日々の仕事の中で声に出すかどうかは別として、誰でも一度や二度は思ったことありますよね。

「こんな会社辞めてやる!」と。

といっても結局、辞めた後のことを考えたり、いい先輩や同期の顔を思い浮かべたりして「チクショー」と思いながら仕事を続けているんですよね。ただ、本当に辞めよう! と思ったときにはスッパリ辞められるように、今のうちに辞めた後のこと、その中でもお金の部分、雇用保険について勉強しておきましょう(※退職を勧めているわけではありません)。

やるべきこと1……失業保険、本当にもらえるかチェック!

退職すると、雇用保険から基本手当(通称:失業保険)を受給できます。ですが、誰でも受給できるわけではありません。受給の要件は、「離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あること」。ほとんどの方は、勤続期間が「雇用保険の被保険者期間」となるでしょう。今の会社で1年以上働いているのであればOK。失業保険をもらえます。

失業保険を貰えるかチェック!

まだ1年たっていないという方でも、過去2年間に雇用保険に加入しながら働いた期間を足して12カ月あれば大丈夫です。「通算して12カ月」なので、連続している必要はありません。足しても12カ月に満たない方は、あと数カ月頑張って働くと受給できるので検討するのもアリです。

やるべきことその2……「いつまで」「いくら」もらえるかチェック!

失業保険を受給できることが確認できたら、まずはどのくらいの期間もらえるのかをチェックしましょう。ここでも勤続年数が登場します。

勤続年数と給付日数

あと少しで10年になる、20年になる、という方は、もう少しだけ働くと約1カ月長く受給できるので、辞める時期の後ろ倒しを考えてみてもいいかもしれません。

やるべきことその3……失業保険の増額ワザを実践!

給付日数が分かったら、具体的な金額が一番気になるところ。1日分の金額の計算方法は次のとおりです。

1日分の金額(基本手当日額)

最後の6カ月間に支払われた賃金総額を180日で割った「賃金総額」に、「給付率」を乗じたものが1日分です。給付率は通常50~80%、60歳~64歳の方については45~80%です。また、1日分の金額(基本手当日額)には年齢ごとの上限額があります。平成28年8月1日現在の上限額は以下のとおりです。

基本手当上限額

この上限額に届かないかも、という方は賃金日額に注目してください。賃金日額は、退職前6カ月間の賃金総額をもとに計算します。そう。賃金総額を増やせば、賃金日額も増えるということです。 賃金総額に含まれるものは……

・基本給
・残業手当
・通勤手当
・家族手当
・住宅手当
・有給休暇中の賃金

などです。中でも注目すべきは「残業手当」。退職するのに申し訳ない……と退職前は残業手当を申請するのをためらうという声もありますが、退職前だからこそ残業手当をしっかり申請すべきでしょう。また、是非有給消化してから退職したいものです。

そのほか注意事項

失業保険は、退職後すぐに受給はできません。通常、ハローワークに離職票を提出して「求職申込み」をした日が「受給資格決定日」となります。基本手当は、受給資格決定日から7日間は支給されません(待期期間といいます)。また、倒産や解雇等ではなく「自己都合」で退職した場合、7日間の待期期間にプラスして最大3カ月間の給付制限がかかることもあります。ですので当然、少なくとも3カ月間の生活費は蓄えておく必要があります。

今すぐどうしても辞めたい場合

とはいえ、どうしても今すぐ辞めたい、勤続年数とか残業代とか貯蓄とか……そんなこと言っていられない! という方もいるでしょう。

このままでは失業保険を受給できない方は、「求職者支援制度」を利用しましょう。求職者支援訓練や公共職業訓練を受講しながら就職支援を受けることで、職業訓練受講給付金(月額10万円+交通費)を受給することができます。訓練の受講料は無料。ただし、遅刻や早退をした時点で1円も支給されないので、気楽な気持ちでとりあえず……というわけにはいきません。また、世帯年収や金融資産等の要件もあるので、希望しても利用できない場合もあります。最後の手段と考えましょう。

一番大切なのは会社でもなく仕事でもなく、自分自身。辞めたいのに様々な不安がうずまいて辞められず、気付けば心の病になっていた……ということのないように、せめてお金の部分だけでもちょっぴりクリアにしていただけたら幸いです。

なお、受給要件や金額等については個人によって異なる場合もあるので、詳細はハローワークにお問い合わせください。

執筆者プロフィール : 国分さやか


お金の教室 おさいふほんわか心もほんわか 代表
創価大学教育学部を卒業後、旧日本興業銀行の保険代理店や政府系金融機関に従事。"得をする方法を知りたい!"という一般生活者が多いものの、実は金融知識の不足から損をしている場面、しかも損をしていることにすら気付かない場面があまりに多い現実に問題意識を抱く。これを解消することを決意し、金融教育に携わる仕事を希望してFPの資格を取得。金融資産が増やすことだけでなく、幸福度数も増えることを大切にしている。現在、個人相談業務と並行して、金融の基礎知識を学ぶためのセミナーやFP資格講座、高校・大学、企業への出張講義などで活動中。


2013年
・第4回日本一のマネー講師決定戦E1グランプリにてグランプリ受賞
・第4回FP向上のための小論文コンクールにて奨励賞受賞
2014年 
・三省堂より初めての出版(その後、学研出版等より計5冊の出版)
・日本FP協会電話相談員
・資格の学校TAC専任講師
2015年 
・NHKラジオ「午後のまりやーじゅ」「ごごラジ!」お金のコーナー担当
2016年 
・日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター

<保有資格>:CFP、FP技能士1級、相続アドバイザー2級、小学校教諭第一種、幼稚園教諭第一種