マッチングアプリの普及によって、かつてないほど手軽に異性と出会えるようになった現代。しかし、出会いの機会が増えたからといって、必ずしも結婚につながるわけではないのはなぜなのか?
書籍『なぜ出会いは増えたのに結婚できないのか マッチングアプリ創業者がデータで明かす、選ぶ技術・選ばれる技術』(上條景介/光文社)では、マッチングアプリ「Dine(現D³)」の創業者である著者が、出会いと結婚をめぐる問題をデータや自身の経験をもとに読み解きます。
本記事ではその一部を抜粋・編集して紹介。今回は『駅から5分の店が、ちょうどいい』。
男性の9割が、多めに払っている
初デートには、二大論争がある。
一つは「サイゼリヤはありかなしか」論争。 そしてもう一つが、これから語る「奢り奢られ」論争だ。 SNSでは定期的にこの話題が燃え上がり、そのたびに男女が場外乱闘を繰り広げている。
まず、大前提を確認しておきたい。 我が国は、男女平等の国である。 日本国憲法第十四条は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別……により差別されない」と高らかに謳っている。 それだけではない。 1979年には国連で女子差別撤廃条約が採択され、日本も1985年にこれを批准。 同じ年に男女雇用機会均等法が制定され、翌年から施行された。 国際社会を巻き込み、半世紀近い歳月をかけて、我々は性別による差別のない社会を築き上げてきたのである。
その崇高な理念のもとに生きる令和の独身男女が、今、頭を抱えている難問がある。
「初デートの会計、どっちが払う?」
である。ある意味では、これは男女平等社会における最後にして最大の論争である。
論理だけで考えれば、答えは明白だ。 男女は平等なのだから、割り勘が筋である。 実際、誰しもが頭ではそう思っている。
ところが、だ。 この問題、論理では片づかない。 過去10年以上にわたり多くの女性にインタビューをしてきて、僕がたどり着いた結論はこうだ。
これは感情の問題である。
女性に聞くと、ほぼ全員が「初デートくらいは、奢ってほしい」と言う。 そして、奢ってくれない男性に対しては、「ああ、この人は自分にそこまで興味がないんだな」と感じるらしい。 金額の問題ではない。 自分のために手間と金を割いてくれるかどうかを、大切にされているかの試金石として見ているのだ。 論理的に正しいかどうかは、彼女たちにとって、どうでもいい。
では、現実はどうか。 当社が同世代同士の初デートについて支払いの実態を調べたところ、男性の約9割が「全額」または「多めに」払っていた。 男女平等が叫ばれて久しい令和においても、初デートは男性の奢りが、依然として主流なのである。 理念と現実は、かくも違う。
年齢別に見ると、さらに明確な傾向が出ている。 男性は、年齢が上がるほど「全額自分が払う」割合が増えていく。 20代前半では3割ほどだが、40代になると8割近くに達する。
若い男性ほど全額奢ることが少ないのには、おそらく二つの理由がある。 単純に、お金がないこと。 そして、若い世代ほど男女平等の感覚が自然に根付いていることだ。 どちらも、よくわかる。 金がないのは仕方がないし、相手が割り勘を受け入れてくれるなら、それで何の問題もない。
ただ、僕はあえて、こう言いたい。 周りが女性にお金を出してもらっているときこそ、リスクを取って全額奢る価値がある。 みんながやらないからこそ、そこに投資妙味があるのだ。
そう、投資だ。 数千円をケチって割り勘にし、相手に「私に興味がないのかな」と思われる。 これほど割の合わない節約はない。 逆に、その数千円を投じて好印象を勝ち取れるなら、こんなに安い投資もない。
投資の対象は、2種類ある。
一つは、もう一度会いたいと思える相手だ。 この場合のリターンは、言うまでもない。 2回目のデートであり、その先の交際である。 気になる相手にこそ、ケチってはいけない。
もう一つは、恋愛対象ではないが、友人になれそうな相手だ。 「この人とは付き合わないけれど、いい人だな」と思ったら、それでも奢っておく。 すると、その人がいい人を紹介してくれたり、合コンを開いてくれたりする。 これも立派なリターンだ。 数千円で人脈が広がるなら、悪い投資ではない。
逆に言えば、よほど失礼な相手にまで、無理して奢る必要はない。 投資というのは、リターンが見込めるからするものだ。 リターンの可能性がゼロなら、それはただの浪費である。
そして、ここが重要なのだが、奢るなら、店選びの段階から「奢る前提」で組むべきだ。
当社で、こんなアンケートも取った。 男性が同じ7000円の予算を使うなら、どの会計が一番好印象かを女性に聞いたのだ。
結果は、明快だった。 1人3500円の店で男性が全額奢る。 これが、断然の1位である。 1人5000円の店で男性が7000円だけ払って残りの3000円を女性が負担するパターンや、1人7000円の高い店で割り勘にするパターンは、はるかに人気がなかった。
女性が見ているのは、店のグレードではない。 今は安くてもデートに使えそうなお洒落で美味しい店がたくさんある。 「あなたのために、僕が払う」という意思表示のほうなのだ。
だから、見栄を張って高い店で割り勘にするより、身の丈に合った店で堂々と全額奢るほうが、よほど印象がよい。 予算が厳しいなら、無理にディナーを狙わず、ランチにして2人分を出す。 ランチなら2人で最低3000円で済むし、そちらのほうがずっとスマートだ。
ここまで散々「奢れ」と言ってきたが、一つ、誤解のないように補足しておく。
これは、あくまで「付き合うまで」の話だ。
晴れて交際が始まったあとは、割り勘でも何でも、2人の好きにすればいい。 むしろ、付き合ったあとも、結婚したあとも、永遠に男性が全額払い続けるなんて、そっちのほうがよほど破綻しているし、昭和の価値観だ。 だから、全額奢ることは「交際前の、期間限定の必殺技」くらいに思っておくといい。
『なぜ出会いは増えたのに結婚できないのか マッチングアプリ創業者がデータで明かす、選ぶ技術・選ばれる技術』(上條 景介/光文社)
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