あなたは文系? 理系? 高校時代に選ぶ方が多いこの二択。しかし文系だけれど社会に出てからIT業界に携わる「文系IT社員」という働き方もある。文系とIT、一見相反するように見えるが、顧客とエンジニアの橋渡しをしながら課題を解決する彼らの仕事とは……?

この連載では、AIと金融工学を活用したWebプラットフォームを開発・運営するMILIZEに所属する著者による、実体験をベースにした「文系IT社員の日常」を紹介する。

文系大学を卒業後、銀行の営業マンとして10年務め、IT企業に転職した主人公「三浦悟」は、データを活用して顧客の課題にどう応えていくのだろうか。

前回の話はこちら

三浦「そろそろフレッシュネス様の肉データの分析は終わった?」

大野「三浦君、ちょうど良いところに来たね。たった今終わったところだよ。ふふふ」

そう言う大野の表情は自信に満ち溢れていた。これは結果が期待できそうである。

三浦「それで、どうだったの?」

大野「まず決定木(※メモ1)を組み合わせたランダムフォレスト(※メモ2)を使ってデータを予測してみたのよ」

文系IT社員メモ

■メモ1「決定木(けっていぎ)」とは?
樹形図によってデータを分析する手法。区分の分類を行う「分類木」と、数値を予想する「回帰木」を用いる。

■メモ2「ランダムフォレスト」とは?
分類や回帰に使える機械学習の手法で、決定木をたくさん作って多数決する(または平均を取る)ような手法。

三浦「うんうん。」

大野「肉と一口に言っても色々あるよね。全体感で言うと、定番の加工食品は全体的に予測精度が高かったのに対して、生鮮食品は予測精度が低かった。で、生鮮食品の中でも一番予測精度が高かった豚のこま切れは誤差率約7%だった」

大野は満足げに豚のこま切れのグラフを見せてくれた。

  • 【豚のこま切れのグラフ】青:実際の値 オレンジ:AIが予想した値

三浦「誤差率約7%はすごいね。」

大野「でしょ。あとは『エクシアロースハム』なんだけど、年末に向けて右肩下りで推移することも再現できたよ」

三浦「『エクシアロースハム』は定番中の定番だよね。うちの実家でもよく買っているよ」

大野「イベントがない時期だと『エクシアロースハム』はキングオブ定番商品だから安定した売上なんだけど、クリスマスシーズンは他のハムも同時に売れるから売上が他の月に比べると落ちるんだよね」

三浦「なるほど、クリスマスシーズンは多くの家庭で豪勢な料理が並ぶもんね。普段より全体的に食品が売れるから波及効果で色々なハムが売れるわけか」

大野「さすが三浦君、話が分かるね。その通りだよ。クリスマスシーズンはやっぱり特殊だな」

三浦「まあね」

改めて褒められると照れる。

大野「一方で、生鮮食品は全般的に予測精度が低かったんだよ」

三浦「やっぱり生鮮食品は、賞味期限が短いことなんかが影響している?」

大野「正解! 加工食品は賞味期限が1週間以上ある物が多いから、売り切れになりそうになったら都度発注しているようなんだけど、生鮮食品は売れる時に一気に仕入れている様子なんだ」

三浦「それは発注する側も難しいよね。運動会で肉を買おうと思ってても、急に天候が変わって雨が降って中止になったりした日には、予想は大外れになってしまうしなあ」

大野「まさにその通り。だから売上も大きく動くんだと思うよ」

大野はそう言うと生鮮食品のグラフを見せてくれた。予想した値と実際の値がかなり乖離していることが分かる。

  • 【生鮮食品(全体)のグラフ】青:実際の値 オレンジ:AIが予想した値

三浦「なるほどね。確かに予想した値より実際の値の方がグラフでは大きな動きを表しているね」

大野「そうなのよ。生鮮食品は全体的に周期性などが見つからないし、実測の真ん中を通るようなAI予測になってしまうんだ」

三浦「ありがとう、とりあえず分析結果については了解。フレッシュネスの早坂様にまずはこの結果をお伝えしようかと思うんだけど、大野君も商談に参加してもらえるかな?」

大野「もちろんだよ。折角だから、より精度が高まるように色々質問を考えておくよ」

三浦「ありがとう! では早坂様に連絡して商談の場を設けるね」

そういうと早速、フレッシュネスの役員・早坂様にアポイントを取るため電話した。

次回に続く