今年は3月のピーチ・アビエーション、7月のジェットスター・ジャパン、8月のエアアジア・ジャパンと、新しい低コスト航空会社(LCC)の新就航が続く。LCCといえば、ピーチが関空 - 札幌・福岡を片道250円で、スカイマークが成田 - 札幌・旭川・福岡・那覇を片道980円で販売するなど、大手にはないキャンペーン運賃や激安運賃で話題を呼んでいる。

そんな驚きの運賃が出せるのは、LCC(Low Cost Carrier=低コスト航空会社)という名の通り、運航・営業上の経費を低く抑えるビジネスモデルを採用しているからである。ただしコストが抑えられているからといって、すべてのLCCが安さだけをウリにしているわけではない。

"プレミアム"なLCCのヴァージン・アメリカとエアベルリン

世界には様々な航空会社があるが、JALやANAのような長距離線も短距離線も国際線も国内線も幅広く運航するネットワーク・キャリア(大手航空会社)に入らない比較的低コストで運航している航空会社はすべてLCCに分類される傾向が強い。そのため、LCCには格安運賃をウリにする航空会社だけでなく、一部ローカル路線を運航する航空会社や上質なサービスを体験できるLCCもあるのだ。

LCCにもある上級クラス

ドイツのエアベルリンは、路線にもよるが食事やキャンディー、新聞、雑誌などを無料で提供し、日本にも就航しているエアプサンではおにぎりが無料で出される。エアプサンは韓国のLCCだが、韓国では軽食が出ない航空会社は極端に人気が落ちる。そういう国内事情が色濃く反映されているのもLCCのおもしろいところだ。

また、上級クラスを設置しているLCCも少なくない。例えば、全長2m近いベッドがあって隣の人の顔が見えないように個室タイプになっているような、超豪華で大手のビジネスクラスのような座席はない。そもそも長距離路線を運航するLCCは少なく、そこまで豪華な座席は必要ないのだ。

ゴージャス感のあるジェットスター航空の上級クラス。ケアンズまで片道9万円(2012年3月)。大手のキャセイパシフィック航空は、香港経由の上に往復30万円前後もかかる

ジェットスター航空はカンタス航空の子会社であるため、上級クラスは空港ラウンジも使える(写真はメルボルン国際空港)

それよりも、そこそこ快適であり、ポケットマネーで乗れるような上級クラスであるほうが喜ばれる。日本路線でいえば、羽田 - クアラルンプールを運航するエアアジアXの「プレミアムクラス」は片道6万2,000円(2012年3月)で乗れる。成田 - クアラルンプールをマレーシア航空のビジネスクラスで往復すると16万円前後~で、JALなら20万円弱~。LCCは片道単位での販売だから、片道だけ上級クラスにすれば、大手よりずいぶんと安上がりだ。エアアジアXは行きが24時前に羽田を出る深夜便なので、この便を「プレミアムクラス」にするという使い方もあるだろう。

そもそも、LCCは「Low Cost Carrier(ロー・コスト・キャリア)」であって、必ずしも「Low Price Carrier(ロー・プライス・キャリア)」ではない。サービスの特徴やクラスも考えて、コストパフォーマンスの良いLCCを利用するのが賢い方法だ。

日本のLCCは新品の飛行機が多いのが利点。ライアンエアーやサウスウエスト航空など海外のLCCは中古で、なかにはかなり古い飛行機が数多く使われている