本を読もう、と思い立ったその日が記念日。『今日はナニヨム?』は、あるキーワードをもとに関連本を紹介していくコーナーです。文学界にまつわる出来事だったり、いまメディアを騒がせている出来事だったり、本を読むきっかけはなんでもアリ。いままで触れたことのない本たち──そんな本との出会いを作れたらと思います。

前回、「直木賞」の直木三十五の話をしましたが、「芥川賞」の芥川龍之介は3月1日が誕生日。35歳という若さで自ら死を選んだことはあまりに有名ですが、誕生日は意外に知られていないかも。命日は晩年(と言っても35歳ですけど)の作品タイトルから「河童忌」と言われたりするそうですが、誕生日にはそういう二つ名はつけられないものなんでしょうか。

さて、芥川の作品で有名なものといえば『羅生門』『鼻』『蜘蛛の糸』などですね。教科書で読んだという人も多いと思います。でもこれらの作品はごく初期のもので、『河童』『歯車』など後期の作品はかなり性格が違います。なんというか、あらすじでは面白さが伝わらない感じの作品です。そんな中でも異色なのが『或阿呆の一生』。異なる場面の描写が数十~数百字でどんどん積み重ねられていくという、今で言うなら世界最初のTwitter小説みたいな作品です。芥川の作品は青空文庫でも読めますので、未読の方はぜひお試し下さい。 ところで、「直木賞」の対象作品が大衆小説であるのに対し、「芥川賞」は純文学の新人に与えられる賞なわけですが、『純文学』って何なのでしょうね…… と、歴代受賞作品リストを見ながら思ったりして。

『或阿呆の一生・侏儒の言葉』(角川文庫)

出版:角川書店
価格:580円

[内容紹介]
自ら三十五年の生涯を絶った最晩年、昭和二年に書かれた小説や感想、特に遺稿を中心にして編纂されたもの。表題作の他、「たね子の憂鬱」「古千屋」「冬」「手紙」「三つの窓」「歯車」等を収録。(amazon.co.jp「出版社/著者からの内容紹介」より引用)

『或阿呆の一生・侏儒の言葉』 芥川龍之介 著

『太陽の季節(改版)』(新潮文庫)

出版:新潮社
価格:540円

[内容紹介]
女とは肉体の歓び以外のものではない。友とは取引の相手でしかない……退屈で窮屈な既成の価値や倫理にのびやかに反逆し、若き戦後世代の肉体と性を真正面から描いた「太陽の季節」。最年少で芥川賞を受賞したデビュー作は戦後社会に新鮮な衝撃を与えた。人生の真相を虚無の底に見つめた「灰色の教室」、死に隣接する限界状況を捉えた「処刑の部屋」他、挑戦し挑発する全5編。(新潮社HPより引用)

『太陽の季節』 石原慎太郎 著


『蹴りたい背中』(河出文庫)

出版:河出書房新社
価格:399円

[内容紹介]
ハツとにな川はクラスの余り者同士。ある日ハツは、オリチャンというモデルのファンである彼の部屋に招待されるが……文学史上の事件となった百二十七万部のベストセラー、史上最年少十九歳での芥川賞受賞作。(河出書房新社HPより引用)

『蹴りたい背中』 綿矢りさ 著