文化服装学院は10月14日、「ファッションの感性で挑むモバイルバッテリー安全啓蒙プロジェクト」の公開プレゼンテーションを実施した。学生たちは「CHARGESPOT」と「東急歌舞伎町タワー」を題材に、モバイルバッテリーを取り巻く課題をリサーチし、独自のアイデアを盛り込んだ企画をプレゼンした。

  • プレゼンテーションを行う文化服装学院の学生たち

    プレゼンテーションを行う文化服装学院の学生たち

文化服装学院・CHARGESPOT・東急歌舞伎町タワーによる産学コラボ

2023年に創立100周年を迎えた文化服装学院は、日本初の服飾教育学校として認可された歴史ある服飾・ファッション専門学校だ。コシノジュンコ、高田賢三、山本耀司などをはじめ、著名なデザイナーを数多く輩出。これまでに35万人以上が同校を卒業している。

そんな文化服装学院が、モバイルバッテリーのレンタルサービス「CHARGESPOT」を手掛けるインフォリッチ、「東急歌舞伎町タワー」を運営するTSTエンタテイメントとともに、「モバイルバッテリーの安全啓蒙」をテーマとした公開プレゼンテーションを実施した。

今回のプロジェクトに参加したのは、同校の「ファッション流通科2年 ファッションプロモーションコース」に所属する75名の学生たち。学生たちは全12チームに分かれ、事前にモバイルバッテリーを取り巻く社会環境や、企業の取り組み、時事情報をリサーチし、仮説を立て、アンケートやインタビューなどの一次調査を実施した。

  • さまざまな調査、企画を重ねてきた学生たちが一堂に会す

    さまざまな調査、企画を重ねてきた学生たちが一堂に会す

そして、リサーチから得られた発見をもとに、だれに、なにを、どのように伝えれば安全について考えてもらえるのかを考察。各チームがそれぞれの感性やこれまで培ってきたクリエイティブ・プロモーションの力を活かして課題解決に挑んだ。

審査委員長はインフォリッチ執行役員の梶桃郎氏、審査員は同アカウント マネージメントの五味功多氏、同マーケティング部の茶幡真紀氏、TSTエンタテイメント企画販売部のリチャードソン 千尋氏、COMET MAGAZINEディレクター兼CC STOREオーナー兼アーティストのYAMEPI氏が務めた。

  • 審査委員5名が、厳しくも温かいまなざしで学生たちの提案を見守る

    審査委員5名が、厳しくも温かいまなざしで学生たちの提案を見守る

トイレやペンライト、クレーンゲーム……新しい視点に注目

プレゼンテーションの持ち時間は各チーム6分。限りある時間内で効果的なプレゼンを行うために、各チームはサンプルを作成したり、キャラクターをつくったり、クイズを出題したりとさまざまな趣向を凝らしていた。

最初に登場した1-Aチームが目を付けたのは、意外にも「トイレ」。提案したのは、「CHARGESPOT TOILET」。訪日外国人にとって日本のトイレは関心を引きやすく、視線が集まりやすい「完全集中空間」であると位置付け、トイレの扉、ポスター、便器周辺等を用いて、モバイルバッテリーの安全な使い方を伝える。歌舞伎町タワーのビジョンやSNSで動画を展開し、話題化も狙うという案だ。

  • 「CHARGESPOT TOILET」を提案する1-Aチーム

    「CHARGESPOT TOILET」を提案する1-Aチーム

続く1-Bチームは、訪日外国人の観光中の行動に着目。「OMAKASE!」と題し、欧米からの旅行者を主な対象とし、歌舞伎町周辺の観光情報、徒歩時間、CHARGESPOTの充電・返却場所、日本文化のマナー、モバイルバッテリーの安全な利用方法を掲載する冊子「OMAKASE MAP」を配布するという案。中国語版・韓国語版も作成し、QRコードからオンラインマップへ接続する計画だ。

  • 「OMAKASE!」を提案する1-Bチーム

    「OMAKASE!」を提案する1-Bチーム

街を巡りながら楽しめる企画を考えたのが1-Cチームで、周遊型謎解きイベント「チャポポ救出大作戦」を提案。モバイルバッテリーの利用状況に着目し、レンタルサービスの利用頻度が低い層をターゲットとした。歌舞伎町タワーを起点に新宿エリア8カ所のCHARGESPOTを巡り、約2時間で謎を解く構成だ。一部の謎はCHARGESPOTをレンタルしなければ解けない仕組みとし、無料レンタルコードを発行して抵抗感を下げる方針を示した。

  • 「チャポポ救出大作戦」を提案する1-Cチーム

    「チャポポ救出大作戦」を提案する1-Cチーム

親子で楽しみながら安全について学べる体験を考えたのは1-Dチーム。30代の子育て世代を対象に、巨大クレーンゲームを用いる体験イベント「CRANE SPOT」を提案した。親子で安全対策クイズに回答し、ポイントを得てクレーンゲームに参加するという体験フローで、安全な利用方法への理解を深め、レンタル利用やSNSでの共有につなげる。不要になったモバイルバッテリーを持参した人にはクーポンを渡す回収企画も組み合わせた。

  • 「CRANE SPOT」を提案する1-Dチーム

    「CRANE SPOT」を提案する1-Dチーム

ライブという若者に身近なシーンに目を向けた1-Eチーム。CHARGESPOTにペンライト機能を搭載し、ライブ前に専用端末から借りるという「CHARGESPOT LIGHT」を提案。「年間約5回アイドルライブに参加する20歳の女子大学生」をペルソナに設定し、ライブを新規利用のきっかけにすることを目指した。アーティスト別の限定ストラップ販売や、イベントで無料体験を提供してSNSで拡散する案も示された。

  • 「CHARGESPOT LIGHT」を提案する1-Eチーム

    「CHARGESPOT LIGHT」を提案する1-Eチーム

キャラクターを通じて安全な使い方を届けようと考えたのが1-Fチーム。オリジナルVTuber「充(みつる)ちゃん」を使った「キャラクターで伝える! 安全なバッテリー利用方法」を提案した。「VOICEVOX」や「Live2D」によってキャラクターに命を吹き込み、歌舞伎町タワーでの音楽イベントや、SNS・動画サイトなどでのアプローチを狙う案だ。

  • 「キャラクターで伝える! 安全なバッテリー利用方法」を提案する1-Fチーム

    「キャラクターで伝える! 安全なバッテリー利用方法」を提案する1-Fチーム

コスプレやお守りなどの日本文化に着目したアイデアも

観光と防災、CHARGESPOTをひとつにつなげたアイデアも登場した。2-Aチームは、「GOOD TRIP WITH CHARGESPOT」と題し、CHARGESPOT端末に体験型マルチタッチパネルサイネージを組み込む案を提案した。新宿の観光スポットやグルメスポット、CHARGESPOTのほか、災害時情報なども掲示し、街の回遊と安全への信頼形成を狙う。同チームの学生は、映像とトークを組み合わせた巧みなプレゼンで会場に笑いを届けた。

  • 「GOOD TRIP WITH CHARGESPOT」を提案する2-Aチーム

    「GOOD TRIP WITH CHARGESPOT」を提案する2-Aチーム

歌舞伎町ならではのカルチャーを生かした企画も。2-Bチームは、コスプレイベント「カブコス」と安全啓発を結び付ける「カブコスCHARGE」を提案。ポスターやデジタルサイネージ、誘導時の啓発プラカードなどが、撮影した写真の背景に映り込むことで、SNSでの拡散を狙う。また、コスプレイヤーのえなこ氏を起用候補として挙げ、撮影中の充電不足をきっかけにCHARGESPOTを紹介するという動画の構想を伝えた。

  • 「カブコスCHARGE」を提案する2-Bチーム

    「カブコスCHARGE」を提案する2-Bチーム

「守る」という安全啓発のテーマを、日本文化と結び付けたのが2-Cチーム。「OMAMORI SPOT」と題し、主対象を訪日観光客、副対象を20代日本人に設定した。「守ってくれる」という意味を視覚的に伝えられる「お守り」をデザインモチーフに、限定デザインや季節デザイン、おみくじ要素、神社風スポットなどを通じて安全への取り組みを伝えるアイデアを披露した。

  • 「OMAMORI SPOT」を提案する2-Cチーム

    「OMAMORI SPOT」を提案する2-Cチーム

一方、歌舞伎町のナイトカルチャーに着目したのが2-Dチーム。ファッションへの関心が高い20~30代を対象に、「ZEROTOKYO」での一日限定イベント「CHARGE THE NIGHT」を提案した。「説教ゼロ、発火ゼロ、安心100%、熱狂1000%」をコンセプトに、アーティストやインフルエンサーなどにCHARGESPOTを体験してもらい、カルチャーを通じた安全性の啓発を狙う。

  • 「CHARGE THE NIGHT」を提案する2-Dチーム

    「CHARGE THE NIGHT」を提案する2-Dチーム

安全について学ぶプロセスそのものを、アトラクションに仕立てたチームも。2-Eチームは、参加者がスマホのライトを頼りに歌舞伎町タワーから脱出するリアル脱出ゲーム「歌舞伎町タワー ブラックアウト」を提案。最初にCHARGESPOTの位置と避難経路を見つけ、次に充電を行いながらライトで探索、最後のエリアで異常が見られるバッテリーを見分けるという流れで、終了後に安全管理の振り返りや返却案内、飲食利用への誘導を想定した。

  • 「歌舞伎町タワー ブラックアウト」を提案する2-Eチーム

    「歌舞伎町タワー ブラックアウト」を提案する2-Eチーム

最後に登場した2-Fチームは、音楽を軸に言語や文化を越えて楽しめるイベントを企画。「CHARGE the BEAT」と題し、「ZEROTOKYO」で音楽、フォトスポット、飲食、ステージを組み合わせたイベントを提案した。利用者への割引や屋外広告、SNS・デジタル広告、参加者による投稿を通じて「興味を持つ、検索する、体験する、利用する、共有する」の循環を生み出す構想だ。

  • 「CHARGE the BEAT」を提案する2-Fチーム

    「CHARGE the BEAT」を提案する2-Fチーム

ついに授賞式、グランプリを受賞したチームは?

全12チームのプレゼンテーションを終え、結果発表を前に審査員から講評が行われた。インフォリッチの梶氏は、次のように振り返った。

「大人や専門家が多くのことを考えていても、優れたアイデアが必ずしも大人から生まれるわけではないと改めて実感しました。皆さんは『人の心にどうやって届けるか』を考え、安全性という課題を、人が見たくなる、誰かに話したくなる表現へ変換しようとしてくれました。その点に大きな価値があったと思います」

  • インフォリッチ執行役員 梶 桃郎氏

    インフォリッチ執行役員 梶 桃郎氏

講評を終え、結果が発表された。

チャースポ賞は、1-C「チャポポ救出大作戦」。茶幡氏は、「文化服装学院、歌舞伎町タワー、CHARGESPOTの三者がとても活きるようにプランニングしてくれた」と評価した。

  • インフォリッチマーケティング部 茶幡 真紀氏

    インフォリッチマーケティング部 茶幡 真紀氏

歌舞伎町タワー賞は、1-A「CHARGESPOT TOILET」。リチャードソン 千尋氏はターゲット分析、プロモーションの設計力、クリエイティビティを高く評価。「見ていて惹かれる、ワクワクするような設計の仕方を行っている」とコメントした。

  • TSTエンタテイメント企画販売部 リチャードソン 千尋氏

    TSTエンタテイメント企画販売部 リチャードソン 千尋氏

YAMEPI賞は、1-F「キャラクターで伝える! 安全なバッテリー利用方法」。YAMEPI氏は、「男子はイベント、女子はVTuberでやりたいことがバラバラだったが『充ちゃん』を作り込んだことに感動した」と伝えた。

  • COMET MAGAZINEディレクター兼CC STOREオーナー兼アーティスト YAMEPI氏

    COMET MAGAZINEディレクター兼CC STOREオーナー兼アーティスト YAMEPI氏

そしてグランプリは、2-C「OMAMORI SPOT」が受賞した。梶氏は「同じコンセプトを渋谷に持っていっても使える。渋谷からまた別の場所に持っていっても使える。そのイメージが一番具体的だった」とコメント。他の地域への展開までイメージできる点が決め手となった。

表彰式の最後には、CHARGESPOT公式アンバサダーを務めるインフルエンサーのかとゆりも登場。全員で記念撮影を行い、公開プレゼンテーションは終了した。

  • インフルエンサーのかとゆりも加わり、全員で記念撮影

    インフルエンサーのかとゆりも加わり、全員で記念撮影

グランプリ受賞チームと審査員長がプレゼンを振り返る

グランプリを受賞した「OMAMORI SPOT」を企画した2-Cチームのメンバーにも、プレゼンテーションを振り返ってもらった。

「グランプリをいただけて、とても嬉しいです! 今回は、安全啓発という少し硬いイメージのあるメッセージを、より楽しく、多くの外国人に伝えることにこだわりました。また将来性のある企画の提案をしたかったので、好評で『日本全国で展開する未来も見えた』と言っていただけたのは嬉しかったです。

準備期間中は、企画や伝え方、一つひとつの段階で迷いがありました。その迷いにしっかり向き合った結果、このような評価をいただけたと思いますし、今後なにかを作る時の自信につながっていくと思います」(2-Cチーム)

  • 「OMAMORI SPOT」でグランプリを受賞した2-Cチームの皆さんとインフルエンサーのかとゆり

    「OMAMORI SPOT」でグランプリを受賞した2-Cチームの皆さんとインフルエンサーのかとゆり

あわせて、審査員長を務めた梶氏からのメッセージを一部抜粋してお伝えしたい。

「プレゼンテーションを通じて印象的だったのは、学生の皆さんが『安全啓発』というテーマを、単なる注意喚起や情報伝達の課題としてではなく、人々の意識や行動、さらには日常の文化そのものを変える機会として捉えていたことです。

今回の提案には、デザインやファッションの力によって、安全への意識を『守らなければならないもの』から『自ら進んで選びたくなるもの』へと転換しようとする視点がありました。これは、従来の安全啓発の枠組みを広げる、非常に示唆に富んだアプローチだと感じています。

イノベーションとは、必ずしも新しい技術を生み出すことだけではありません。すでに存在する価値を、これまでにない視点で捉え直し、人々の行動や社会の当たり前を変えていくこともまた、重要なイノベーションです。今回の学生の皆さんの挑戦には、その原点があったと感じています。

企業と次世代が互いの視点を持ち寄り、社会課題を新たな価値へと転換していく。今回の取り組みが、そうした共創のひとつのモデルとなることを期待しています」(梶氏)