平日夜の日本橋に、働く大人たちの歌声と無数のシャボン玉が舞う――9月17日、東京・日本橋のCOREDO室町テラス 大屋根広場で、第2回となる「COREDO室町テラス企業対抗のど自慢大会」が開催された。今年は昨年の21チームから大幅に増え、31チームが参戦。現地を訪れてみると、2回目にして早くも「日本橋ならでは」の大会カラーが見えてきた。
■「ビル」ではなく「街」で戦う、日本橋ののど自慢
同大会の参加資格は、三井不動産が運営するオフィスワーカー向け会員制サービス「&BIZ(アンドビズ)」の会員であること。日本橋エリアで働く人や、周辺企業・店舗の関係者らがチームを組んで参加した。西新宿の夏の風物詩として知られる「新宿三井ビル のど自慢」がひとつの巨大オフィスビルを舞台に、入居企業同士が競い合う“ビルの祭典”だとすれば、日本橋大会のフィールドは“日本橋という街”そのもの。
今年の顔ぶれを見ても、野村ホールディングス、トヨタ自動車、ベネッセコーポレーションといった大手企業から、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、さらには日本橋の老舗うなぎ店「日本橋いづもや」まで実に多彩だ。しかも会場はCOREDO室町テラスの屋外広場。買い物や食事で訪れた人も自由に行き来でき、ステージと観客席の距離もかなり近く、仕事帰りに“街のお祭り”にひょいっと立ち寄るような気軽さがある。
■新宿が「シュレッダー紙吹雪」なら、日本橋は「シャボン玉」!
この大会を特徴づけるのが、応援で大量に宙を舞う「シャボン玉」だ。新宿三井ビルのど自慢の名物といえば、シュレッダー紙による豪快な紙吹雪。いっぽう、日本橋ではステージ前の応援団がシャボン玉マシーンを構え、歌の盛り上がりに合わせて噴射する。
夜の日本橋にライトを浴び、風に乗って無数のシャボン玉が空に舞い散る。その向こう側に見える熱唱が、実にエモい。
■宇宙服でサザン! 日本橋で「宇宙を感じる」
そんな会場で観客の心をがっちりつかんだのが、宇宙航空研究開発機構だった。宇宙服を思わせる青、銀、オレンジの衣装で登場した男女3人、選んだ曲はサザンオールスターズの「夢の宇宙旅行」。エントリー時の意気込みも、そのものズバリ「日本橋で宇宙を感じましょう!」だ。
その空間全体が一気にスペーシーな空気に包まれ、彼らのパフォーマンスの後には、会場内の投票ボードに赤いシールがびっしり。観客投票でも最多の票を集めた。
■「彼女を手ぶらで帰さない」仲間の執念が応援賞に
ニッセイコムには、ステージに立つ前から明確なミッションがあった。「メンバーの一人が昨年の大会で6位でした。だから今年のミッションはただ一つ。“彼女を手ぶらで帰さない”」。AAAの「さよならの前に」を披露するメンバーを後押しするように、応援団も全力でエールを贈る。
ステージと客席の境目が消えたかのような一体感で、会場を自分たちの空間に変えた熱量が実を結んで、見事「応援賞」を獲得。彼女は、手ぶらでは帰らなかった。
■プロ級のハーモニー! 「20年の集大成」のTISIが3位に
歌唱力で会場をうならせたのが、3位に入った22番のTISIだ。アカペラ出身者とバンドボーカル出身者による男性デュオがチョイスしたのは、コブクロ「君という名の翼」。
「約20年の集大成をぶつけます!」との意気込みに偽りはなかった。2人の声が重なると、突如まるでコンサート会場になったかのよう。伸びやかな歌声と美しいハーモニーに、観客もじっくり聴き入っていた。
■しまじろうを連れて「卒業」!? ベネッセの“大人チャレンジ”
2位は、ベネッセコーポレーション。のど自慢好きなら、この名前に覚えがあるだろう。新宿三井ビル大会にもたびたび登場する常連で、昨年の日本橋大会にも参戦し5位に入賞。今年のエントリー時には「新宿から日本橋に応援団連れて乗り込みます!」と宣言していた。選曲は、まさかの尾崎豊「卒業」。
しまじろうのパペットを片手に熱唱する姿は、「こどもちゃれんじ」ならぬ、さながら“大人チャレンジ”。応援団も手慣れたもので、ペンライトを振るタイミングから盛り上げ方までベテランの風格が漂い、ステージと客席をまとめてひとつのショーに仕上げていた。
■老舗うなぎ店の大将も参戦! 日本橋の懐の深さ
編集部が個人的に注目したのは、「日本橋いづもや」だ。日本橋育ちの老舗うなぎ店の3代目大将が、「うなぎをマイクに持ち替えて」ステージへ。ステージ前には、日本橋の飲食店仲間たちが詰めかけ、その雄姿と迫力の歌唱を全力で応援する。着物姿の女将まで加わって、地元勢ならではの結束力で会場を盛り上げた。
さっきまでJAXAが宇宙服でサザンを歌っていたと思えば、今度は板前スタイルの大将が、ゆずの「栄光の架橋」を熱く歌い上げる。宇宙から食文化まで。これほど振り幅のある面々が同じステージに立つところが、日本橋という街の多様性と懐の深さなのだろう。
■優勝&ベストパフォーマンス賞の“二冠”はインフォコム!
そして31組の頂点に立ったのは、インフォコム。渡辺真知子「かもめが翔んだ日」で会場を沸かせ、見事優勝。さらにベストパフォーマンス賞も同時受賞という“二冠”の快挙を達成した。
エントリー時の意気込みは、「部署の仲間で頑張ります!!」と実にシンプル。だがステージに男女混成5人が登場し、渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」を歌い出すと、会場のボルテージは一気に上昇。
実は直前の「日本橋いづもや」の大応援団とは対照的に、ステージ上の5人よりも応援メンバーのほうが少ないという、少々心細い布陣だったインフォコム。ところが、透き通るようなヴォーカルとキレキレのダンスが始まると、そんな人数差をものともせず、会場全体をぐいぐいと引き込んでいった。
「日本橋という街」で働く人たちが、企業や業種の垣根を越えて集まるこの大会。老舗の大将も、宇宙開発に携わる人も、大企業の会社員も、ステージに上がれば同じ“歌う人”だ。2回目にして、この街らしい「のど自慢」の形が、早くもできあがってきたようだ。














