自転車事故に備えるとき、選択肢として思いつくのは自転車保険だという方も少なくないのではないでしょうか。前回は自転車保険の内容と選ぶときのポイントをお伝えしましたが、せっかく備えるのなら、少しでも保険料を抑えながら、自分に合った備えをしたいものです。そこで今回は、自転車保険以外の自転車事故への備え方をご紹介します。

  • 自転車保険以外の備え方とは?

自転車に貼ってあるマークに注目! 「TSマーク付帯保険」

今乗っている自転車に「TSマーク」が貼付されているか、ご存じでしょうか? TSマークとは、自転車安全整備店で自転車の点検整備をすることで加入できる自転車向け保険です。賠償責任補償と被害者見舞金(赤色TSマークのみ)、傷害補償がセットになっています。

マークには青色(第一種)と赤色(第二種)の2種類あり、補償内容が異なります。以下にそれぞれの補償内容をまとめてみました。

  • 自転車保険以外の備え方とは?

    TSマーク付帯保険の補償内容

TSマークの有効期間は、マークに記載されている日から1年間です。そのため、年に1度、自転車安全整備店で自転車の点検整備(有料)を受けて、TSマークを更新する必要があります。つまりTSマーク付帯保険の保険料は、点検整備を受ける費用ということになります。

TSマークは自転車に適用される保険なので、所有者に限らず、その自転車に乗車している家族や友人なども対象となります。自転車保険は自転車ではなく、加入者(人)に適用される保険なので、その点が大きな違いです。

賠償責任補償については、対物損害が補償の対象外であること、そして死亡もしくは重度後遺障害のみを対象としていることにも注意が必要です。また、示談交渉サービスは付いていないので、その点も自分のニーズと照らし合わせる必要があります。

自転車事故以外にも幅広く補償する「個人賠償責任保険」

「個人賠償責任保険」は、日常生活のなかで、他人の身体やモノに損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合、支払わなければならない損害賠償金等を補償してくれるものです。自転車に乗っているときに他人にケガを負わせてしまった場合や、他人の車を傷つけてしまった場合などは、この個人賠償責任保険で補償できます。

そのため、自転車事故だけではなく、以下のような日常生活で起こりがちなトラブルに幅広く備えることができるのが特徴です。

  • お店の売り物である高価な食器を割ってしまった
  • 友人宅で子どもがテレビを壊してしまった
  • 飼い犬が散歩中に歩行者を噛んでしまった
    など

個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険、傷害保険などの特約で加入するのが一般的です。家族の中で1人が契約すれば、原則、家族全員が補償の対象となります。保険料は加入している保険や補償内容などによって異なりますが、補償金額無制限・示談交渉サービス付きで年間2千円未満で加入できるものもあります。

加入を検討する際には、まずはすでに加入している損害保険に特約で付けられないかを確認してみることをおすすめします。補償額はもちろん、示談交渉サービスの有無もあわせて確認しましょう。

しかし、個人賠償責任保険はあくまで他人へ与えた損害に対して補償するものです。自転車事故での自分のケガに対しても備えたい場合、個人賠償責任保険では備えることができないので、注意が必要です。

自動車保険で自転車事故をカバーできる場合も

個人賠償責任保険では備えられない、自転車事故による自分のケガは、自動車保険の「人身傷害補償保険」と「自転車傷害特約」でカバーすることができます。

人身傷害補償保険は、対車の事故によるケガや死亡に備えるものです。契約車での事故のみ補償されるものと、契約車以外での対車の事故、歩行中や自転車に乗っているときの対車の事故も補償されるものとがあります。後者のタイプであれば、対車での自転車事故に備えることができます。

一方、自転車傷害特約は、歩行者との事故や自転車同士の事故でのケガ、または単独で転んでケガをした場合などにも補償されます。また、自分が歩行中の自転車との事故も補償範囲となります。

  • 自転車保険以外の備え方とは?

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家族全員が自転車保険に加入するとなると、保険料の負担も大きくなりがちですが、すでに加入している自動車保険を上手く活用することで、負担を抑えられる場合があります。自動車保険によって補償内容が異なるので、まずは加入している自動車保険の補償内容と特約をつけた場合の保険料をしっかりと確認してみましょう。

今回は、自転車保険以外の備え方として、TSマーク付帯保険、個人賠償責任保険、自動車保険、の3つをご紹介しました。次回は、自転車事故において特に高額になる可能性のある、他人への損害賠償に備えるための個人賠償責任保険について、さらに詳しくご説明します。

筆者プロフィール: 長谷部敦子

ラーゴムデザイン代表 長谷部敦子 ファイナンシャルプランナー、マスターライフオーガナイザー、メンタルオーガナイザー。父親の看取り介護、自身の結婚を通して、「心」と「お金」の整え方を知ることの必要性を感じ、学びを深める。2012年・2014年の出産を経て、2015年に「しなやかな生き方をデザインする」をコンセプトに起業。家計・起業・扶養などに関わるお金の悩みや、働きたい女性のメンタルについての相談・講師業を中心に活動。働く母の目線で、日々のくらしを快適にする仕組みづくりについての執筆も行っている。「生き方デザイン.com」