AIやデータセンターの普及で電力需要が増すなか、重要性を増しているのが「熱対策」だ。コスモエネルギーホールディングスの説明会で、スーパーコンピュータ「富岳」も採用した放熱材や、サーバーの冷却電力を大幅に減らせる「液浸冷却」について聞いた。
Vision 2035で注力する「NeXTグロース」とは
コスモエネルギーグループは2026年6月に発表した長期ビジョン「Vision 2035」で、「石油/次世代エネルギー」「資源開発」「電力サプライチェーン」の3つを今後の事業の柱に据えた。さらに、企業価値向上に向けて掲げているのが、技術力をいかした「NeXTグロース」への挑戦だ。
NeXTグロースとは、AI・半導体・データセンターなど、電力需要の増加をけん引する市場に関連して成長が見込まれる事業の総称。「石油/次世代エネルギー」と「資源開発」にまたがる領域に位置付けられており、熱対策事業はまさにこの領域に当てはまる。
自動車部品など身近なところにも使われるコスモの放熱材
昨今のAIの普及やデータセンターの増加、半導体需要の拡大、クルマの電動化などは、社会全体の電力需要を押し上げる要因となっている。同時に、サーバーや半導体などの高性能化に伴って発熱量が上昇するなど、熱対策の重要性も増す一方だ。
コスモ石油ルブリカンツ 機能材事業部長の溝口隆さんは、「今後は、いかに効率的に冷却できるかがより重要になる」と説明する。
現在、熱対策には、発熱体と放熱部品の隙間を埋めて接触熱抵抗を低減し、発熱体の冷却を促進する放熱材(TIM)が用いられている。もともと潤滑油を手がけ、グリースのコア技術を有していたコスモ石油ルブリカンツは、約25年前に放熱グリースの開発に着手。その後、2003年に非硬化型の放熱ペースト「コスモサーマルグリース」を、2021年に硬化型の放熱ペースト「コスモサーマルギャップフィラー」を商品化した。
この2つに共通する特徴が、シリコーンを使用していないところだ。シリコーンを含む放熱材は低分子シロキサンガスを発生することがあり、それが電子部品の接点に固形物を生成して接点障害を引き起こす可能性が問題視されていた。一方、コスモサーマルグリースとコスモサーマルギャップフィラーは、ベースとなる液体にシリコーンではなく石油系の油を使用しており、低分子シロキサンを含まないため、接点障害を引き起こす心配がないそうだ。
そんな「コスモサーマルグリース」と「コスモサーマルギャップフィラー」の違いとして溝口さんが挙げたのが、塗布後に硬化するかしないかだ。
この違いについて溝口さんは、性能というよりは用途によるところが大きいとした上で、「コスモサーマルギャップフィラーは、塗布後に少し温度を上げることで硬化する特性があります。そのため、自動車など振動があるものに装着する部品に使用する場合は、垂れ落ちたりズレたりする心配がないこちらが選ばれたりします。また、カスタマイズ性にも優れていて、『接着タイプ』『高熱伝導タイプ』『薄膜タイプ』『低硬度タイプ』など、要望に応じて調整することもできます」と説明した。
説明会場には、「放熱材なし」「放熱シート」「コスモサーマルグリース」「コスモサーマルギャップフィラー」の4種類の基板が用意され、それぞれの温度の違いをサーモグラフィーで確認することができた。
液体に直接浸して冷却する第3の熱対策
コスモ石油ルブリカンツでは、「コスモサーマルグリース」「コスモサーマルギャップフィラー」に続く第3の熱対策として、「液浸冷却」の実現を目指している。2026年1月には、データセンター向けの液浸冷却液「コスモサーマルフルード」をラインアップに加えた。
液浸冷却は、サーバーを専用液に浸すことで直接冷やす冷却方法で、高性能サーバーの発熱を最も効率的に冷却する方法として期待されている。
「現在、サーバーの冷却に用いられているのは、ほとんどが空冷です。サーバーを動かすために必要な電力を1とした時、冷やすために必要な電力は0.8と言われています。仮に液浸冷却が実現すれば、冷やすための電力は0.1を切るため、空冷と比べて大幅に削減することが可能になります」(溝口さん)
実用化されれば、国内に大規模なサーバーを設置できるようになったり、サーバーの設置数が増えることでAIがより使いやすい社会になったりといったメリットが想定されるこの技術。では、いつごろ実用化できるのか。溝口さんに尋ねると、「小規模な運用については、2028年中には実現したいと考えています。ただ、データセンターのような大規模運用となると、メンテナンス方法などまだいくつか課題が残るため、2030年以降になると思います。私たちもそれまでに専用液の性能をもっと向上できるよう、引き続き開発していきます」とのことだった。








