スティーヴ・ハリスが語る、好きな音楽を貫くということ

アイアン・メイデン(IRON MAIDEN)が、結成50周年を祝う「RUN FOR YOUR LIVES WORLD TOUR 2026」で日本へ帰ってくる。初期のアルバム9作にフォーカスした特別なセットリストと壮大なステージを携え、2年間に及ぶツアーの最終地に選んだのは日本だった。1980年にアルバムデビューを果たし、今日のヘヴィメタルの礎を築いた彼らは、何故50年もの間、走り続けることができたのか。ベーシストのスティーヴ・ハリスに話を聞いた。

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メイデンの音楽は、こうして生まれた

ー今回の「RUN FOR YOUR LIVES WORLD TOUR 2026」は、日本が最終公演になりますよね。最後を日本にしたのは、何か理由があるのですか?

スティーヴ みんな知ってると思うけど、僕は日本には何度も何度も行ってて、本当に大好きなんだ。いつも日本に行くのを楽しみにしてるから、ツアーをそこで締めくくるのは、僕にとっては大きな意味がある。それに、友達や家族もみんな日本が大好きだから、一緒に日本に行くつもりなんだ。

ー1981年の初来日「Killer World Tour」のことは覚えていますか? 

スティーヴ もちろん。日本は最初からスゴく特別な場所だった。最初のアルバムで初めてゴールドディスクをもらったのも日本だからね。日本はどこの場所とも全く違って見えたし、特別なものがたくさんある。面白いのは、初めて日本に行った時、観客のたぶん50%近くは女性だったということなんだ。当時は他のどの国でも、僕たちの観客は圧倒的に男性が多かった。でも、日本には女性客がたくさんいたから、叫び声も大きかったと思うんだ。もちろん、2~3年後には状況が変わったし、今では日本も観客のほとんどが男性だ。当時の女の子たちは成長して、別のものに興味が移っていったんじゃないかな(笑)。

ー「RUN FOR YOUR LIVES WORLD TOUR」では、1980年の1stアルバムから、1992年の9thアルバム『Fear of the Dark』まで、最初の9枚のアルバムの収録曲でセットリストを組んでいますよね。これにはどのような背景があったのですか?

スティーヴ キャリアの前半部分をやろうっていうのが、基本的な考え方で。それが最初からのプランだった。ある人たちにとっては最高のセットリストだと思うけど、別の人たちにとっては、もっといろんな曲を聴きたいと思うかもしれない。でも、全員を満足させることなんてできないからね。

ーセットリストの曲を選ぶのは大変でした?

スティーヴ いや、そんなに大変じゃなかったよ。最近では、最終的な決定はブルース(ボーカルのブルース・ディッキンソン)に委ねることが多いからね。僕とブルースでセットリストを決めて、時々ロッド(マネージャーのロッド・スモールウッド)も加わる感じかな。でも、最終的にはブルースが歌いやすいと思う曲を選んでるよ。

ーセットリストを見ると、長年演奏してこなかった曲がたくさんありますよね。一番驚いたのは、「Infinite Dreams」ですが、1988年のツアー以来の演奏になりますよね。

スティーヴ あれはブルースがやりたいって言ったんだ。正直言うと、僕は「The Evil That Men Do」をやりたかった。あの曲を演奏するのは大好きだから。

ー「Killers」も、1999年以来の演奏になりますよね。そういう長年演奏してこなかった昔の曲を久しぶりに演奏すると、昔を思い出したり、何か特別な感情を感じたりとかはしませんか?

スティーヴ 感傷的になるっていう感じではないかな。ただ、スゴく強いエネルギーを感じるんだ。ああいう曲には、演奏すると確実にエネルギーがあるから。それに、僕たちが本当にたくさんいい曲を作ってきたことの証明にもなってると思う。

ーアイアン・メイデンが1stアルバムで登場した1980年は、すでにパンクロック、ポストパンクの時代で、ハードロックの時代は終わったなどとも言われていました。そこに突然現れたアイアン・メイデンは、パンクロックに対する反撃みたいな感じで、ゲームチェンジャー的な存在になりました。1stアルバムを出すまでの何年間、アイデアも野心もいろいろ持っていたと思います。それをどのように形にして、バンドとして確立していったのですか?

スティーヴ 1stアルバムは基本的に、その前の4~5年くらいの間ずっと演奏してきた曲を集めたものだった。だから、かなり長い時間をかけて出来たものだ。2ndアルバムでさえ、完全に新しく書いた曲は3曲くらいしかなかった。だから、最初の2枚のアルバムは、かなり長い間セットリストに入れて演奏してきた曲になるんだ。あとは、それをちゃんといい形でレコーディングすることが重要だった。1stアルバムは、正直あまりいい録音じゃなかったと思う。それでも、曲自体は強力だった。でも、2ndアルバムは、マーティン・バーチと一緒に制作したから、もっとプロフェッショナルなレコーディングになったと思う。

・1sアルバム『Iron Maiden』

・2ndアルバム『Killers』

ーソングライターとして、すでに「このバンドはこういうサウンドになるべきだ」というイメージはありました?

スティーヴ いや、自然に進化していったものだね。そこが大事なところだ。というのも、僕たちは早い段階で発見されたわけじゃなかったから。だから、アルバムを作る前に何年もかけて、いろんなクラブやパブとかで演奏してきた。実際にアルバムを作る頃には、もう完全にレコーディングする準備ができてたんだ。次のステップへ進める準備ができてたということなんだ。

ー新しいスタイルのヘヴィ・ミュージックを生み出すことについては、どのように考えていましたか?

スティーヴ 僕はずっと、若くてアグレッシブなバンドでやりたかった。そこにたくさんのメロディを入れて、ちょっとプログレの要素も加えたかった。そして何よりも、僕はエネルギーが好きだった。でも、パンクにはあまりハマらなかったし、全然興味がなかった。そもそも、僕たちのライブの仕事を奪っていったから、全然好きじゃなかった。みんながパンクに興味を持って、それ以外の音楽には目を向けてなかったんだ。でも、僕たちには、かなり早い段階からファンがついてくれた。演奏してたのはほとんどが自分たちの曲で、ああいうものを見たことがなかった人が多かった。それで、僕たちを追いかけてパブからパブへとついてくるような、本当にコアな連中が出てきた。ライブ自体は数えるほどしかなかったけど、僕たちがライブをやると、そこに来てくれた人たちがすぐにファンになってくれたんだ。

ーそれに、長いキャリアの中で、基本的なスタイルを変えることもなかったですよね。80年代や90年代に、スラッシュ、ヘアメタル、グランジが出てきた時も、そこに迎合することはなかった。自分たちのスタイルに対するアプローチはどういうものでしたか?

スティーヴ 僕たちはただ、自分たちが好きなものをやってきただけだ。自分たちが感じたものをやる。自分たちが好きなものを演奏する。だから正直言って、そんなに難しいことじゃないんだよね。自分たちが「これが正しい」と感じることをやる、それだけなんだよ。それに僕はいつも、どんなバンドにとっても、生命線になるのは曲だって言ってきた。僕たちの曲はずっとクオリティが高いものだったからね。

ー今回のツアーのステージ・デザインも気になるのですが。現在のテクノロジーを使って、アイアン・メイデンの世界観を、あらゆる要素を盛り込みながら、巨大なスクリーンで表現していますよね。

スティーヴ 長年ずっとステージ・ドレープやバックドロップを使ってきたし、それはずっと続けていくものだと思ってた。でも、「The Future Past Tour」の時に、ステージ・ドレープに加えて、両サイドに小さなスクリーンをいくつか設置してみたんだ。その時に、「これが進むべき方向なんじゃないか」って思ってね。スクリーンなら、映像を動かしたりもできるし、とにかくいろいろできることが増える。だから、次のステップに進むことにしたんだ。

ーでも、エディのリアルな巨大マスコットは、ステージに登場するんですよね。

スティーヴ もちろん。スクリーンなら何でもできるし、スゴいものを見せられるけど、実物のエディはまた別ものなんだ。

ー「Killers」を演奏する時、エディがどういう形で登場するのか気になりますね。

スティーヴ それは見てのお楽しみだね。説明しない方がいいと思う(笑)。

ーエディというキャラクターもそうですが、あの素晴らしいアートワークを生み出したことが、アイアン・メイデンの素晴らしいところの一つだと思うんです。しかも、それを最初からやっていましたよね。どういうアイデアから始まったのですか?

スティーヴ 僕たちがパブでライブをやってた頃は、歌舞伎の仮面みたいなものを使ってたんだ。口から血が出てきたり、目が光ったり、煙が出てきたり、そういう仕掛けがあった。それを「Eddie the Head」って呼んでたんだけど、僕たちはイースト・ロンドン出身だから、「H」の音を発音しない。だから「エディ・ジ・エッド」って呼んでて、それがエディになったんだ。その後、ロッドがデレク・リッグスのアートワークを見つけてきて、「これだ。これが俺たちのエディだ」ってなったんだ。それに、このエディをバンドの一部として見せるんじゃなくて、別の存在にしたかった。だから、アルバム・ジャケットにエディがいるのはスゴくいいアイデアだった。僕たち自身が載るのは、裏ジャケットとかインナースリーブでかまわなかった。だって、エディの方が僕たちよりずっと見た目が良かったからね(笑)。

ーエディがいろんなキャラクターを演じているのも面白いですよね。『Piece of Mind』では精神病院にいるエディだったり、『Powerslave』では古代エジプトのファラオになったり。『Senjutsu』では、日本のサムライになりました。

スティーヴ まさにそこが重要なんだ。結局、全部曲から自然に生まれてくるものだからね。僕たちは音楽とちゃんと結びつくものにしたいと思ってる。歌詞や曲のテーマともちゃんと関連していて、ただそこにあるだけっていうものにはしたくないんだ。『Senjutsu』では、日本をテーマにしたかった。そもそもサムライってスゴく力強い存在だから、エディがサムライになると、さらにパワフルになるんだよね。

50年を振り返って、後悔はない

ーもし、50年前の若い自分に何か言うとしたら、何を言いたいですか?

スティーヴ 正直言って、何も変えたいとは思わないね。すべての出来事が今の自分につながってるから。当時の決断も、何十年もの間にした決断も、別に後悔してないんだ。だから、何かを言うとしたら……ただ、「楽しんでこい」って言うだけかな。実際、僕も楽しんできたわけだから。

ー答えにくい質問かもしれませんが、今までに「もう辞めよう」って思ったことはありますか?

スティーヴ 1時間だけあるよ。ブルースが脱退した時だ。その時は、僕自身も個人的な問題をいろいろ抱えてた。でも、1時間、もしかしたら2時間くらいかな。「いや、ダメだ。こんなの絶対にやめられない」って思ったんだ。だから、諦めたことは一度もないよ。

ー50年という長い活動の中で、目標や野心は変わりました?

スティーヴ そうだね。僕たちはずっと、いろいろ違うことをやろうとしてきたんだと思う。昔のものと新しいものを組み合わせたり、その時々でいろんなものをミックスしたり、とにかく変化をつけてきた。それが、僕たち自身にとっても、観客にとっても、常に新鮮なものにしてくれてたんだ。

ーアイアン・メイデンはゲームチェンジャーだったと思うし、ヘヴィメタルとは何かという基本を作ってきたと思うんです。今振り返ってみて、音楽全般については、どう見ていますか?

スティーヴ 僕は本当に恵まれてたと思うよ。70年代の音楽を聴いて育ったからね。素晴らしいロック、素晴らしいプログレもあったし、ポップスの中にも素晴らしいものがあった。何もかもが素晴らしかったし、どこを見ても素晴らしいソングライティングがあった。ビートルズからピンク・フロイド、ジェネシス、ウィッシュボーン・アッシュ、ザ・フー、ジェスロ・タルまで、とにかく本当にいろんなバンドやアーティストがいた。そこから受ける影響が本当にたくさんあったし、いろんな音楽を聴くことができた。あの時代の音楽の豊かさ、素晴らしさには、本当にスゴいものがあったよ。だから、僕自身、本当に幸運だったと思うんだ。

RUN FOR YOUR LIVES WORLD TOUR 2026

11月24日(火)神奈川・Kアリーナ横浜

11月25日(水)神奈川・Kアリーナ横浜

両公演とも開場17:30/開演19:00

料金:GOLD指定席・バルコニー指定席 各30,000円/SS指定席20,000円/S指定席17,000円/A指定席15,000円(税込)

問い合わせ:クリエイティブマン 03-3499-6669

https://www.creativeman.co.jp/artist/2026/11ironmaiden/