マンション購入や住宅ローンについては、マイナビニュースでもたびたび取り上げてきました。上手に住まいを取得するには、将来にわたる生活設計が何よりも大切です。

ですので、基本的な考え方を中心に据えて解説してきました。基本的な部分がしっかり押さえられていなければ、ハウツーものをいくら学んでもあまり効果がないからです。

しかし、今回は、それらを踏まえて具体的な手順を考えてみたいと思います。そろそろ住まいが欲しいとなった時から、マンションの引き渡しを受けるまでに、どんなことを行わなければならないか、どんなことをすればより思い通りのマンションが手に入るかを、順を追ってまとめてみたいと思います。

どんなマイホームが欲しいのかを徹底的に自問する

最初に夫婦で、話あって手に入れたいマイホームのイメージをまとめておきましょう。書き出すのがベストです。ポイントは子供の故郷づくりをイメージして考えてみる点です。新しい住まいや地域は子供にとって紛れもなく故郷になるからです。

・なぜマイホームが欲しいのか
・どんなマイホームが欲しいのか
・マイホーム取得に何か不安なことはあるか
・どんな地域に住みたいか
・どんな物件が良いか

この過程をおこたると、やみくもに物件を当たることになり疲れてしまい、判断ミスも起きます。ファイナンシャルプランニングはライフプランニングに始まり、ライフプランニングで終わるといわれています。つまり、お金のことを考え、資産をしっかり形成するには、何よりも人生設計が最も大切なのです。大きなお金が動くマンション購入であれば、なおさらです。

資金の目安をつけよう

この段階ではあくまで、物件を検討するための目安です。広くあたりをつけてみましょう。

手順1:物件価格の目安をつけよう
手順2:諸費用の目安を知ろう
手順3:自己資金を確認しよう
手順4:毎月の返済可能金額はいくらくらいできそうか
手順5:借り入れ可能金額はどのくらいか

住宅金融支援機構のフラット35では、返済可能金額は年収に応じて下記のようになっています。

年収 400万円未満 400万円以上
基準 30%以下 35%以下

年収500万円とすると、年間の返済額の限度はその35%の175万円で、月額にすると約14.5万円です。月額14.5万円、金利1.5%で35年返済の場合、

借りられる金額は4,730万円 購入できる価格は4,730万円+頭金

となります。

頭金に拠出する金額のほかに、諸費用、引っ越し費用、家具・照明費用、残しておく預貯金などの現金が必要です。

金融機関が設けている基準は、おおむね上記の表のとおりですが、返済は収入の25%程度に抑えた方が無難です。自己資金も20%準備した方の破たんが少ないと言われています。その場合の借入金額は下記の通りです。かなり差が出ますが、自分たちの状況に合わせて、考えてください。

年間返済額500万円×25%=125万円 月額約10.5万円

同条件で借りられる金額は約3,430万円です。

3,430万円+頭金(20%)850万円=購入できる価格4,280万円

必要自己資金は

頭金850万円+諸費用+引っ越し費用+家具・照明等の費用+残しておく預貯金

となります。

下記は購入時の諸費用項目一覧です。任意で地震保険、個人賠償責任などの保険料も必要です。住宅ローンによっては金利に組み込まれている内訳項目もあり、また不要となる内訳項目もありますので、個別に計算してください。

マイホームが欲しいと思ったときは徹底節約のチャンス!

欲しいマンションのイメージができて、費用の大まかな把握ができれば第一段階はクリアです。しかし、同時の着手したいのが頭金を増やす作業です。完成物件や中古物件を思い立ってすぐに購入することはなくはありませんが、通常はなんとなく「そろそろマイホームが欲しいね」といった夫婦の会話から始まるのではないでしょうか。

具体的にパンフレット収集や資金の検討を始めて、実際に引き渡しを受けるまでには、1年くらいかそれ以上はかかるかもしれません。購入するのが工事中の物件であれば、完成までさらにしばらくかかります。その間が、住まいを手に入れるためというモチベーションが高く、短期集中で節約するチャンスです。頭金の増額にもなりますし、膨らんだ生活スタイルを見直すチャンスです。

ポイントは「とにかく新規に何も買わない」です。とは言っても絶対に必要なもの、節約できないものはあります。下記の表のように、絶対節約できないものから、切り捨てるものまで4段階程度に区分して、それぞれの区分にそれぞれの支出を振り分けてみてください。光熱費や通信費の基本料金は節約できませんが、限りなく基本料金に近づける努力をします。

東日本大震災の時には我が家でも節電に励み、自分でも驚くくらいに請求金額が低くなりました。耐え難く不自由だったかと言えば、まったくそんなことはありませんでした。逆にある種のすがすがしさも感じるくらいでした。切り捨てるものは、欲しくても買わずに済ませるものです。

最初の土台固めとなる基本的な考え方をまとめることや資金配分は建築物の基礎と同じです。杭や基礎が不具合であれば、まさに砂上の楼閣です。建物の上の部分の性能がどれだけよくても全く意味がありません。

ただし、ここで解説できるのはごく一般的な部分です。考え方の方向性に不安があったり、判断に迷ったりしたら、是非建築士やファイナンシャルプランナーにインフォームド・コンセントを受けてください。ポイントは、計画の早い段階で相談することです。それだけ土台部分が堅固になるからです。

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<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

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