まだ経験の浅い若者が仕事で圧倒的な成果を出すには、人並み外れた努力が必要です。しかし、「働き方改革」の負の側面で、人より倍速で成長したいと思っても、今の若者はビジネスの現場で成長を積むことが難しくなっています。

でも、「私は年収を上げたい! 仕事ができる人になりたいんだ!」と思う人に、今の時代でも自分を成長させられる「仕事への向き合い方」についてお伝えします。

同じ環境で仕事をしていても、臨むスタンスでその成果や成長には雲泥の差が生じます。大事なのは行動とそれを規定するスタンスです。

  • 効率よく「仕事を学ぶ」には?

最も効率的な仕事の学び方とは?

仕事をしていれば、わからないことがたくさん出てきます。例えば、社内ミーティングやお客様先での会議中、初めて聞く言葉や、聞いたことはあるけれどちゃんと理解していない言葉が出てきた場合、あなたはどうしていますか? 上司や先輩が話しているし、自分には関係ないとスルーしていないでしょうか。

わからない言葉やわからないことがあったら、その都度漏らさずメモをし、あとで必ず調べて解消しておきましょう。これだけで仕事力が一気に上がります。

今やネットで調べればあらゆる情報が出てきます。「今日わからなかったことは今日中に解消する」ことが、着実に成長するための一番の近道です。

とはいえ、わからないことがあったらすぐに上司や先輩に教えてもらうというのはあまりホメられたものではありません。理由は、すぐに手に入った回答はすぐに忘れてしまうからです。

まずは自分で徹底的に調べてみる。そのうえで「ああでもない、こうでもない」と思考を巡らせる。そして「○○という理解で正しいのか?」という仮説ができた段階で上司や先輩に聞きに行く。これだけで「身になる知識」の付き方が断然上がります。

これこそ、人気のサッカー漫画『アオアシ』(小学館)の東京シティ・エスペリオンユースの福田達也監督が言った「自分でつかんだ答えは一生忘れない」です。

「教えること」が「一番の学び」となる

人よりも早く、多くのことを学びたいのなら、人に教えるのが一番です。「学ぶのに教えるの?」と疑問を持つかもしれませんが、間違いありません。

人に教えるには、言語化する必要がありますが、いざやってみるとうまく説明できないことが多いはずです。これは、多くの人が持っている仕事のノウハウとは意外とあいまいで、暗黙知的なものがほとんどだからです。

人に教えるためには言語化というプロセスが必須となるため、否が応にも暗黙知を形式知に変換する必要が出てきます。この、形式知化のプロセスの課程で頭の中が整理され、「知識や経験」が「再現可能な知恵や知見」に変わり、身体に染み込むのです。

「期限を守る」を最優先する

提案書でも報告書でも調査レポートでも、仕事が丁寧な人ほど、完璧に近い成果物を提出することにこだわります。しかし、仕事には必ず期限があります。

期限こそが仕事の成果を決めるすべてであり、期限をすぎた100点の資料は、期限通りの70点に劣るのです。ですから、仕事を依頼されたときは、最初に期限を確認してください。同時に、その期限までに求められるクオリティについても確認しましょう。

仮に、その期限までに100点満点の成果物を自力で出すことが無理そうであれば、期限までに相談の機会を与えてもらい、50点→70点→100点に近づけていくのです。そうしたことをせずに、期日になってから「終わりませんでした」では、上司や先輩は次から安心して仕事をまかせることができなくなってしまいます。仕事力とは段取り力。期限を守ることを最重要事項としてください。

仕事での成長は「累積矢面時間」に比例する

オンラインでもオフラインでも、クライアント(顧客)とのミーティングがある人は多いでしょう。 クライアントが何に困っていて、どんな問題が起きているのか、あなたは深掘りして聞けていますか?

クライアントの真意を引き出すには、100往復を超える言葉のキャッチボールをする必要があります。このやり取りを可能にするには、基本的な知識を持っているのはもちろん、知識が詰まった引き出しを瞬時に開けて、動的な会話を紡いでいかなければなりません。「仕事力=引き出しの量×瞬発力」です。

良いお手本がいます。『千と千尋の神隠し』(東宝)に出てくる釜かま爺じいです。彼は6本の腕を巧みに動かし、最高の湯を作ります。

釜爺は、天井からリクエストの札が降りてきた瞬間に、数ある引き出しの中から、顧客が希望する湯をブレンドするための薬草を取り出します。「この湯はあの薬草とあの薬草のブレンドだな。それはあそこと、あそこの引き出しに入っている」と無意識に腕が伸び、それを取り出す。これこそまさに「仕事力=引き出しの量×瞬発力」のお手本です。

では、僕たちが「ビジネス界の釜爺」を目指すためには、どうしたら良いのでしょうか? まず本を死ぬほど読んで引き出しを増やすことです。読書で、ある程度引き出しの量を増やし、その引き出しの中に必要な知識を入れていくことができます。また、ブログやnoteを書くのも、頭の中が整理されるのでオススメです。

しかしそれだけでは、待ったなしの現場では戦えません。瞬発力が足りないのです。この瞬発力を上げる唯一の方法は、「累積矢面時間(るいせきやおもてじかん)」を増やすことです。

これは、元野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 主任コンサルタントの鈴木良介氏の言葉です。鈴木氏は、「戦略的・計画的に自身のキャリアを作っていくためには、どれだけクライアントとの矢面に立ち、成功と失敗の経験を積んだか。それに尽きる」と説いています。

クライアント先で会議に参加していても、ただ座っているだけでは累積矢面時間は蓄積されません。宿題をもらって帰社して、会社で提案書や報告書を作成していても、クライアント先でそれをプレゼンしない人間はどこか他人ゴトで仕事をしています。なぜなら、自分がしゃべるわけではないからです。だから、そういう仕事も累積矢面時間には積算されません。

でも、ひとたび「上司(もしくは先輩)が風邪をひいた。明日のプレゼンはあなたがやってください」と言われた瞬間、自分ゴト化するのです。「ヤバイ! どう話そう?」「説明する順番を整理しておこう」「どんな質問が来ても答えられるように用意しよう」。これが累積矢面時間なのです。

後ろを振り返っても誰もいない、「自分がやるんだ」というヒリヒリ感の中で、どれだけ目の前の仕事を自分ゴトとして捉え、取り組むか。あなたの累積矢面時間はどのくらい貯まっているでしょうか。

本を読んで引き出しを増やす。累積矢面時間を増やして瞬発力を上げる。それを1分1秒でも多く積み上げる。この2つを愚直に繰り返す。そうすることで、どんどん勝率が上がるはずです。

著者プロフィール:池田紀行(いけだ・のりゆき)

株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長。300社を超える大手企業の広告宣伝・PR・マーケティング部に対するデジタルマーケティングやソーシャルメディアマーケティングの支援実績を持つ。『自分を育てる「働き方」ノート』(WAVE出版)など著書多数。