前回の記事ではスウェーデンのワークライフバランスを支える制度について紹介しましたが、今回は実際に子育て中のカップルがどのようにその制度を利用しているのか、どんな日常を過ごしているのかをお伝えしたいと思います。

  • グスタフ・ヴィーンストランドさん(左)、サーラ・ファルホディさん(右)、娘のリーヴちゃん

スウェーデン大使館の書記官に育休事情を聞く

取材に応じてくれたのは、スウェーデン大使館経で経済・貿易を担当する一等書記官のグスタフ・ヴィーンストランドさん(37歳)とフィアンセのサーラ・ファルホディさん(34歳)です。

サーラさんはこれまで開発途上国の支援や持続可能な発展といった分野でコミュニケーションコンサルタントやジャーナリスト、報道官として働いてきました。新型コロナウィルス感染症が拡大し、世界中が不安に包まれていた2020年5月にリーヴちゃんが誕生。現在16ケ月になります。

なお、2021年4月に、グスタフさんの赴任に伴い二人は東京に引っ越しています。

まずはサーラさんが4ケ月の育休を取得し、グスタフさんが2020年9月から2021年4月までの7ケ月を取得。その後、サーラさんが2021年4月から9月までの間で3ケ月を取得したのです。

スウェーデンの男性育休事情

スウェーデンでも子どもまだ4ケ月の頃に男性が育休を取得するのは珍しいそうですが、その理由の一つはサーラさんがSIDA(スウェーデン国際開発協力庁)で報道官の仕事に就いたことです。

育休を取得するにあたってグスタフさんは「贅沢なこと、自分が必要とされている人間と感じました。また自分一人だけの責任を持つことができて嬉しく思いました」と語っています。

実はグスタフさんの育休が始まったのは東京勤務が始まった時と同時でした。つまり着任する前に先にスウェーデンで7ケ月の育休を終えてから日本へ赴任したのです。

サーラさんに、グスタフさんの育休取得への感想を尋ねてみました。

サーラさん「彼が4ケ月になった娘と一緒に家にいてくれ、大きな安心感と安堵の気持ちを持ちました。出産してから3週間、私と娘と毎日一緒にいて、毎晩ミルクを与えたり、家事を手伝ったり、私がゆっくりと前の生活に戻るのを助けてくれるなど、グスタフは十分に心構えができていたのです。特に、娘が生まれたばかりの数ケ月、彼が一緒にいてくれたのはとても重要でした。というのも、私たちは新しい人生がどんなものになるかを一緒にたくさん学ぶことができたからです。

また、彼の育休取得は『ただの母親』ではなく、私が仕事に戻れることを意味しています。世間の話題、何が日々起きているのか、同僚と働いたり、執筆したり、講演会で話したり、再び、報道の世界に身を置けることです。また、帰宅して、グスタフと娘がうまくやっているのを見ることは、二人に対する愛情と感謝の気持ちを強くするような、素晴らしい経験でした」。

育休取得がキャリアのステップアップ

グスタフさん曰く、スウェーデンでは男性が半年であれ、1年であれ、育休を取得するのはむしろ良いことと評価されます。この理由の一つは、子どもを育てることは人間として成熟し、リーダーシップを培うこととみなされるからです。

統計的にみても育休取得はキャリアを積んで行くうえでプラスなっています。法律では2ケ月前に申請すれば取得する権利があり、雇用主が代理の人を探すという仕組みになっています。

そうは言っても、グスタフさんにも育休を取得することで仕事に悪い影響があるかもしれない、仕事を始めてすぐの育休取得は上司に悪い印象を与えてしまうのではという考えもよぎったそうです。しかも、まだ上司に会ったこともないのに!

しかしそんな不安は杞憂で、みんなに歓迎されたそうです。スウェーデンでは家族を最優先させるという考え方が非常に好意的に受け入れられます。家庭が幸せであれば幸せな人間となり、そういった幸せな同僚と働きたいと考えるのです。

スウェーデンでは父親は両親休暇とは別に子どもの出生時に2週間の休暇を取得することができます。この2週間をカウントすれば男性のほぼ100%が育休を取得したことになります。実際、グスタフさんの周りの父親になった人の中で、1人を除くすべての男性が両親休暇を取得しているそうです。

なお、取得期間については、いまだ圧倒時に女性の方が長く、二人に与えられる両親休暇480日の取得率は男性が30%、女性が70%となっていてジェンダー平等の問題の一つとなっています。