横浜のTHE MOVEUM YOKOHAMAで開催される「印象派モネと浮世絵」の鑑賞ガイド。内覧会での体験と、約10回鑑賞した担当者への取材をもとに、おすすめの鑑賞順や混雑時に立ち寄りたいスポットを紹介する。
●この記事でわかること:
- おすすめの鑑賞順: 先に「浮世絵ギャラリー」で構図や視点の工夫を知り、その後「THE MOVEUM THEATER」へ。
- 担当者おすすめの鑑賞位置: 出入口付近は、複数の壁面に映る絵を見渡せるおすすめスポット。
- 混雑時に立ち寄りたい別空間: 邸宅を再現した「モネのダイニングルーム」や、別展示室で上映される「白夜」などの見どころ。
みなとみらい線・元町・中華街駅で下車し、山下公園へ向かうと、近未来的なモビリティが迎えてくれる。乗り込むと、横浜の穏やかな海を眺めながら一直線に進み、アートの世界へ。
10月24日、THE MOVEUM YOKOHAMA by TOYOTA GROUPで「印象派モネと浮世絵[モネを魅了した、日本の美]」が開幕する。モネの絵画と浮世絵の世界に浸れるこの展覧会を、一足先に内覧会で体験。会場で見つけた見逃せないポイントから、おすすめの鑑賞方法、混雑時に立ち寄りたい穴場まで紹介する。
「印象派モネと浮世絵」の楽しみ方
おすすめの鑑賞順
まずおすすめしたいのは、「THE MOVEUM THEATER」を見る前に、入口を通って右に見える「浮世絵ギャラリー」を見ておくことだ。
浮世絵について、聞いたことはあるけれど具体的になにがそんなにすごいのか、わからないという人もいるのではないだろうか。
この展示では、"浮世絵のすごさ"を丁寧に説明してくれる。キーワードは「世界をそのまま見せない」ということ。詳しくは展示を見ていただきたいが、浮世絵のなかに、見せたいものを強調するため、あえて人物などの対象に寄ったり、視点を対象に集めさせる仕掛けがあったり、想像の景色を入れてみたりといった工夫が施されていることを知ることができる。
ここで、今回の展示の1つのテーマに「視点」があることに気づかされるはず。
「THE MOVEUM THEATER」で没入できるモネの世界
そのうえで、メインコンテンツ「THE MOVEUM THEATER」へ。ここでは、約1800㎡の巨大空間を舞台に、絵画・建築・音楽・映像・音響を融合させたイマーシブアートを楽しめる。最近よく開催される"アートに没入できる"アレだ。
時系列に沿った第1章から第6章の構成で、「プロローグ」と「エピローグ」を含め、約50分の上映となる。スケジュールは、毎時00分よりスタートとなる。
「プロローグ 日の出」では、当時の様子だけでなく、現代や未来を思わせるような近現代的な映像と音楽が流れる。力強い映像と音楽が、上映の幕開けを教えてくれた。第1章は「印象派と近代都市パリ」、第2章は「パリから海へ:光をもとめて」、第3章は「自然のなかへ」、第4章は「ジャポニズム」、第5章は「浮世絵:江戸の美と新たな視覚表現」、第6章は「睡蓮:移ろう光、はてしない風景」。最後に「エピローグ 日没、光と影」で、夕暮れの光の中で静かに幕を閉じる。
今回のような空間全体に映像が広がる没入型の展示の醍醐味は、何も考えずにその世界に入り込むことなのは承知している。そのうえで、より没入するために、注目してほしい点を2つ挙げさせてもらいたい。
1つ目は、床だ。この手の展示をよく見る人はご存じだと思うが、実は床の移り変わりが面白い。鉄道を代表として近代化していく街の中で、線路の上に乗れたり、睡蓮の池の水面の揺らぎの上に乗れたりと、非日常の体験ができるのだ。
また、2つ目は、音楽や人の声、自然の音だ。視覚情報なしにも「第〇章」と当てられるくらい、音にもこだわりを感じる。ガヤガヤとした商人たちの声や笛や弦楽器の音、障子の閉まる音から日本を感じられる。しっとりと優雅な音楽や電車の音からは、パリを中心としたフランスの景色が想起される。
映像全体を通して、「華やかに、活気に満ちて」描かれているように感じた。もちろん、モネの生涯は、言うまでもなく順風満帆とはいかなかったはず。近代化の中で自然への悪影響もあっただろうし、1人目の妻カミーユや息子の死や、第一次世界大戦も経験している。
しかし、今回の映像にはそういった影の部分ではなく、どこかモネの中にある切なさを残しつつも、文化の発展という華やかさをあえてつなぎ合わせて1つの作品としている印象だ。観ていると心が癒され、じんわりと感動が広がる。
混雑時の抜け道!? 賢く回る方法
没後100年を記念して、日本でもさまざまな場所で展覧会が開かれているモネ。しかし、首都圏で開催されるモネの展覧会は毎回早々にチケットが売り切れたり、行列が絶えなかったりといったイメージがある。今回も特に土日は混雑が予想される。
そこで今回、本展を「10回ぐらい鑑賞した」と話すトヨタ・コニック・プロの三島俊介氏に賢く回る方法を聞いてみた。
「出入口付近」が穴場
まず教えてもらったのは、映像を鑑賞する際のおすすめの立ち位置だ。
「10回ぐらい見ているんですけど、入ってすぐの場所から見ると、いろいろな壁面に映っている絵がよく見えるんですよ。皆さんメインのウォールを見がちなんですけど、入口付近から見た風景も結構インパクトがあるので、僕的には推しのポイントです」
と話してくれた。
確かに、筆者自身も鑑賞してみると、出口付近が一番きれいに観ることができたように感じた。視界に入る壁の面が多い方がいろいろな映像を一度に観ることができ、没入できる気がした。ぜひ意外と穴場な「出入口付近」を狙ってみてほしい。
見逃しやすいが、細部にこだわりが......「モネのダイニングルーム」
どうしても人が多すぎるときや、一度映像をお休みしたいときは、後方の「モネのダイニングルーム ~モネを魅了した浮世絵空間~」に行ってみてほしい。というより、ここはかなり見逃しやすい位置にあるのだが、実はこだわりが詰まった場所なので、どこかのタイミングで絶対に観に行ってほしい。
モネが、長い時間を過ごしたジヴェルニーの邸宅を再現した空間だ。ここは、1人目の妻・カミーユの死を乗り越え、再婚したアリス・オシュデとその子供たちと晩年まで過ごした場所。
愛する人の死を乗り越え、日本の文化に支えられながら、芸術家であり続けた彼の「心のよりどころ」と「芸術家であり続ける覚悟」を感じられる空間だ。
三島氏にこだわりポイントを尋ねると、「実際に部屋を作るためにフランスまで行きました。さらに、食器も、どこかから適当に持ってきたものではなくて、実際にフランスの当時のお皿を集めました」とのこと。
食器や陶器からも、どこかジャポニズムやシノワズリ文化の面影を感じた。さらに、窓からは日本の貴族の庭園を連想させる睡蓮の池が眺められる。
また、壁紙の色についても「すごいどぎつい色だったと思うんですけど、現地に色見本を何種類か持っていって、実際に合わせて近い色で再現しています」と三島氏。
混雑の中の"ひとやすみ"の場としてぜひ活用してみてはいかがだろうか。
「LISTEN. ONE MOMENT WHITE NIGHT 白夜」「トヨタ夢の車アートコンテスト」の不思議な体験
さらに、同会場では「印象派モネと浮世絵」だけでなく、俳優・山口智子氏がプロデューサーを務めるプロジェクト「LISTEN. ONE MOMENT WHITE NIGHT 白夜」(約20分)の上映も別の展示室で行われている。ここでは、イヌイットやアイスランド、スウェーデンなどの伝統音楽を肌で感じられる映像が上映される。
これらは、モネのコンテンツとは反対に、個人的には事前情報なしで観てほしい。遠く離れた国で生きる人々のエネルギーに、「癒し」「力強さ」「神秘性」「官能性」「芸術性」「気恥ずかしさ」など、自分の中で不思議な感情の動きを感じられる。
また、続けて上映される「トヨタ夢の車アートコンテスト」(約10分)は、子供たちの純粋で想像力豊かな絵の世界に、思わず没入してしまう。
混雑に疲れたら、この不思議で浄化されるような体験をぜひ味わってほしい。
山下公園のさらに奥へ。近未来的でありながら、自然の美しさも感じられるアートの世界に、足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

![「印象派モネと浮世絵[モネを魅了した、日本の美]」開幕](images/002.jpg)













