フレキシブルな労働時間、長期休暇、寛大な育児休業手当、少ない残業、これらはスウェーデンのライフスタイルを象徴するキーワードなのではないでしょうか。

世界の幸福度のランキングでは、スウェーデンは常にトップ10に入っていますが、充実したライフスタイルを考えるとこれは驚くべきことではありません。

  • スウェーデン人の考えるワークライフバランスとは 提供:Simon Paulin imagebank

また、スウェーデンは生産性も高く、グローバルイノベーションインデックスで2位となっています。スウェーデンは小国ながらもIKEA、Volvo、Ericsson、Electroluxといった多くの多国籍企業を輩出しています。

では、なぜこの「両立」が可能なのでしょうか。キャリアと家庭をどのように組み合わせているのでしょうか。ワークライフバランスを充実させながら、高い生産性とイノベーションを生み出すにはどうすればよいでしょうか。

スウェーデンにおけるジェンダー平等

スウェーデンは、世界で最もジェンダー平等が進んでいる国の一つです。男性も女性も労働市場に積極的に参加しており、人材がフル活用されています。官民両方において女性のリーダーシップが発揮されながら、出生率はヨーロッパの中では比較的高く、キャリアと家族との時間をうまく組み合わせているのです。

小さな子どもがいると、仕事と家事とさらに子育ての三立は確かに簡単なことではないかもしれません。

スウェーデンでは、ほとんどの両親は子どもが生まれても働き続けています。実は、ほんの数世代前は片方の親、ほとんどの場合は父親が働き、母親が家事をするのというのが普通でした。

その後、家事や育児における考え方の変化と政府の積極的な政策が一つになり、現代のスウェーデンの社会と労働環境が形成されました。より多くの女性が労働市場に参加し始めることにより、女性たちは政府と男性に要求し始めるようになったのです。

スウェーデンの育児休業事情

1970年代の就学前学校法の施行と両親休暇制度の導入といった2つの重要な改革が、男女ともキャリアアップしながら家族との時間を大切にし、育児と育児休業を組み合わせることを可能にしました。

職場だけでなく家庭でも「平等」はスウェーデン人には普通のことになりつつあります。すべての児童がフルタイムの保育を利用できるようにすることは、全自治体の義務で、1~5歳の子どもたちの90%が就学前学校に通っているのです。

育児休業も拡大し、父親がいわゆる「パパの月」とよばれる、育児休業を取得することが期待されています。両親には子ども一人当たり合計15ケ月の育児休業があり、それぞれ相手に譲ることができない3ケ月があります。残りの9ケ月をどのように配分するかは自由です。

男性が6~9ケ月の長期の育児休業を取得することは、ますます「当たり前のこと」と見なされ、雇用主によって歓迎されています。これにより、男性を支持する企業の雇用慣行の傾向が減り、性別による賃金の不一致は解消されなかったものの減少しました。

スウェーデンの企業が考える「生産性」

イノベーションと生産性はどうでしょうか。効率的かつ効果的な方法で仕事を終えると、自由時間が長くなる。多くのスウェーデンの職場、とくに事務職においては、フレックス出勤が一般的、オフィスでの顔合わせはあまり求めてられていません。パンデミックがさらに追い風となりました。重要なことは、仕事が行われる場所や所要時間ではなく、仕事そのものが行われることなのです。

残業が少ないと趣味や興味を楽しむことができます。長期休暇は充電期間となり、仕事の成果を上げるインスピレーションとモチベーションを得られます。多くのスウェーデン企業は「幸せな雇用者は生産的な雇用者」とみなしています。さらにグローバルな人材を獲得するには、健全なワークライフバランスを提供すること、と考えているのです。