コンビニ、駅、商業施設――街のさまざまな場所で見かける充電レンタルサービス「CHARGESPOT(チャージスポット)」が、大きな転換点を迎えている。全国のコンビニを皮切りに、筐体に設置するPOPやステッカー、ポスターなどの販促物が全面的にリニューアルされているのだ。

このプロジェクトを主導したのは、入社2年目の室田恵海さん。デザインの企画からコンビニ店舗でのテスト、社内外との調整まで、リニューアルの全工程をリードした。試行錯誤を重ねながら「伝わるデザイン」を追求した、その狙いやリニューアルに至るまでの経緯を聞いた。

  • (INFORICH・マーケティング部 シニアアソシエイト 室田恵海さん)

    (INFORICH・マーケティング部 シニアアソシエイト 室田恵海さん)

リニューアルを担ったのは、POP未経験の担当者

――まずは室田さんの現在の業務内容から教えていただけますか。

主にアライアンスマーケティングを担当しており、コンビニさんと一緒にキャンペーンを行ったり、ほかの設置先企業様と新しい取り組みを考えたりしています。入社以来、この業務を担当してきましたが、今年の年明けごろから、販促物の企画管理も担当するようになり、オンラインとオフラインを掛け合わせた複合的なアライアンス施策に取り組んでいます。

  • 室田さんが主導してリニューアルした新POP。さまざまなデザイン案を作成したが、最終的に最もシンプルなこちらのパターンが採用された

    室田さんが主導してリニューアルした新POP。さまざまなデザイン案を作成したが、最終的に最もシンプルなこちらのパターンが採用された

――今回のリニューアルは具体的にいつ頃から、どのような体制で始まったのでしょう。

話が持ち上がったのは、今年の1月中旬ごろです。本格的にデザインや内容の検討を始めたのは、2月からでした。

以前のPOPなどの販促物は、制作から2~3年が経過し、日焼けしたり、傷んだりしているものが多くありました。その間にCHARGESPOTのブランドガイドラインも変わり、ロゴやブランドカラーも新しくなっていたんです。

そうした事情から、「そろそろリニューアルしたい」という声が社内で上がり、私が主導して進めることになりました。

――POPに関する業務を担うのは初めてだったそうですが……。

そうですね(笑)。なので、最初はデザイナーさんと二人三脚で、週に2回ほどミーティングを重ねながら内容を詰めました。終盤は、毎日のようにメッセージでやり取りしていましたね。

もともと販促物の知識があったわけではないので、本当に手探りでした。デザイナーさんに「これはどうしたらいいですか」と質問攻めにしながら、一緒に作っていったんです(笑)

新規ユーザー獲得数に8.3%の差! 大手コンビニチェーン100店舗でテスト

――今回のリニューアルにあたって、大規模なテストも行ったそうですね。

販促物は弊社の売上に直結する非常に重要な部分なので、1パターンで決めてしまうのではなく、しっかりテストをして効果が確認できたものにしようという流れがありました。そこで、6月から7月にかけて、大手コンビニチェーンの100店舗を対象にテストを実施したんです。

――どのような観点でテストをされたのですか?

「新規ユーザーをどれだけ獲得できるか」をメインの指標にしながら、レンタル数や売上など複数の観点で1カ月間検証しました。デザインは実際に採用となったシンプル案、コスパ訴求案をはじめ全4パターンを用意しました。

  • 「165円」という価格をメインに打ち出した「コスパ訴求案」

    「165円」という価格をメインに打ち出した「コスパ訴求案」

  • 視認性を高めるために青と黄色の配色にした「色味変更案」

    視認性を高めるために青と黄色の配色にした「色味変更案」

  • レンタルまでの手順を細かく入れた「使い方説明案」。事前の社員支持率No.1だったが……

    レンタルまでの手順を細かく入れた「使い方説明案」。事前の社員支持率No.1だったが……

――テストの結果、どのようなことがわかったのでしょう。

結論から言うと、一番シンプルな案(採用案)が、新規ユーザー数・レンタル数・売上のすべてで最も高い結果になりました。最も低かった案(使い方説明案)と比較すると、新規ユーザーの獲得数に8.3%、レンタル数に7.6%もの差が出ました。これには私たちもビックリしましたね。

――どういう点が意外だったんですか?

社内では、当初「使い方説明案」が人気だったんです。イベントなどで「使い方がわからない」という声をよく聞くので、情報をしっかり載せたほうが親切だし、より利用してもらえるんじゃないか、と考えていました。

でも、実際にテストしてみると、その案が一番低い結果になってしまって。結局、販促物において大事なのは、情報を詰め込むことではなく、「遠くから見て認知してもらうこと」や「伝えたいポイントを絞ること」なんだということが、数字を通してわかりました。結果がハッキリと出たおかげで、社内での意見もきれいにまとまりましたね。

急展開で決まった公式キャラクター「チャポポ」の採用とデザインのこだわり

――新デザインでは公式キャラクターの「チャポポ」が大きく描かれていますね。

実は、最初はチャポポを入れないデザインで進んでいました。街並みのイラストの上にバッテリーが並ぶ、「どこにでもある」ことを表すデザインが有力だったんです。でも、プロジェクトの途中で公式キャラクターとして「チャポポ」が発表されて。それを機に、CHARGESPOTの顔としてしっかり打ち出していこうと考え、チャポポを取り入れる方向に舵を切りました。

  • 旧デザイン(左)と新デザイン(右)

    旧デザイン(左)と新デザイン(右)

――チャポポを生かしつつ、シンプルに見せるために工夫した点は?

キャッチコピーの「どこでも返せる 充電レンタル」を最も目立たせたかったので、そこを邪魔しないように構成しました。旧デザインでは「スマホ充電レンタル」というコピーを使っていたのですが、要素をさらに減らすため、「スマホ」という言葉も削りました。

その代わりに、チャポポのイラストとスマホのイラストを重ねることで、「スマホの充電なんだ」と直感的に伝わるようにしています。チャポポの尻尾と「充電レンタル」の文字が繋がり、充電されているように見えるのも、デザイナーさんのこだわりですね。

――ブランドカラーである「青」も絶妙な色味で綺麗ですね。

ありがとうございます! 「チャージスポットブルー」という色は、画面上では綺麗でも、実際に印刷物になると発色が難しく、安定させるのが難しい色なんです。最初に上がってきたサンプルは深みがありすぎて鮮やかさが足りなくて困りました。業者さんと何度も調整し、緑に寄せたり明るさを変えたりと、何パターンも試して仕上げました。

「室田が3人いる」と言われるほどの奮闘

――デザイン以外にも、制作面での苦労があったのではないですか。

ありましたね。例えば、筐体の上に付けるPOPの「フック」の仕様です。以前はPOPの裏面にはめ込むタイプを使っていましたが、コストが高く、キャンペーンのたびに付け替えるのも大変でした。

今回は、コストを抑えながら見栄えもよく、店舗側の負担も少ない形状を選ぶため、業者さんに何度も相談しました。サイズ感や耐久性も最初は分からなかったので、専門用語を調べながら実用性を追求するのは、かなり大変でしたね。

――上司の方からは「室田が3人いる」と言われるほど、多くのタスクを並行してこなしていたそうですね。

確かに、やることは多かったかもしれません。でも、販促物に関する知識がゼロの状態から用語を覚え、デザイナーさんや業者さんと対等に話せるようになったのは、自分でも成長を感じるところです。何より、ゼロから作ってきたものが形になり、オフィスに現物が届いた瞬間は本当に嬉しかったですし、楽しかったですね。今は、納得のいくものに仕上がったと思っています。

コンビニ店舗を皮切りに、CHARGESPOTの「新しい顔」へ

――現在はコンビニから順次設置が進んでいるとのことですが、今後の展開を教えてください。

まずは大手コンビニチェーンからスタートし、その後、駅やカラオケ店など、全国の設置先に順次展開していきます。年内をめどに主要な設置先のリニューアルを完了する見込みで、現在、配送や手配を進めているところです。

――POPだけでなく、ポスターやステッカーも一式リニューアルするんですよね。

そうですね。筐体のPOPや横に付いているマニュアル、価格表示のステッカー、A4・A3サイズのポスター、入口に貼るステッカーなどを一式リニューアルしています。マニュアルは利用手順を以前より細かく示し、英語も併記することで、訪日旅行者の方にも迷わず使っていただけるよう工夫しました。

――最後に、利用者の方へメッセージをお願いします。

チャポポがお披露目される大きな機会ですので、まずはこの可愛さを見ていただけたら嬉しいです(笑)。そして、リニューアルしたPOPが充電に困っている人たちの目印となり、一人でも多くの方の助けになればいいなと思います。