LINE Digital Frontierは、日本発オリジナルコンテンツの開発・投資拡大のため、自社での制作の強化をはじめ、パートナー企業との協業や個人クリエイターの支援などを対象に、今後3年間で総額100億円規模の資金投入を実施することを決定。日本市場での成長戦略と今後の展望を説明する「コンテンツ投資に関する発表会」を開催した。
日本のコンテンツをグローバルに展開
発表会ではまず、WEBTOON EntertainmentのPresidentであり、LINE Digital Frontierの代表取締役である金鎔秀(キム・ヨンス)氏が登壇。「コンテンツプラットフォームとして重要なのは、多くのコンテンツを開発し、ユーザーに届けることである」という金氏は、多くの才能あるクリエイターが集まる日本のコンテンツをグローバルに展開していくために、LINE Digital Frontierがどのような役割を果たしていくかについて説明する。
本題に入る前に、金氏は、ニューヨークで開催された世界最大級のコミックの祭典である「ニューヨーク・コミコン」の様子を紹介。例年、ブースを出展するWEBTOON Entertainmentだが、今年は特徴的な取り組みとして、「WEBTOON」ブースのほかに、同社が開発し、まもなくのローンチが予定されている「Marvel Comics」ブースという、2つのブース出展が行われた。
「WEBTOON」ブースでは、同社のオリジナルIPである『FOG LAND(フォグランド)』に力を入れ、プロのコスプレイヤーやインフルエンサーも多数参加。金氏自身も、人生初となるコスプレに挑戦して、ブースを盛り上げたという。一方の「Marvel Comics」ブースでは、WEBTOON EntertainmentがMarvelと共同で開発し、11月にローンチを予定している新たなデジタルコミックサービスを紹介。Marvelを中心に、Star Warsや20th Century Studiosなどの3万5,000点以上のコミックを扱うサービスで、会場では実際のアプリを試せるデモセッションも実施された。
そのほか同社では、LINEマンガなどで展開されている多くのWEBTOON作品や原作をもとに、アニメーションを制作するプロジェクトを継続的に進行しているが、HAYATE、Crunchyrollと連携し、15作を目途とするWEBTOON作品のアニメ化に向け、企画・開発段階から取り組んでいくことを発表。その中の3作品については、先行トレーラーの公開なども行われたという。
続いて金氏は、LINE Digital Frontierのグローバル本社にあたるWEBTOON Entertainmentについての概要を紹介。同社のミッションは、「ストーリー、つまりストーリーテリング・エンターテインメントを通じて、世界中の人々をより楽しませること」であり、そのミッションを実現するためのビジョンとして、「私たちは、物語を持つすべてのクリエイター、すべての人が、その物語を簡単に共有でき、さらに多くのユーザーへ簡単に届けられるようにすること」を目指しており、「こうしたミッションとビジョンのもと、マンガ、コミック、WEBTOONのすべてを扱うグローバルなコンテンツプラットフォームになること」が同社の目標となっている。
そして、コンテンツプラットフォームにとって最も重要なのは「多様性」であり、その多様性は、ジャンルだけでなく、作品が生まれる地域なども含まれることから、特に「ローカルコンテンツ」を重視。「一つの地域で生まれたコンテンツだけで、世界中すべてのユーザーを感動させることはできない」との考えを示し、「各地域にいる数多くの才能あるクリエイターとともにコンテンツを作り、それをグローバルに流通させることが私たちのミッション」であるとあらためて宣言する。
そして、「世界でも特に多くの優れたコンテンツとクリエイターが存在する国が日本」であるという金氏。「日本のより多くのクリエイターと仕事をし、個人作家、WEBTOONスタジオ、出版社など、さまざまな方々と協力しながら、優れた作品を日本国内だけでなく、どのようにグローバルへ拡大していけるのかを一緒に考えることが、私たちの重要な役割」であると、同社の方向性を示した。
また、同社の役割は、「優れたクリエイターによる良質なコンテンツを、より多くのユーザーに、簡単かつ迅速に届ける」ことであり、「ユーザーが増えれば増えるほど、クリエイターに対するファンダムも拡大し、売上も増加する」ことから収益の重要性を示唆。さらに、自らを「単なるコンテンツ企業ではなく、ストーリーテリング・テクノロジー企業」と位置づけ、自身の持つテクノロジーを活用し、数多くの作品を届けるための、パーソナライゼーションにも取り組んでいくほか、クリエイターとそのエコシステムを守るため、違法コピーや海賊版サイトなどに対抗するための技術や施策にも取り組んでいくとした。
WEBTOON Entertainmentは現在、10言語、150カ国以上でサービスを提供しており、各国から集まった50万作品以上がプラットフォーム上で提供され、日々更新されている。同社が保有するWeb小説プラットフォーム「Wattpad」も含めると、参加クリエイター数は2,700万人、月間のアクティブユーザー数も1億5,500万人に達しており、年間売上高は14億ドル(約2,000億円)規模となっている。
現在同社では、地域ごとに特化したアプリを運営。日本では「LINEマンガ」「ebookjapan」のほか、個人クリエイターを集め、その成長を支援する「LINEマンガ インディーズ」を展開する一方、グローバルでは「WEBTOON」「CANVAS」「Wattpad」などを運営している。
「これらすべてに共通する考え方は、より多くのクリエイターに、より多くの作品発表の場と機会を提供するということ」という金氏は、あらためて「世界中の優れたコンテンツをユーザーに届けていくこと」という同社の目的を強調。そのためのグローバルなプラットフォームとユーザーベースをすでに所有している点が、同社の大きな強みであるとした。
日本のオリジナルコンテンツ強化に3年間で100億円を投資
続いて登壇したLINE Digital Frontier 代表取締役社長の森啓氏は、「JAPAN to GLOBAL」をテーマに、日本におけるコンテンツ投資戦略を説明。日本のコンテンツ開発にこれまでにない大規模な投資を行い、そこから生まれたコンテンツやクリエイターとともに、グローバルに進出していくための施策を紹介した。
「世界最大のマンガ市場」であり、「世界でもっとも多くのクリエイターが存在する市場」である一方、「マンガという文化に長く触れてきた、目の肥えたユーザーがいる」日本市場は、「WEBTOON Entertainmentにとってもっとも重要な市場」であると評価。同社は10言語、150カ国以上でWEBTOON・マンガのプラットフォームを運営しており、これまでもグローバルとの連携が行われてきたが、「今年から来年にかけて、この連携をこれまで以上に強化してまいります」と宣言する。
「日本には優れたコンテンツがあり、我々はグローバルプラットフォームを持っている会社」であることから、LINE Digital Frontierが日本のコンテンツと協業することで、より大きな成長、市場の拡大が実現できるという森氏は、その目玉施策のひとつとして「Global Drop」と呼ばれる、新作コンテンツを世界中の言語に翻訳して世界同時配信を行う取り組みを紹介する。
ドラマやアニメ、映画の世界では当たり前のように実現されている世界同時公開だが、マンガの世界では、翻訳の時間やコスト、流通の経路などさまざまな問題から、世界同時公開・販売の実現は非常に困難だった。そこで、世界10言語、150カ国以上でサービスを展開する同社のプラットフォームで世界同時配信を推進。すでにプロジェクトの第1弾として、韓国発の『勇者の抒情歌(バラード)』が今年9月に世界同時配信されており、今後は日本で制作された作品も順次対象となる。世界同時配信は、「海外配信において課題とされる海賊版対策にも非常に有効な手段」との考えを示し、「Global Drop」を通じて、今後数多くの日本のコンテンツを世界中の国と地域に配信していくとした。
そして、グローバルとの連携強化施策として実施されるのが「CANVAS」との連携。LINEマンガではこれまで、個人クリエイターの投稿プラットフォームとして「LINEマンガ インディーズ」を提供してきたが、今後は同社がグローバルで展開している投稿プラットフォーム「CANVAS」との連携を深めていくとした。「CANVAS」は現在世界7言語で展開されているが、これに日本語が加わり、8言語での展開となる。さらに、ここで投稿された作品は同社のプラットフォームサービスを通じてグローバルに配信される。
なお、クリエイターが希望した作品については、AI翻訳を利用して、さまざまな言語に展開。「日本の個人創作者が日本にいながら、自身の描いた作品を世界中の読者に読んでもらえる場」を提供するとともに、さまざまな言語で投稿される読者コメントも、Xのようにそれぞれの言語に翻訳することで、世界中の読者との交流を実現する。「CANVAS」の日本展開は2027年中の導入が予定されている。
そして、グローバルとの連携強化に加えて、日本のコンテンツに対し、「これまでにない大規模な投資を行う」という森氏はあらためて、「LINE Digital Frontierは今後3年間で100億円を投資し、日本のオリジナルコンテンツを強化してまいります」と力強く宣言する。なお、日本のコンテンツへの投資は、「同社によるオリジナルコンテンツ制作への投資」「日本の制作スタジオや出版社との共同制作による投資」「個人クリエイターへの投資」といった3分野にわたり、「LINE Digital Frontierでは自社制作する作品を強化するとともに、パートナーとの協業をより一層強化する」という方向性を示し、漫画IPパブリッシャー・ナンバーナインへの追加出資が決定したことも報告された。なお、ナンバーナインの『暗殺勇者の天星航路』は「Global Drop」での配信が予定されている。
そして、「個人クリエイターへの支援」については、金氏と同様、「プラットフォームにとって作品の多様性は非常に重要」であるという森氏は、「CANVAS」を通じてグローバル規模のコンテストを実施し、個人クリエイターに対しても大きな支援を行っていくことを約束。「まだ見ぬ才能やコンテンツが誕生する」ことに大きな期待を寄せた。




