心肺蘇生法と言えば呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人に施す救命処置で、一般によく知られているのが:

  1. 気道確保
  2. 2秒間の吹き込みを5秒に1回のペースで行う人工呼吸(2回)
  3. 胸骨が3.5~5.0cm下方に圧迫される程度の心臓マッサージ(15回)

という流れ。そして負傷者に何らかの反応が見られるまで手順2.と3.を繰り返すのか良いとされています。

しかしごく最近になって、この流れに「待った!!!」をかける新しい方法が話題を呼んでいます。そこで今回は"Hold Your Breath: Compression-Only CPR is Better"と"New CPR is spelled C-A-B"の2つの記事をもとに、その新方法を紹介することにしましょう。

英語で従来の心肺蘇生法のことは"CardioPulmonary Resuscitation"、または、この名称の頭文字だけをとって"CPR"と呼ばれています。因みに"cardiopulmonary"は「心臓と肺の」、"resuscitation"は「蘇生」といった意味。つまりこれ全部で「心肺の蘇生」となります。

これに対して新方法の名称はというと"CardioCerebral Resuscitation"、または頭文字だけをとった"CCR"。

"cerebral"は一般的には「脳」に絡んだもの表すときに使われる言葉なので、こちらは「心脳の蘇生」といったような意味でしょう!?

そしてこの方法で要求されることはと言えば、ただ一つ:「心臓マッサージ」のみ。ただそれをし続けるだけなんです。一分間に100回程度のプッシュ。これ自体は従来の方法とあまり変わりませんが、違うことは押し込む強さ。従来の方法では3.5~5.0cm程度が良いとされていますが、新たな方法では最低でも5cmは押し込むべきだと言っています。

つまり、この新方法では負傷者に酸素を送り込む、気道の確保と人工呼吸は不要と考えているわけですが、その理由としては"artificial respiration is still recommended for children and for adults in a few cases, including near-drowning and drug overdose"とあるように「負傷者が幼子の場合や溺水の場合、または薬物の過剰摂取の場合では人工呼吸は必要」、しかし、"In an adult who has been breathing normally, for several minutes even after cardiac arrest there is enough oxygen in the bloodstream to maintain the heart and brain, as long as compressions circulate that oxygen."ともあるように、「それが成人で発作の直前まで普通に呼吸をしていた人の場合なら、発作後でもしばらくの間は血流内に心臓と脳の為の酸素は十分残っているはず。よってマッサージさえし続け、酸素の循環さえ保てればよし」なんだそうです。

それに、従来の方法で一番ネックになるのが"mouth-to-mouth(口対口式)"で行わなければならない人工呼吸。医療に携わる人ならともかく、我々一般人には人助けとは思いつつも、この行為は負傷者の持つ病気の感染を恐れるなど、そう簡単にできるものではないと記事は述べています。そして一瞬の躊躇いから、救えたはずの命も…、といったことがよくあるんだそうです。

また、この新方法は過去5年にわたり、4,000件の症例の観察分析でも優れた結果が得られていて、何と従来の方法に比べ、60%近くの負傷者がこの方法で一命をとりとめたという結果も出ているんだとか…。

蘇生法を施すか否かで、負傷者の生存率は大きく異なるそうです。どちらの蘇生法がより良いのかはさておき、周りで発作を起こした人を見かけたら、何らかの方法で人助けはしたいもの。この新方法なら自分でも出来ると思われるなら、皆さんも是非トライしみるのはいかがでしょう。

今回のURLは、Hold Your Breath: Compression-Only CPR is Better - ABC NewsNew CPR is spelled C-A-B - CNN.com

興味がある方は是非チェックしてみてください。

英語ワンポイント:

どちらの記事にも複数出てくる"bystanders"という言葉。「見物人」とか「一般大衆」などといったのが本来の意味。しかし今回の記事では、それに加え「偶然に居合わせた人」といった意味も含まれます。

また、記事一つのタイトルにもなっている"C-A-B"ですが、従来の"CPR"の手順を表すのに"ABC"が使われるのをもじったものです。つまり従来の"ABC"は

  1. Check the airway for blockages(軌道を確保)
  2. give breaths(息を送り込め)
  3. circulate the blood(血を循環させろ)

という手順を表しますが、新たな方法(CCR)の"CAB"は何よりも先ずマッサージ(血の循環)が大事ということを表すものだそうです。

ではまた次回。