皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第10回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするための色々な知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。

  • ウォーレン・バフェットの投資術

貿易戦争の影響続く

前回のコラムが掲載された5月21日時点で日経平均は23,002円でした。今月のコラムを書いている6月19日時点で日経平均は22,278円まで下落してしまいました。この1カ月日本株は良い材料もなければ悪い材料もないという感じであまり大きな値動きがなかったのですが、ここへきて米中の貿易戦争問題が再燃してしまいました。当初貿易戦争問題はお互いに"ブラフ"で問題は深刻化しないだろうとの見通しが広がっていたのですが、トランプ米大統領が「2000億ドル(約22兆円)の対中追加制裁関税の検討をせよ!」と発言し、それに対し中国もさらなる対抗措置を検討していると報じられここへきて問題がこじれそうな状況です。貿易戦争なんて両国にも世界経済にとっても良いことはないのですから、早く交渉で解決してほしいものですがなかなかそうもいかないようです。この問題が解決しない限り日本株も本格的な上昇は難しいかもしれません。

ウォーレン・バフェットの投資術

では今月も本題に入っていきましょう。前回のコラムでゴールデンウィークに米国に出張した際にニューヨークでヘッジファンドの方に聞いた投資の考え方などをご紹介しました。実はその出張の最大の目的はとあるイベントに出席することでした。そのイベントとはおそらく世界で一番有名な投資家であるウォーレン・バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの株主総会に出席することです。総会の模様はマネックス証券のウェブサイトでご紹介しておりますのでご覧いただければと思いますが、今月のコラムではウォーレン・バフェットの投資術の一端をご紹介したいと思います。

まず、ウォーレン・バフェットは過去にこんなことを書いています(本当はもちろん英語ですが、それを筆者が訳しています)。「投資家の目的は、簡単に理解できる事業を行っていて、5年・10年・20年後に今よりもっと利益を稼いでいる企業の株式を適切な価格で買うことである」(1996年「株主への手紙」より)

結局の所、株式投資で大切なのは将来に渡って利益成長していくであろう企業の株式を割安に買うことである、と彼は言い切っています。このコラムでも何度か紹介してきましたが、企業の業績と株価は中長期的に驚くほどリンクします。今後の成長性を見極めながら投資をすることがとても大切です。

ここからはいくつか具体的にバフェットが投資をする際に意識しているとされる内容をご紹介します。1つ目は、「自分がわからない会社には投資をしない」ということです。それもそのはず、「将来に渡って成長が見込める企業」に投資することが大切なのに、どんなビジネスをやっているか理解できない会社の成長性を判断できるはずもありません。バフェットがITバブルの際にIT銘柄に投資をせず、大きな損を被らなかったことはとても良く知られています。

2つ目は「過去の安定した事業実績」です。2-3年業績の伸びが続く企業はたくさんあります。しかし、5年-10年と伸び続けている企業は多くなく、それらの企業にははっきりとした伸びている理由があります。また、10年の間には経済危機の発生や世の中のトレンドの大きな変化など乗り越えなければいけない課題がたくさん出てくるでしょう。そういった課題を解決しながら成長をし続けた企業には利益を稼ぐための"実力"が備わっていると考えられます。マネックス証券の銘柄スカウターという無料ツールでは過去10年間の業績をグラフィカルにご覧いただけます。

そして3点目は他社が真似しづらいビジネスモデルの存在です。バフェットはこのビジネスモデルのことをお城を囲う"堀"に例えています。"堀"がないお城であればあっという間に敵に攻め込まれてしまいますが、"堀"があれば敵はなかなか本丸に攻め入ることはできません。"堀"をビジネスに置き換えて考えると、他社が真似できない独自の技術を持っている、インフラ関連事業(例えば鉄道など)のように規制などから参入障壁が極めて高い事業を行っているなどが考えられるでしょう。そういった"堀"がある企業であれば簡単に業績が大幅悪化することはないでしょう(もちろん企業内の不祥事発生などの例外はあるでしょうが……)。

まだまだバフェット流投資術のポイントはたくさんありますが、ひとまずここまでにしておきましょう。読者の皆様の銘柄を選ぶ際に今回ご紹介した「わからない企業には投資しない」「過去の成長実績を確認する」「企業に"堀"があるか調べてみる」というバフェット流投資術をぜひ取り入れてみてください。今月も最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!

執筆者プロフィール : 益嶋 裕

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
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