「死」は誰にでも遅かれ早かれやってくるもの。でも己の「死の時」を自分で決めることなんて、安楽死や自殺行為にでも及ばない限りは無理!?……ところがスイスでは1941年に"assisted suicide(幇助自殺)"という行為が法律で認められ、それ以来、毎年200人ほどの人たちがこの方法で亡くなっているんです。

スイスが定めるこの"assisted suicide(幇助自殺)"とは:

"Assistance can be provided only in a passive way, such as by providing drugs. Active assistance - helping a person to take or administer a product - is prohibited. -- and only if performed by a non-physician with no vested interest in the death."

つまり、「幇助はあくまで、死に至る直接の行為には参加しない。たとえば死ぬための薬の提供は許されるが、その薬の投与や摂取に手を貸すことは出来ない。さらに医師など「人の死」にまつわる既得権利の保有者の関与は直接であろうが間接であろうが一切認めず」というもので、第三者によって死に至る「安楽死」とはハッキリ一線を画するようです。

そしてこの法律はスイス国民だけに止まらず外国人に対しても認められていることから、死する為だけにスイスを訪れる「"suicide tourism(死の観光事業)"」現象といった問題をも引き起こしてしまっているんだとか……。

これを重く受け止めたスイス政府は、この"assisted suicide"の廃止を問う"opinion polls(世論調査)"をチューリッヒ地区で実施したのですが、その結果は驚くべきもの:

"85% of the 278,000 votes cast opposed the ban on assisted suicide and 78% opposed outlawing it for foreigners"

とあるように、何と、278,000の有効回答の内、85%が幇助自殺の廃止に反対。そして外国人に対する規制にも78%が反対意見を投じたそうです。

BBC(British Broadcasting Corporation)の今回の記事では、これほどの強い反対は、スイス人が人の死の時期を定めることは個人の権利だと強く信じているから、また、"suicide tourism"は問題としながらも、この権利は万国共通だと信じているから、と解説しています。

そしてこのような法律がある限り、"assisted suicide"を手助けする団体や組織が現れるのも仕方のないこと。現在スイスでは"Exit"と"Dignitas"といったところがいわば大手に当たり、"Dignitas"に至ってはすでに1,000人以上の外国人の自殺に手を貸したそうです。

これらの組織に手助けを求めるのはドイツやフランス、または、他のこういった行為が違法とされている国々の人たちが多いとかで、その業務内容は、本人とその肉親の心のケア、死の方法など複数回の面接を通しての徹底したサポート。記事では料金体系にまでは触れていませんが、こういったサポートっていくらぐらい掛かるんでしょう!? 無料なのか、はたまた有料なのか!?

昨今死の定義は、臓器移植も伴って揺らいでいるようです。心臓の停止それとも脳機能の停止、どちらが本当の人の死なのでしょう? また、スイスで許されているような幇助自殺を遂げた人の臓器は移植の対象になるんでしょうか?

スイスでは"suicide tourism"現象に伴って、"assisted suicide"の法律自体を見直そうとする動きが加速しているようで、現状でも本当に最後の手段、それも"terminally ill(治ることのない病気)"の末期患者にのみ許し、外国人には"imposing a residency requirement of at least one year in the Zurich area in order to qualify for the service"のように「この法律の適用を受けるには最低でも1年以上の居住条件が必要」と変え、取り締まりを強化していくそうです。しかし、これほど反対意見が多くてはそれも前途多難。果たしてこの法律の行く末は如何に!?

そして、もしこのようなことが日本でも認められているとするなら、あなたはどうします? どんな状況にあっても死の訪れを待ちますか、それとも……!?

今回のURLは、BBC News - Switzerland: Zurich votes to keep assisted suicide。興味がある方は是非チェックしてみてください。

英語ワンポイント:

英語で「脳死」は"brain death"、「心臓死」は"cardiac death"、また、「安楽死」のことは"mercy killing"、そして自殺は"suicide"、一部では"self-murder"などといった言い方をします。

ではまた次回。