経済的に独立し、早期リタイアを目指す「FIRE」。アメリカ発祥のこの言葉は、日本でもここ数カ月の間で急速に市民権を獲得し、お金や投資の学校である私たちファイナンシャルアカデミーの門戸をたたく受講生からも「FIREを目指して投資を学びたい!」という声が聞かれるようになりました。

日々の労働に縛られることなく、自由に人生を謳歌できるFIRE。ただ、その実態をよくよく見てみると、落とし穴とも言えるいくつかの弱点に気づきます。この連載では、FIREに興味を持つ人が、後から知って後悔しないための「賢くFIREするために知っておくべきこと」についてお話しします。

  • 王道FIRE実現を目指す人が背負う"大きすぎる代償"※画像はイメージ

FIREの王道手法は、徹底した節約+手堅いインデックス投資

そもそもFIREがよくわからないという人もいると思うので、まずはおさらいをしましょう。『Financial Independence, Retire Early』の頭文字を取ったFIRE、日本語では「経済的自立による早期リタイア」を意味します。FIREに厳密なルールはありませんが、発祥の地アメリカで主流になっている手法では「年間支出の25倍」の資産を築けば独立ができる、としています。

具体的な金額で考えてみましょう。月々15万円あれば最低限の暮らしができる、という人であれば4500万円。20万円は必要だ、という人であれば6000万円。今の年収の25倍ではなく、生きていくために必要なギリギリな支出額を想定しているところが特徴的です。この目標金額を作り上げるために、徹底的に節約生活を続け、同時に20年ほどかけて、手堅いインデックス投資でお金を増やします。

FIREを実現した後は「4%ルール」のもと、築き上げた資産で生活しながら、運用も同時に行います。例えば、6000万円の資産を作った人であれば、そのうちの4%である20万円で月々暮らし、その一方で、使っていない残りの資産を年利4%で運用します。そうすれば、資産は底をつくことなく、一生働かなくても生きていけるというわけです。

「リタイア」のために、可能性あふれる20~30代という時間を犠牲にするのか

節約とインデックス投資という自分にもできそうなシンプルな方法で、定年まで働かなくとも一生食べていける。一部のお金持ちの話だと思っていた「経済的自由」が、自分にも獲得できるかもしれない。先行き不安なこの時代に、FIREに惹かれる人が多いことにも納得です。

私たちファイナンシャルアカデミーはお金や投資について教える学校ですので、FIREブームの以前から、投資を学び実践することで、経済的自由を獲得した卒業生をこれまでにたくさん輩出してきました。FIREという言葉が認知されることで、それまで投資に興味がなかった人が、国や会社に依存することなく自らの努力で経済的に自立しようとすることは、本当に素晴らしいことだと思っています。

ですが、私たちはいま流行りのFIREに、いくつかの点で一石を投じたいと考えています。その一つがFIREを実現するまでの「手法」です。先ほどお伝えしたように、20年ほどの期間、徹底した節約生活を続けることを前提にしているのですが、一歩ひいて考えてみると、可能性に満ちあふれた20~30代を、ただひたすら節約してお金を作ることに集中してしまっているということ。本当にそれで良いのか、という疑問を感じるわけです。

例えば「旅行」や「学び」にお金を使うことを考えてみましょう。一心不乱にFIREを目指す人にとっては、まとまったお金が必要なこれらの存在はご法度となります。ですが、若い時に自らの経験を通して新たな価値観に触れることは、その後の人生に、お金では変えられない大きな意味をもたらしてくれるのではないでしょうか。

もちろん、お金をかけなくとも、素晴らしい経験はできます。ですが、選択する時の最初のフィルターに「お金がかからないか」がある、というのは、若い時の可能性を狭めてしまうようにも感じます。つまり、リタイアというゴールのために、大切な「今」を犠牲にすることが、果たして正解なのだろうか、という疑問です。

「経済的自由」を獲得するなら我慢期は短く、「今」を大切にする余裕も

私たちファイナンシャルアカデミーは、FIRE自体は否定しません。しかし、経済的自由を手に入れるために、取り戻すことのできない一度しかない20~30代を、ひたすらお金を使わないよう暮らすのはもったいなすぎると考えます。そこでみなさんに提案したいのが、進化版FIREとも言える「パラレルインカム」という考え方です。

どちらも「経済的自由」を獲得するという点では同じなのですが、既存のFIREが「極限まで節約する」「経済的自由を獲得した後もミニマムに暮らす」という手法を取るのに対し、進化版FIREである「パラレルインカム」では、「今の楽しみも享受しながらお金を増やす」「生きがいとしての仕事を楽しむ」「リタイア後も人生を自由にデザインする」という点が大きく異なるポイントです。

極限までの節約を20年続け、貯めたお金をインデックス型の投資信託で少しずつ増やす。これは一つの方法ですが、しっかりと投資の知識やノウハウを身につけ実践することで、実はもっと楽に、そして短期間で、経済的自由は獲得できるのです。

次回は、絶対に語られない「FIREした後のあるあるパターンから気づく重大な事実」についてお話ししましょう。

ファイナンシャルアカデミー

お金の教養を身につけるための「総合マネースクール」。2002年の創立以来、東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて19年間で延べ60万人が、貯蓄や家計管理といった生活に身近なお金から、資産運用、キャリア形成、人生と社会を豊かにするお金の使い方までを学んでいる。現在、労働所得と資産所得という「2本の収入の柱」で経済的自由を獲得し「好きなコト」で人生を創り、自分らしく生きることを目指す「パラレルインカム実現スクール」などを開講している。