に書かれていることのなかからは、今回のお悩みに役立ちそうなトピックを見つけ出すことができるかもしれません。

会社勤めをする人にとって、会社や仕事はとても重要。けれども人間は、企業人である以前に“一個人”でもあります。そこで著者は、まず人間らしく生きることの大切さを知るべきではないかと記しています。

あなたのほんとうにやりたいことは何だろうか。それが趣味であるのなら、そうしたものを人生の中心に据えてみてはいかがだろう。思い当たるものがないという人は、とりあえず何か行動してみてほしい。街へ出かける、友達に電話をする、本を読んでみてもいい。犬も歩かなければ棒には当たらない。そのうち興味を持てるものがきっと見つかるはずだ。そして仕事は、これまでより少し力を抜いてみる。そうすると、意外に仕事もうまくいきだすかもしれない。(45ページより)

著者はまた、ある危険性についても触れています。もし「自分は会社の犠牲になっている」と思い始めたとしたら、それは危ないことだと。

たしかに、会社の仕事に献身的に取り組む真面目な人ほど、そのように考えてしまいがち。けれども行きすぎた犠牲的精神は、ときにその人の人生も誤らせることもあるというのです。でも当然のことながら、それでは人間らしく生きているとは言えないはずです。

そう考えると、仕事であれプライベートであれ、「自分らしくいるための軸」をつくり、それを意識することが必要なのでしょう。その軸を中心としたうえで、仕事とプライベートとのバランスがとれるようになれば、気持ちはきっと楽になるのではないでしょうか?

「好奇心」が生きるエネルギーを活性化させる

心理カウンセラーであり、人気作家でもある著者による『やる気のコツ──アドラーが教える9つの勇気』(植西聰 著、自由国民社)は、ベストセラーとして知られる“コツ”シリーズの一冊。

ここではオーストリアの精神科医、心理学者として多方面に影響を与えたアルフレッド・アドラーの教えや考え方を、「やる気」と紐づけています。「やる気を高める」ということを考えるうえで、アドラー心理学はとても参考になるというのです。

たとえば、こんな記述があります。

アルフレッド・アドラーは、「正常な人は、人生の課題と困難がやってきた時に、それに対処するために十分なエネルギーと勇気を持っている」と述べています。言い換えれば、この「エネルギーと勇気」が不足していると、人生の課題と困難がやってきた時に、やる気を失いヘナヘナとなってしまいやすいのです。ではどうすれば、「十分なエネルギーと勇気」を得ることができるのでしょうか。これは日常生活の中で、ちょっとした工夫と心得を持つことで得られます。(160ページより)

  • 『やる気のコツ──アドラーが教える9つの勇気』(植西聰 著、自由国民社)

    『やる気のコツ──アドラーが教える9つの勇気』(植西聰 著、自由国民社)

著者によれば、「生きていくエネルギー」をつくり出すための大切な要素のひとつが「好奇心」。「これを試したら、うまくいくのではないだろうか」「この先、自分の人生にはなにが待ち受けているんだろう」というような好奇心が、人生の課題と困難を乗り越えていくエネルギーを創り出していくということ。

小説家の森鴎外は、「未知の世界への好奇心が僕を刺激する(医薬)」と述べています。(161ページより)

この「刺激する」とは、「生きるエネルギーを活性化させる」こと。人生の課題や困難に直面したときは、それを乗り越えた先に見える「すばらしい自分の将来」がどんなものなのか、想像してみるべきだというのです。

そうすれば、自分のなかに「未知の世界への好奇心」があふれ出すもの。そのエネルギーが、人生の課題と困難を乗り越えるために必要な「生きる勇気」をつくり出していくという考え方です。

「目標」と「モチベーション」の関係

最後にご紹介したいのは、『ストレスゼロの生き方~心が軽くなる100の習慣~』(Testosterone 著、きずな出版)。筋トレと正しい栄養学の提唱者として数々のベストセラーを生み出してきた著者による新刊で、タイトルからもわかるとおり、今回のテーマは「ストレスのない生き方」。

ストレスを感じずに生きるために必要なことを、独自の視点で明らかにしているのです。たとえば「モチベーションが保てない」という人に対して著者は、「やる気が出ないならやらなければいいんじゃない?」と答えています。

モチベーションが保てないのは、それが自分のやりたいことではないから。だとしたら、やめるべきだという明快な考え方です。

モチベーションが保てないということは、それだけ本気で達成したいと思える目標に出会えていない証拠だ。どうしても成し遂げたい目標を見つけたら、人に止められようとその目標に向かって突き進むはずだ。(25ページより)

  • 『ストレスゼロの生き方~心が軽くなる100の習慣~』(Testosterone 著、きずな出版)

    『ストレスゼロの生き方~心が軽くなる100の習慣~』(Testosterone 著、きずな出版)

そして、モチベーションを保つための方法を考えなければいけないのなら、そもそも自分が持っている目標・行動が本当にやりたいことなのかを考えなおしてみるいい機会だともいいます。

成し遂げたくもない目標のための努力をするとしたら、モチベーションが保てなくて当然なのだから。

持論だが、モチベーションが維持できるか否かは、「何をやるか」を選んだ時点で9割決まっている。(25ページより)

とはいえ、そんな目標は簡単に見つかるものでもないでしょう。それに学業とか就活、資格や語学の勉強、転職活動のように、目標が明確ではなかったとしてもがんばらなければならないこともあります。

だからこそ、そんなときはモチベーションの有無など関係なしに、機械のごとく取り組むことが大切だと著者は主張しています。なぜなら、それ以外に方法はないから。

未来に楽をするためには、覚悟を決めてマシーンになることも、ときには必要だという考え方です。


「いまさら転職もできない」とか、「仕事にやりがいを感じられない」ということは、きっと事実なのでしょう。しかし、そうした思いに縛られていると、どんどんつらくなっていくだけ。

これらの3冊を参考にして、ご自身にフィットする部分だけを抜き出し、実践してみるだけでも、気持ちは楽になるかもしれません。まずは、そこをスタートラインにしてみてはいかがでしょうか?