
今回の放送は、ゲストにシンガーソングライターであり、ボカロP「バルーン」としても活動する須田景凪(すだ・けいな)さんをお迎えし、須田さんが作詞・作曲した楽曲「シャルル」の魅力を徹底解剖しました。(※本記事はその前編)
(写真左から)YOSUKE、須田景凪さん、しらスタ
◆4年ぶりの再会と海外でも熱狂を集めるボカロ文化の広がり
しらスタ:この番組「しらスタのボイトレディオ」は、ボイストレーナーの私しらスタが、プロのボーカルテクニックの解説から、明日から試すこともできる歌い方のアドバイスまで、さまざまなボーカルにまつわるお話をお送りしていく、「聴くだけで歌が上手くなる」ボイトレのようなラジオ番組です。今週もどうぞよろしくお願いいたします!
YOSUKE:今週の放送は須田景凪さんです!
須田:よろしくお願いします。
しらスタ・YOSUKE:よろしくお願いします! いらっしゃいませ。
YOSUKE:お二人がお会いするのは、いつぶりでしょうか?
しらスタ:さっき話していたのですが、3年か4年ぶりくらいですよね。
須田:4年近くぶりですね。4年ほど前にテレビ番組でご一緒させていただいて以来という感じで。
しらスタ:オーディション番組ですね。須田さんが課題曲として「パメラ」という楽曲を提供された時に、私はボイストレーナーとして参加しておりました。
YOSUKE:過去には、おしら(しらスタ)さんがYouTube(しらスタ【歌唱力向上委員会】)で「シャルル」を取り上げさせていただいて。
しらスタ:取り上げさせていただきました。
須田:ありがとうございます! 4年も経っているのですね(笑)。時間の経過が恐ろしいですね(笑)。
YOSUKE:須田さんは、おしらさんがやっているYouTubeをご覧になったことはありますか?
須田:もちろんです! 自分の「シャルル」という楽曲を取り上げていただいたこともありますが、それ以前からずっと拝見させていただいていました。
しらスタ:以前お会いした時もそう言っていただいて、ありがとうございます!
須田:こちらこそです!
YOSUKE:今日は、おしらさんに須田さんの楽曲のソングコメンタリーをご本人の前でしていただきたいと思います。おしらさん、今日のソングコメンタリーはどんな感じになりそうでしょうか?
しらスタ:YouTubeでもやらせていただいた楽曲ですので、一味も二味も違ったコメンタリーをお届けしたいと思います!
須田:楽しみです!
しらスタ:ハードルが上がりますね(笑)。
YOSUKE:この後またYouTubeを見直してみても面白いかもしれませんね!
しらスタ:ここで1曲お送りしたいと思います。この後ソングコメンタリーする楽曲です。バルーンで「シャルル」のセルフカバーバージョンをお聴きください。
――楽曲オンエア:バルーン「シャルル -Self Cover-」
YOSUKE:改めて名曲ですね!
しらスタ:「THE FIRST TAKE」での(動画の解説もさせていただいているのですが、原曲の動画を取り上げたのは6年前で、私がまだふっくらしていた頃です(笑)。進化させた私を見せられるよう頑張ります!
YOSUKE:改めまして、須田さんのプロフィールをご紹介させていただきます。須田さんは2013年より「バルーン」名義でボカロPとしての活動をスタートされました。2017年からは自身の声で描いた楽曲を歌う「須田景凪」としての活動も開始。今年3月から開催されたツアーでは、自身初となる海外ワンマンライブを実施するなど、こだわりの詰まったサウンド、聴く人に絶妙な距離感で寄り添う歌詞とメロディが国内外で多くの人の支持を集めています。この番組でボカロPの方をゲストにお迎えするのは初となります!
しらスタ:初めてですね! たとえばアニメソング文化などは海外でどのように広がっているかイメージが湧きますが、ボカロカルチャーは海外だとどのような感じなのでしょうか?
須田:自分も正直ピンとは来ていないのですが、ソウル(韓国)や台北(台湾)などでも、アニメが好きという主軸の次に「ボーカロイドが好き」という方々がかなり多くいらっしゃいます。
YOSUKE:実は僕、インドネシアでも活動させてもらっているのですが、インドネシアの皆さんはボカロが本当に大好きです。アニメとボカロの人気が凄まじいですね。
須田:そうなのですね!
しらスタ:まさに日本が誇るべきカルチャーであり、「メイドインジャパン」の音楽ですよね。
YOSUKE:イラストや映像という絵的な部分とも結びついているのが、海外での人気にも繋がっているのだと身をもって感じています。
◆代表曲「シャルル」は「自分の人生を一番変えてくれた曲」
YOSUKE:それでは、早速本題のコーナーへ参りましょう!
しらスタ:「明日カラオケで歌いたくなる!しらスタのソングコメンタリー!!」
しらスタ・YOSUKE:イエーイ!!
しらスタ:ボイストレーナーとして、これまでさまざまなアーティストの歌い方やヒット曲をYouTubeで解説してきた私しらスタが、アーティストご本人様の前で曲の魅力や凄さを熱く語らせていただこうという企画です。本日は「シャルル」の魅力をたっぷりと語りたいと思います!
須田:ありがとうございます!
YOSUKE:「シャルル」は2017年から2019年の年代別カラオケランキング10代部門で、3年連続1位を獲得した大ヒットソングです。ミュージックビデオのトータル再生回数は1.6億回以上(※放送当時)を記録しています。作詞・作曲・編曲を自ら手掛け、バルーン名義でリリースされたのは2016年ですが、この曲は須田さんにとってどんな楽曲でしょうか?
須田:間違いなく自分の人生を一番変えてくれた曲ですね。当時、ボカロPとして活動していて、「もっと曲を聴いてほしいけれど、自分が作りたい曲を書いているのか、聴いてほしいから書いているのか」と混乱していた時期がありました。「シャルル」という楽曲は、一度そういった要素をすべて跳ね除けて「今自分が作りたいものをシンプルにアウトプットしたらどうなるか」というところから書いた楽曲です。それが結果として多くの方に聴いていただけているので、本当にありがたいことだと思います。
YOSUKE:今や知らない人はいないほどの有名曲ですが、本日は「シャルル」を冒頭から流していき、おしらさん的に「ここ注目して聴いてほしい」というポイントが来たら曲を止め、解説していただきます。ワンコーラスをじっくり解説していく形ですね。
しらスタ:私、ボイストレーナーとしてこの「シャルル」という楽曲のレッスンをかなりやらせていただいておりまして(笑)。生徒さんから課題曲として「この曲を歌いたい」と言われる機会が本当に多いんです! なので、これまでに培った知見をすべて集中させて解説できればと思っています!
須田:ありがとうございます!
YOSUKE:それでは準備はオッケーでしょうか?
しらスタ:オッケーです! それでは「シャルル」のソングコメンタリー、スタート!!
◆冒頭のエフェクトと「空っぽでいよう」に見る発声戦略
しらスタ:まず冒頭の部分から流していくのですが、一番頭の歌詞を良く聴いていただきながら注目してほしいポイントがあります。ボイスチェンジャーのようなエフェクトがかかった声から始まり、それが「ある場所」でふっと外れるのですね。そこに着目して聴いてみてください。
――音源再生:『さよならはあなたから言った~』
しらスタ:ストップ! ここで歌詞を読み上げさせていただきますと、「さよならはあなたから言った それなのに 頬を濡らしてしまうの そうやって昨日の事も消してしまうなら もういいよ 笑って」と続くのですが、「笑って」のフレーズだけエフェクトが外れているんです。
ここから私が読み取った解釈なのですが、エフェクトがかかっている部分は、実は「声に出していない心の声」なのでは?と自分の中で勝手にシチュエーションを設定しているのですが、相手から「さよなら」と言われたのに、なぜか相手が泣いている。「そんなに泣いてしまうくらいなら、もういいよ」と心の中で思い、最後の「笑って」という言葉だけを実際に口に出して相手に伝えた……というドラマのように聴こえるのですが、須田さん、いかがでしょうか(笑)?
須田:全楽曲において、解釈は聴いてくださる皆様にお任せするスタイルを取っているので(笑)、明確な答えはお伝えできないのですが、「なるほど」と思いながら非常に興味深く伺っていました(笑)。
しらスタ:ありがとうございます! 勝手な解釈をどんどんぶつけていきたいと思います(笑)。それでは続きへ参りましょう!
――音源再生:『花束を抱えて歩いた~』
しらスタ:皆さんお馴染みのAメロが始まりました。ボイトレ的な歌唱ポイントとして、次に続く「空っぽでいよう それでいつか」の「それでいつか」における須田さんの発声に注目していただきたいです。非常に特殊なテクニックが使われています!
――音源再生:『空っぽでいよう~』
しらスタ:「空っぽでいよう それでいつか」というフレーズは、音域としてはかなり低い位置にありますよね。低い音を歌う際の発声戦略として、通常は声を深くて太い響きに落としていくほうが楽なんです。高音は声を細く、低音は声を深くするほうが身体の構造上自然なのですが、須田さんは「それでいつか」の部分で声を深くするのではなく、逆に声をキュッと絞って細くしていくアプローチをとられています。これは非常に技術的に難しい発声なのですが、当時、声の選択はどのようにされていたのでしょうか?
須田:この歌声自体が10年前のものになるので、当時の自分が何を考えていたのかを思い返すのは少し難しい部分もあるのですが(笑)、当時「シャルル」を自宅で録音していた頃は、まだ自分自身がステージに立って歌うことを想定していませんでした。なので、1小節ずつ「空っぽでいよう」「それで」「いつか」と細かく区切りながら録音していたんです。
なので、この「いつか」という3文字を録っていた10年前の自分にとっては、声を細く表現する方が楽曲の解釈として一致していたんだと思います。
しらスタ:普段の話し声は低く深い鳴りをされていますよね。素直に歌うと深く太い声になりがちな音域なのですが、あえて絞るようなアプローチをされているのが非常に面白く、素晴らしいポイントだと感じました。10年経った現在、歌い方は変わりましたか?
須田:かなり変わりましたね。当時の歌い方を今そのまま再現しようとすると、普通に喉を痛めてしまいそうです(笑)。
しらスタ:音程についてもう1つ伺いたいポイントがあります。「空っぽでいよう それでいつか 深い青で満たしたのなら」というメロディですが、原曲やボーカロイド(flower)のバージョンと、セルフカバーバージョン、そしてライブで歌われる際で、音程の取り方に絶妙なニュアンスの違いがありますよね。あれはどのような意識で歌われているのでしょうか?
須田:当時のガイドメロディとは少し異なるのですが、「音楽理論的な正しさよりも、ニュアンスとして格好良いかどうか」を最優先に採用した結果だと思います。音符としての正確さよりも、ニュアンスの強さを大事にする姿勢は今でもずっと大切にしていますね。
しらスタ:ブルーノート(※あえて音程を少し下げることで、独特の切なさ、哀愁を生み出す音のこと)的なアプローチともまた違う、絶妙な音程の掠め方をしていて、聴くたびに「うわ、絶妙で格好良い!」と楽しくなります!
――続いての番組の後半では、ファンの間で長年議論されてきた「サビの歌詞と発音の秘密」や、サビで繰り出される「固めの裏声」、語尾のビブラートへの並々ならぬこだわりなどについて深く迫っていきました。
<番組概要>
番組名:シアーミュージック presents しらスタのボイトレディオ
パーソナリティ:しらスタ、YOSUKE
放送日時:毎週火曜 21:00~21:30
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/f/voitradio/message
番組公式X:@voitradio_tfm