
90年代、女性アーティストを同じラジオ枠やフェスのラインナップに並べることさえ敬遠された米音楽業界。その状況に抗う形で生まれたのが、サラ・マクラクラン(Sarah McLachlan)主導の音楽フェス「Lilith Fair(リリス・フェア)」だった。約30年を経て、その精神を受け継ぐように誕生したオリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)主催のDaisy Chain Fields。世代を超えてつながる女性たちの連帯と、音楽が社会に働きかける力を二人の対話からひもとく。歴史的な一日が生まれた背景に迫る、米『Rolling Stone』デジタルカバーのインタビューを完全翻訳。
何十年もの間、ファンはサラ・マクラクランに同じ質問を投げかけ続けてきた。「Lilith Fairをいつ復活させるの?」。1997年から1999年までの夏に開催された、女性アーティストによる巡回型フェスティバルは、音楽業界にはびこる性差別、そして「ひとつのコンサートに複数の女性アーティストを出演させることはできない」(ましてやラジオで女性アーティストの曲を続けて流すことなどもってのほか)と言い放つプロモーターたちに対する、マクラクランからの真正面からの回答だった。それから30年近く、シンガーソングライターである彼女の答えも変わらなかった。Lilith Fairは過去のものだ、と。「私はもう歳を取りすぎた」と、彼女は昨年Rolling Stoneに語っている。「もしまた開催するなら、若い誰かが先頭に立って、以前とは違うものにしてくれたらいいと思う」
その「若い誰か」となったのが、オリヴィア・ロドリゴだった。彼女は8月29日、カリフォルニア州アーバインのGreat Parkで、女性アーティストのみが出演する自身のフェスティバル「Daisy Chain Fields」を初開催した。ラインナップには、チャペル・ローン、ドーチー、ビキニ・キル、ガービッジ、ザ・ブリーダーズ、ミツキ、Not for Radioら、ジャンルも世代も異なる強力なアーティストたちが名を連ねた。歓喜に沸く4万5000人の観客を集めたこのイベントでヘッドライナーを務めたオリヴィアは、ニューアルバム『You Seem Pretty Sad for a Girl So in Love』の楽曲を次々と披露。さらに、自身が敬愛するヒーローたちをステージに招き、アラニス・モリセットとは「Ironic」、スティーヴィー・ニックスとは「Landslide」を共演し、マクラクラン本人も登場した。「夢を見てるみたい」とオリヴィアは観客に語った。「マジで人生最高の日!」
実は、オリヴィアがDaisy Chainを企画するにあたって最初に電話をかけた相手がマクラクランだった。「そのときの光景を、写真みたいにはっきり覚えています」と、オリヴィアはRolling Stoneのインタビューでマクラクランに語る。「電話するまでにものすごく緊張していて、すごく寒かったから、家の暖炉の前で小さくなってたんです。自分に『やっちゃえ! やっちゃえ! きっと優しくしてくださるから!』って言い聞かせてました。あなたに祝福していただけて、アドバイスやサポートまでいただけたことが、本当にうれしくて。私にとって、ものすごく大きなことでした」。一方、マクラクランによれば、答えは即座にイエスだった。「一瞬で喜びと高揚感に包まれた」と彼女は言う。「『ハレルヤ! ついに誰かがトーチを受け取って、その先へ運んでくれる』って思った」
Daisy Chain開催を記念して、オリヴィア、マクラクラン、チャペル・ローン、ドーチーの4人がRolling Stoneの最新デジタル・カバーを飾った。この画期的なフェスティバルでは1000万ドルの寄付金が集まり、〈Center for Reproductive Rights〉や〈Planned Parenthood〉をはじめ、女性や少女を支援する非営利団体へ寄付される。さらに慈善活動家のメリンダ・フレンチ・ゲイツが同額を上乗せしたことで、総額は2000万ドル(約32億円)となった。Daisy Chain開催の数日前にロサンゼルスで収録された今回のビデオ・インタビューには、オリヴィアとマクラクランに加え、Rolling Stone共同編集長のシャーリー・ハルペリンとシニアライターのアンジー・マルトッチョが参加。Daisy ChainとLilith Fairを立ち上げた経緯、音楽業界の性差別、互いの音楽の好きなところ、そして女性アーティストだけが出演するフェスティバルが持ちうる力について語り合った。「自分が感じていることを、そのまま受け入れてもらえた最初の表現手段が音楽だったんです」とオリヴィアは言う。「成長していくなかで、音楽は私にとって安心できる場所でした。だから女の子たちがDaisy Chainに来て、その感覚をほんの少しでも味わってくれたら、それ以上にうれしいことはありません」
By Shirley Halperin, Angie Martoccio
Visuals by CARIN BACKOFF
本インタビューの映像版
Lilith FairからDaisy Chainへ、受け継いだトーチ
マルトッチョ(RSシニアライター):オリヴィア、Daisy Chain Fieldsがどのように実現したのか教えてください。かなり前からやりたいと思っていたそうですね。
オリヴィア:数年前からアイデアはあったんですけど、自分にとってあまりにも大切なことだったので、口に出すのが怖いというか、ずっとそんな感じだったんです。私が大好きなものが全部交わる場所なんですよね。ライブをしていて客席を見ると、若い女の子や女性たちが互いにつながって、泣いたり、自分の感情を思いきり味わったり、何かしらのカタルシスを得たりしている。その力の大きさは、いつもすごく強く意識してきました。それに私は昔から、女性の権利やリプロダクティブ・ヘルスケア(※性と生殖に関する医療)にも強い関心があったので、これ以上ないくらいぴったりな企画だと思ったんです。もちろん、サラのLilith Fairからも本当に大きな影響を受けました。10代の頃にその存在を知ったんですけど、最初に思ったのは、あそこに行けた人や出演できた人たちがとにかく羨ましい、ということでした(笑)。(マクラクランのほうを向く)もう、最高にクールだと思ったんです。皆さんがどれだけ多くの壁や障害にぶつかったのかを読んで、本当に勇気づけられました。あなたがいなかったら、私は絶対に今ここにいません。本当に感謝していますし、今日ここにいてくださることがすごくうれしいです。
マクラクラン:ありがとう。私も本当にうれしいし、あなたのことをとても誇りに思ってる。それに、こうしてその一員になれたこともうれしいわ。
Daisy Chain Fieldsの会場写真(Pooneh Ghana for Rolling Stone)
Daisy Chain Fields reminded us that even when times feel dark, we can be each others spark see you next year ◡̈ pic.twitter.com/drs7qDCRpx — Daisy Chain Fields (@daisychainfield) September 3, 2026 Daisy Chain Fieldsのダイジェスト映像
ハルペリン(RS共同編集長):お二人はもともと面識があったんですか? 以前に会ったことは?
オリヴィア:ないです。
マクラクラン:ないの。実はこれが──
オリヴィア:そうなんです、直接会うのは今日が初めてなんです!
ハルペリン:今日が初対面なんですか?
マクラクラン:直接会うのはね。
オリヴィア:電話では話したことがあります。

ハルペリン:そうなんですね! オリヴィア、サラの音楽を最初に知ったのはいつでしたか?
オリヴィア:たぶん、最初に聴いた曲は『トイ・ストーリー』だったと思います(『トイ・ストーリー2』の「When She Loved Me」)。まだ幼い頃で、アーティストとかアルバムっていう概念もよくわかっていなかったけど、その曲を聴いて、「なんて心を揺さぶる、美しい曲なんだろう」って思ったのを覚えています。もちろん、あなたの曲は全部そうなんですけど。
マクラクラン:ランディ・ニューマンに感謝しなくちゃね。
オリヴィア:それから10代の頃に『Surfacing』を知って、当然のように夢中になりました。あなたには本当に刺激を受けていますし、あなたがやっていることすべてに心を動かされています。
ハルペリン:サラ、初めてオリヴィアの音楽を聴いたときのことと、そのときどう感じたか教えていただけますか?
マクラクラン:最初に聴いたのは「drivers license」だった。「これは誰? なんて素晴らしい声、なんて素晴らしい曲なの」って思ったわ。もちろん教えてくれたのは娘で、「絶対聴いたほうがいいよ」って。それでアルバムを最初から最後まで聴いたの。当時はまだ毎朝、娘を学校まで車で送っていたから、ずっとリピートで流れていてね。だから1年半くらい、あなたの音楽が私の朝のサウンドトラックだったの。
オリヴィア:すごくうれしいです。そういう時間って大事ですよね。私も母に学校まで送ってもらっていたときのことや、その車の中でかかっていたCDを覚えています。今の自分にものすごく大きな影響を与えていますね。
ハルペリン:どんなCDだったんですか?
オリヴィア:母は本当に音楽の趣味がいいんです。ノー・ダウトの『Return of Saturn』を教えてくれたのも母で、今でも大好きなアルバムです。母はライオット・ガール系のパンクが大好きで、ベイブズ・イン・トイランドのファンなんですよ。私が彼女たちを知ったのも母のおかげ。ウィーザーとか、グリーン・デイとか。そういう音楽を聴いて育ちました。

ハルペリン:オリヴィア、フェスのチケットは30分で完売しました。驚きましたか?
オリヴィア:もちろん、ものすごくうれしかったです。でも、このラインナップを見たら、サラ、ドーチー、チャペル、レイチェル・チノウリリ、ビキニ・キルって、私の大好きなアーティストばかりなんですよ。だから、みんなも私と同じくらい、このメンバーを観られることにワクワクしてくれたのがすごくうれしかったです。
マクラクラン:これで失敗するわけがないでしょう。
マルトッチョ:では、「Daisy Chain」というタイトルについて伺います。もちろん、デイジーの花をつないだ花輪というイメージがありますが、そこには象徴的な意味もありますよね。一つひとつは小さくても、つながることで個々よりずっと強いものになる。これはどのように思いついたんですか?
オリヴィア:まさにそれが比喩なんです。私たちは一緒になることで、ずっと強くなれる。一つひとつの存在がつながって、壊すことのできないものを作る、ということです。よく考えるんですけど、私たちを抑えつけようとする人たちは、私たちが圧倒され、孤独を感じることにつけ込んでいる。だから、希望や連帯感に満ちたコミュニティを育めるようなイベントを作ることには、今の時代、ものすごく大きな力があると思います。
ハルペリン:「チェーン」というものを世代のつながりとして捉えるのも、とても力強いですよね。サラがLilith Fairを始めて、素晴らしい歩みを残した。そのあと、しばらく何もない時期があって、今またこうしてチェーンがつながっている。(同様のフェスとしては)ブランディ・カーライルのGirls Just Wanna Weekendや、ジョニ・ミッチェルのJoni Jamsもあります。トーチを受け継いできた女性たちが、今この瞬間にまた集まってきている。それが素晴らしいと思います。世代が混ざり合っているのも最高ですね。
オリヴィア:そう思います。みんなで腕を組んで、一緒に何かをやっているような感覚があるんですよね。
ハルペリン:誰かのシーンだとか、ある年代のシーンだとか、そういう分断もないですよね。上の世代のアーティストにも参加してもらうことは、オリヴィアにとって重要でしたか?
オリヴィア:このラインナップを見ると、ただただ私の大好きなアーティストばかりなんです。誰がいつ生まれたとか、そういうことはあまり考えていませんでした。本当に、私が刺激を受けている女性たちなんです。それがすべての核でした。それと付け加えたいんですけど、出演してくださるアーティストは全員、完全に無償で参加してくださっています。収益の100%がチャリティに寄付されるんです。すごいことですよね。皆さん、刺激を与えてくれる素晴らしいミュージシャンであるだけじゃなくて、世界のことをきちんと考えている素敵な人たちでもある。それにはすごく励まされます。
マルトッチョ:サラ、オリヴィアの世代がLilith Fairの精神を受け継いでいるのを見て、どんなことを感じますか?
マクラクラン:本当に心強い。特に今の時代、女性たちが力を合わせて、よりよいことのために共通の目標へ向かって集まれば、大きな力を発揮できるんだと示すことが、とても大切だと思う。今の私たちには、そういうものの一部になれる機会が必要なのよ。今の世界では、あらゆるものが私たちを分断して、引き離して、離れ離れにして、小さな存在のままにしておこうとしているでしょう。だから私たちには、何かを祝う機会も、お互いを称え合う機会も必要なの。それと同時に、みんなが信じている、本当に大切なメッセージに光を当てる機会も必要だと思う。
オリヴィア:本当にそうです。これ以上うまく言えないです。
Lilith Fairが打ち砕いた音楽業界の性差別
マルトッチョ:実はシャーリーはLilith Fairに行ったことがあるんですよね。すごくいいなと思って。
ハルペリン:そうなんです。ニュージャージー州カムデンでした。ツアーの中では、あまりお気に入りの会場ではなかったかもしれませんが。
マクラクラン:でも、ニュージャージーのファンは本当に素晴らしいのよ。
ハルペリン:ええ、本当に。正直、細かいことはあまり覚えていないんですが、タンクトップと汗、それから、ほとんど女性ばかりの観客の中にいることが、妙なくらい自然に感じられたことは覚えています。それまで、そういう経験はほとんどなかったと思います。あえて言うなら、とても安心できる場所だった。それもDaisy Chainの狙いの一つだったんですよね? 女性たちが集まって、一緒に音楽を楽しめるセーフプレイスを作るという。
マクラクラン:正確に言うと、女性だけじゃなくて、みんなが集まって音楽を祝える場所ね。女性だけのためのものにするつもりではなかったの。もちろん女性たちを前に押し出す場ではあったけれど、誰もがそこに加わって、その喜びや安心できる空間を一緒に分かち合えるべきだと思っていたわ。
オリヴィア:本当にそう思います。それこそがライブ・ミュージックの特別なところですよね。世界がどんどんデジタル化していくなかで、コンサートはすごく大切だと思います。普段の生活ではなかなか表に出せない感情を、自由に表現できる場所なんじゃないかなって。ネットを見ていると、列に並んでいるときに女の子同士が出会ったり、あるいは単純に人と人が出会ったりして、それが一生の友達になるという話を本当によく見かけます。そういう生身の人間同士のつながりはすごく大切だし、だからこそライブ・ミュージックは今まで以上に重要なんだと思います。
マクラクラン:それはAIにも奪えないものね。
オリヴィア:そうですね。


ハルペリン:あるいは携帯電話にも、と言うべきかもしれないですね。Lilith Fairのドキュメンタリー(※2025年作『語られざるリリス・フェア:Building a Mystery』)を観ていて思ったのは、観客がステージ上で起きていることにものすごく集中していたことです。出演者のなかには、観客側がほとんど知らない人たちもいましたよね。それでも、圧倒的な力を持ったアーティストがいる。たとえばトレイシー・チャップマンは、口を開いた瞬間に聴き入ってしまう。携帯電話という気を散らすものがなかったからこそ、目の前で起きているライブにもっと深く入り込めた部分もあるのかなと思いました。サラはどう感じていますか? 今のライブでは、「『Angel』だ、携帯を出さなきゃ」というお客さんもきっといると思います。オリヴィアにとっては日常茶飯事ですよね。お二人はそういう状況をどう感じていますか?
マクラクラン:まあ、当然変わったと思う。今言ったように、活動を始めた頃はそんなことに向き合う必要はなかった。でも今や携帯は、みんなの体の一部みたいなものになっていて、何でも記録しておきたがるでしょう。それを私がどうこう言うことでもないと思うの。携帯を禁止にしているアーティストもいるし、それも理解できる。でも私はかなり「人は人、自分は自分」っていうタイプだから。「自分が体験したいように体験すればいいんじゃない?」って思ってる。(ロドリゴに向かって)あなたは完全にデジタルな世界の中で育ってきたわけだから、私よりずっとうまく話せるんじゃないかな。
オリヴィア:いやいや。私は逆に、それ以外をほとんど知らないんですよね。でも、どこかですごく楽しい時間を過ごしていて、「写真を撮って、この瞬間を覚えておきたい」と思って携帯を取り出すのって、素敵なことだと思います。そこにはちょっと美しいものがあるというか。ただ、コンサートに行くと、目の前の人が最初から最後までずっと動画を撮っていることもあって。「それ、本当にあとで見返すのかな?」って思ったりします(笑)。でも、見返す人もいるんでしょうね。
マクラクラン:いるのよ。うちの娘がそうだから。
オリヴィア:そうなんですね。
マクラクラン:まあ、娘は短い映像をちょこちょこ撮るくらいなんだけど、それを何度も何度も見返すの。そうやってそのときのことを思い出して、あの瞬間の喜びをもう一度味わってる。だから、そういうところは微笑ましいわよね。
オリヴィア:それは素敵ですね。
『語られざるリリス・フェア:Building a Mystery』トレイラー映像
マルトッチョ:サラ、ご自身のキャリアが今のようなデジタル時代に始まっていたら、どんな感じだっただろうと考えることはありますか?
マクラクラン:私だったら、あまりうまくやれなかったんじゃないかな。
オリヴィア:そんなことないですよ。
マクラクラン:ただ、私は自分があの時代に成長できたことを、本当にありがたく思ってる。キャリアの最初の頃にいろいろつまずいたり、手探りで進んだりすることを、静かな環境の中で経験できたから。別に、とんでもないことや、ものすごく悪いことをしたわけじゃない。でも、そういうことで自分自身を決めつけられずに済んだのよね。今の若いアーティストが背負っている大きなプレッシャーの一つがそこだと思う。この社会では、一つでも間違ったことをしたり、何かまずいことを言ったりすれば、すぐにキャンセルされかねないでしょう。(ロドリゴに向かって)だからこそ、こういう、多くの人を怒らせることになるような取り組みの先頭に立っているあなたは、本当に勇敢だと思う。でも、そんなことは気にしなくていい。自分が信じるもののために立ち上がっているあなたは立派だと思うわ。

ハルペリン:Lilith Fairが始まった背景には、当時の音楽業界に存在していた性差別への明確な反発がありました。当時、私もラジオ業界の実情を取材していましたが、女性アーティストの曲を続けて流さないとか、場合によっては同じCM枠の中ですら流さないという状況がありましたよね。
マクラクラン:同じ1時間の中ですら、流してもらえなかったのよ。
ハルペリン:まさにそうです。Letters to Cleo(※90年代にボストンで結成されたオルタナティブ・ロック・バンド)のケイ・ハンリーにコラムを依頼したときのことを覚えています。あまりに印象的な一文だったので、書き留めておいたんです。「90年代のロック・ラジオという男社会の混戦を突破するため、ほとんど不可能に近いハードルを飛び越えてきた、道を切り拓いた革新的な(女性たち)」。30年経った今でも、彼女は当時の怒りを抱えています。というのも、バンドにはヒット曲があったのに、女性シンガーがいるという理由で、なかなか次のヒットにつなげられなかった。当時はオンエア枠をめぐる競争があまりに激しかったからです。
ではサラ、Lilith Fairを形にしていくなかで、そうした反発に直面するのはどんな経験でしたか? ドキュメンタリーを観ていると、「本当にこんなことができるの?」「本当に人が来るの?」「お金を払って観に来てくれるの?」と、みんなが驚いている場面がたくさんあります。何もかもが、ものすごく新しい試みだったように見えました。
マクラクラン:そうとも言えるし、そうでもないかな。私はまったく疑ってなかったの。(ロドリゴに向かって)あなたが今回、こんな素晴らしいラインナップを組んだのと同じね。私には、「できるふりをしていれば、そのうち本当にできるようになる」みたいな気持ちがあった。業界のそういう振る舞いはあまりにも当たり前になっていて、私たちもすっかり慣らされていたのよ。もちろん、それを受け入れていたわけじゃない。でも、それが普通のルールとして存在していた。私はそんなの馬鹿げてると思っていたし、自分にできる限り抵抗してきた。Lilith Fairをやったのも、そういう状況への反発だったと思う。誰かに「無理だ」と言われると、私はむしろもっと強く押し返して、その人が間違っているって証明したくなるの。こんなに単純で、こんなに馬鹿げた話なら、なおさらね。
オリヴィア:そういうところ、大好きです。
マクラクラン:ものすごく頑固なのよ(笑)。
オリヴィア:私もです。時代がどれだけ変わったかということは、強く感じています。Lilith Fairのドキュメンタリーを観て、ラジオで女性アーティストの曲を2曲続けて流すとか、フェスのラインナップに女性を2人入れるとか、そういうこと自体が問題になっていたと知って、本当に驚きました。今の世界で活動している私は、そういうことをあまり経験してこなかったからです。それは、サラや同じ世代の人たちが壁を壊してくれたことがすごく大きいと思っています。真剣に受け止めてもらうために闘って、同じマイク、同じステージに立つ権利のために闘ってくれた。そのことには、いくら感謝してもしきれません。Daisy Chainは、音楽界の女性たちがここまで歩んできたことを祝う場でもあると思っています。

マルトッチョ:サラ、当時と比べてかなり状況は良くなったと思いますか? それとも、まだまだ先は長いでしょうか?
マクラクラン:両方ね。あなたが言ったように、私たちは驚くほど大きく前進してきたと思う。今は女性アーティストが活躍できる場所がしっかりあるし、音楽業界の中でも、舞台裏でも表舞台でも、大きな力を持つ女性がたくさんいる。でも、その反動として今、世界の政治や社会で起きているのが、女性の権利や人権を後退させようとする動きなのよね。アメリカだけじゃなく、世界中で。だからこそ、私たちが持っているプラットフォームを使い続けること、自分たちの声を上げ続けることが本当に大切だと思う。私たちの声には力があるし、影響力もある。その影響力を使って、前向きな社会の変化を生み出したり、何か力のあることをしたりするのは、自然なことだと思うの。それは責任のようにも感じる。昔からずっとそうだったわ。
オリヴィア:少し両刃の剣みたいなところがありますよね。音楽界の女性には以前よりずっと多くのチャンスがあって、真剣に評価されるようになって、フェスのヘッドライナーにもなって、いろんなことができるようになった。でも、Lilith Fairが開催されていた頃のほうが、アメリカでは女性のリプロダクティブ・ライツが広く保障されていた。そこには、ちょっと奇妙なねじれがありますよね。
マクラクラン:だからこそ、声を上げ続けて、こういう問題に光を当て続けることがとても大切なのよ。
音楽だけでは終わらない、Daisy Chainの使命
マルトッチョ:オリヴィア、Daisy Chainでは〈Planned Parenthood〉から〈Baby2Baby〉まで、素晴らしい非営利団体といくつも連携していますよね。どうやってこれらの団体を選んだのか、その過程について少し教えていただけますか?
オリヴィア:どの団体の代表の方ともお会いすることができました。ほとんどの団体のオフィスにも足を運んで、素晴らしい活動をしているロビイストやボランティア、弁護士の方々にも会いました。扱っている問題も幅広くて、たとえば〈Planned Parenthood〉なら中絶や避妊に関する医療を提供していますし、〈Johns Hopkins Center for Indigenous Health〉は、低所得コミュニティの先住民の母親たちを支援しています。私自身、こうした問題について本当にたくさん学ぶことができました。
それと、フェスについてもう一つすごく誇りに思っていることがあって。音楽とは別に、Daisy Chain Reactionというエリアを設けているんです。そこでは、この10団体の創設者の方々に会えて、どんな活動をしているのか、自分に何ができるのかを知ることができます。みんなにぜひそこへ行って、いろいろ見て回って、何か新しいことを知って帰ってもらえたらと思っています。なので、それを作り上げていくのもすごく楽しかったです。
ハルペリン:素晴らしいですね。サラ、Lilith Fairのドキュメンタリーで驚いたことの一つが、爆破予告や抗議活動です。サラ自身、そんなことがあったのを忘れていたと話していましたよね──
マクラクラン:まあ、私は嫌なことは忘れちゃうほうだから……。
オリヴィア:(笑)それ、すごくいいですね。
マクラクラン:ちょっとだけPTSDみたいなものはあったわね。「ああ、こんなこともあったんだ。忘れてたな」って。でも私は、どうしてもいいことのほうに意識を向けるタイプなの。ああいうこと全部をくぐり抜けていくのは、本当に大変だった。「私のキャリアは比較的穏やかなものだったのよ。特別ものすごいことをしていたわけでもないし、ゆっくりとキャリアを積み上げていった感じだった。だからLilith Fairは、突然スポットライトの中に放り込まれて、何かを本気で守らなきゃいけないということがどういうものなのか、初めて叩き込まれた経験だった。私は本当に何もわかっていなかったしね。それに今回のあなたみたいに、最初から明確な意図があったわけでもなかった。「ただ楽しくライブをやりたい。だったら、私が大好きで尊敬している女性たちをみんな集められたら最高じゃない? どうして彼女たちはもっと評価されていないんだろう? じゃあ、自分たちでやればいいじゃない」って。本当にそれくらい単純な発想だったの。それで、あとは全部そこから雪崩れ込むようについてきたのよ。
ハルペリン:オリヴィア、Daisy Chainでも似たような懸念はありましたか?
オリヴィア:もちろんありました。私はすごく不安になりやすいタイプなので、そういうことをいつも考えています。このフェスをやろうと決めたときも、正直、その規模の大きさに圧倒されました。会場を探して、プロモーターを探して、出演してくれるアーティストを集めて、本当に大がかりなことなので。でも実際には、驚くほどスムーズに進んだんです。それは、みんなが本当にこういうものを必要としていたからなんじゃないかなと思います。電話したアーティストは全員、本当に喜んでくれて、すごく前向きで、誰かを説得する必要がまったくなかったんです。心の底では、みんな誰かの役に立ちたいと思っているんだなって。それが、このフェスを作って得た大きな気づきのひとつでした。


マルトッチョ:ラインナップをどう組んでいったのか、もう少し詳しく聞きたいです。最初に声をかけたのは誰でしたか? チャペルとはもう何年も友人ですよね。
オリヴィア:ラインナップを考えるのは楽しかったです。女性が作る音楽が大好きなので。そこは私の得意分野です(笑)。寝室にホワイトボードを置いて、連絡したいアーティストの名前を全部書いていきました。もちろん、スケジュールが合わなかった人もいましたけど。このラインナップは誇りに思っています。
マクラクラン:とんでもないラインナップよね。
オリヴィア:普通のお客さんとしてフェスに行って、これだけ素晴らしいアーティストを観られること自体がすごく楽しみなんです。友達でもあるチャペルは、本当にフェミニストだし、クィアの人たちのために声を上げている人で、彼女のことをすごく尊敬しています。キャスリーン・ハンナ(ビキニ・キル)には、たしか2番目か3番目くらいに電話しました。彼女に賛同してもらえたことは大きかったです。ものすごい先駆者ですし、このフェスの大きなインスピレーションでもあるので。だから、すごく楽しみです。
マルトッチョ:スティーヴィー・ニックスまで出演しますよね。
オリヴィア:それはいまだに自分でも信じられないです。実際にステージに立っているのを見るまでは信じられないかも(笑)。本当にすごいことですよね。スティーヴィーとは何度か会ってお話ししたことがありますけど、とにかく素敵な方で。1曲歌ってもらえることになったなんて、信じられないです。このフェスを準備していると、毎日ディズニーランドにいるみたいな気分なんですよ。「今日はさらに何をしたら最高になる? ほかに何ができる?」みたいな。最高です。
マルトッチョ:スケジュールなどの都合で、呼びたかったけれど実現しなかったアーティストもいましたか?
オリヴィア:もちろん、いました。でも、来年がありますから。
ハルペリン:ツアーにしてしまえばいいですよ。サラはその辺り、よく知っていますよね。
マクラクラン:(ささやくように)それはやめたほうがいいわよ(笑)。

ハルペリン:では仮に、Daisy Chainでお二人が一緒に歌うとしたら──
オリヴィア:それは言えないですよ。来てもらわないと。
ハルペリン:でも、この記事が出るのは開催後ですよ。
オリヴィア:あ、そっか(笑)。じゃあ正直に言うと、リハーサルで「Angel」を歌っていると、みんなずっと泣いてるんです。冗談じゃなくて、毎回みんな腕を見せてきて、「見て、鳥肌立ってる」ってなるんですよ。
マクラクラン:(オリヴィアが)「じゃあ、これは一人で歌ったほうがいいんじゃないですか」みたいなことを言うのよ。「何言ってるの? ダメに決まってるでしょう!」って。
オリヴィア:出しゃばりたくなかったんです。「こんなに美しい曲なのに」って思って。
マクラクラン:あなたなら絶対にうまく歌えるわ。いや、ごめん。最高に歌ってたわよね。(笑)
オリヴィア:最高に歌えました! すごくよかったです!
ハルペリン:「Ice Cream」も、オリヴィアとサラで歌うのに合いそうだなと思っていました。
マクラクラン:ああ、それもかわいいわね。正直、私は何だって喜んでやるわ。

怒りも希望も、音楽が人を動かしていく
マルトッチョ:ここまで音楽界における女性の存在の大切さについて話してきましたが、昨日亡くなったドリー・パートンのことにも触れたいと思います。私自身、まだそのことを受け止めきれていないんですが、お二人にとって彼女や彼女の音楽はどんな存在でしたか?
オリヴィア:聖人みたいな方ですよね。ソングライティングの才能といい、歌声といい、人柄といい。亡くなったことが悲しいです。彼女って、誰のことも悪く言わなかったじゃないですか。私はずっと、そういうところが素敵だと思っていて、自分ももっとそうなりたいと思っていました。かなりひどいことをするような人について話すときでさえ、ものすごく寛大で、愛を持って接していた。今の世界には、そういう姿勢がもっともっと必要だと思います。彼女は本当に、私たち人間の最良の部分を体現していたと思います。
マクラクラン:そうね。素晴らしいお手本だったし、まさに元祖というべき存在だった。いつだって優しさをもって人と接していたわよね。
マルトッチョ:オリヴィア、Daisy Chain Fundについて教えていただけますか? フェスの収益は100%、そこに充てられるんですよね。
オリヴィア:チケットの売り上げはすべてそこに入ります。それから「Serena Joy」という曲も作って、その曲の収益の一部もDaisy Chain Fundに寄付されます。今後何年かかけて、この活動をもっと広げていくのがすごく楽しみです。いろいろな団体について知ったり、フィランソロピー(慈善活動)そのものについて学んだりするのは興味深い挑戦でした。これからも学び続けて、支援を続けていきたいです。
マルトッチョ:今後も毎年、Daisy Chainのために「Serena Joy」のような曲を作るのはどうですか? ぜひ聴きたいです。
オリヴィア:あ、それは考えてなかったです。
マクラクラン:プレッシャーをかけちゃダメよ(笑)。
オリヴィア:なかなかの挑戦ですけど(笑)。でも、考えてみます。
マクラクラン:フェスでは、ファンがただ参加するだけじゃなくて、寄付など金銭的な形でも基金を支援できる機会はあるの?
オリヴィア:そうなんです。実は、ボランティア活動をするとDaisy Chainのチケットが当たるプログラムをやったんです。たしか「合計1000時間に到達したらチケットをプレゼントします」という目標だったんですけど、Daisy Chainのために、みんながそれぞれの地域で合計3000時間もボランティアをしてくれたんです。それには本当に感動しました。この前も、10代の女の子2人がDaisy Chainのチケットを目当てに地元でボランティアを始めた、という話を見かけて。しかもちゃんとチケットも手に入れたんです。よかった! でもそれだけじゃなくて、2人はそこで友達になって、その後も一緒にボランティアを続けているんですよ。そういう話を聞くと希望をもらえますし、それこそがDaisy Chainの目指しているものだと思います。だから、これからもそういうことをもっと増やしていきたいです。今の私たちには、もっと必要なことだと思います。


ハルペリン:サラ、初めて行ったフェスティバルは何でしたか? 覚えていますか?
マクラクラン:Lilith Fairよ。
ハルペリン:本当ですか? それ以前にフェスへ行ったことがなかったんですか? カナダにはフェスがないんでしょうか?
マクラクラン:ううん、実際のところ、ほとんどのフェスはカナダを素通りしてしまっていたの。それに私はいつもツアーに出ていた。19歳でレコードを作り始めて、それからずっとツアーをしていたから、いつも何かしらのサイクルの中で各地を移動していたのよね。だから、そういうものをたくさん見逃していた。同世代のミュージシャンに会える機会といえば、たいていアワード・ショーくらいだった。ツアーに出続ける仕事って孤独なのよ。もちろんバンドやクルーはいるけれど、それでもかなり孤立した気持ちになることがある。それに、周りはほとんど男性だった。みんないい人たちだったけど、女友達や女性たち、それから同じ立場にいる仲間と過ごす時間が恋しかったの。だからアワード・ショーみたいに、ほかのミュージシャンと実際につながれる機会は、私にとって大きかった。Lilith Fairをやりたかった理由の一つもそこにあったのよね。特に自分と同じような、この変わった仕事をしている女性たちと、実際に一緒に時間を過ごしたかったの。

マルトッチョ:オリヴィアはどうですか? 初めて行ったフェスを覚えていますか?
オリヴィア:初めてのフェスは、自分が出演した2022年のグラストンベリーです。
マクラクラン:最初からとんでもないところに行ったのね。
オリヴィア:そうなんです(笑)。でも、かなりすごい体験でした。すごく感情的なステージでもあって。というのも、その前日に「ロー対ウェイド判決」が覆されて(※1973年、米連邦最高裁が人工妊娠中絶の権利を認めた判決。2022年に覆された)、私はリリー・アレンと一緒に歌う予定だったんです。もともと彼女の「Fuck You」を一緒に歌うことは決まっていたので、「もう、これ以上ぴったりな曲はないよね」って。
マクラクラン:ええ。完璧なタイミングだったわね。
オリヴィア:「今夜、この曲を誰に捧げるかは決まったね」って。特別な経験でしたし、振り返ってみると、あの体験はDaisy Chainにも少しつながっていると思います。あの曲を歌って、私たちから権利を奪ったばかりの最高裁判所に捧げて、客席を見渡したときのことを覚えています。みんな本当に怒っていて、その感情を解放する場を必要としていたし、私自身もそういう解放が必要だった。あのステージが、その後の自分の歩みに影響を与えたのは間違いないですね。
「たった一人の心に、希望の火を灯せたら」
ハルペリン:昨年、オリヴィアがグラストンベリーに出演したとき、私もロンドンにいたんです。でも、あなたの出番の時間にはもうベッドに入っていたので、私たちは「グラストンベッディ」って呼んでいました(笑)。とはいえ、あのステージは歴史に残るようなものでしたよね。
オリヴィア:ありがとうございます。
ハルペリン:あのときはロバート・スミスもステージに登場しましたよね。私がオリヴィアのいちばん好きなところの一つは、世代の違う音楽を自然につないでいて、それをまったく不自然に感じさせないことです。私が子どもの頃は、「30年前の音楽なんて聴くな」と言われたものでした。当時で言えば40年代や50年代の音楽なので、自分たちとは結びつかないものだと思われていた。でも今はずいぶん違う気がします。昔の影響源も、古臭いものとして見られていない。ロバート・スミスのような人をステージに招くことで、オリヴィア自身もその理由の一端を担っていると思います。
オリヴィア:ああ、面白いですよね。みんな、何か計算してやっていることみたいに言うんですけど、本当に私はどの時代、どの世代の音楽も大好きなだけ。もちろんザ・キュアーも大好きです。ザ・キュアーを嫌いな人なんているんですか? 史上最高のバンドですよ。ロバートやサラのような方が、こういうふうに私を応援してくださるのは光栄です。別にそうしなきゃいけないわけじゃないのに。自分が子どもの頃から刺激を受けてきた人たちに支えてもらえることは、私にとって大きな意味があります。だから、それを当たり前だとは絶対に思っていません。幸運だし、恵まれているなと思います。
ハルペリン:Lilith Fairのドキュメンタリーでもう一つ驚いたのが、出演していた女性たちがみんな素敵だったことです。リズ・フェアもジュエルもサラも、みんな素敵に歳を重ねていますよね。
マクラクラン:それは音楽があるからね。若くいさせてくれるのよ。まあ、わからないけど(笑)。幸せで、満たされていることって、それ自体が美しいんじゃないかな。私は今回、ある意味では”母なる存在”みたいな立場で参加させてもらっているけれど、私から見ればスティーヴィー・ニックスこそがそういう存在なの。そう考えると、とても素敵よね。たぶん私たちはみんな、あなたがこのトーチを先へ運んでくれていることを喜んでいると思う。招いてもらえるのは光栄だし、今もこうして参加できる存在でいられて、自分たちにもまだ何か差し出せるものがあると感じられることもうれしい。
オリヴィア:光栄なのは私のほうです。
マクラクラン:今は音楽が時代を超えて自由に行き来しているし、それが30年前、40年前の音楽でも関係ない。いろんなものがまた戻ってきているでしょう。今の人たちは、本物らしさみたいなものに強く惹かれているんだと思う。むき出しで、本能に訴えかけてきて、情熱があって、作為的ではないものにね。

マルトッチョ:サラ、最近、私も大好きなアーティストの、かなり昔の曲をカバーしましたよね。ジュディ・シルの「The Kiss」です。彼女はかなり忘れられ、見過ごされてきたアーティストだと思います。
マクラクラン:彼女はもっと評価されるべきなのに、あまり知られていないアーティストの一人よね。人生も短くて、悲劇的だった。本来なら得られて当然だった機会や後押しを、十分に得られなかったの。だから彼女の音楽について知ることができたのは素晴らしかったし、数年前にプロデューサーを通じて初めてその曲を聴いたときは圧倒された。「どうしてみんなこの曲を知らないの?」って。それでミュージシャン仲間に話したら、「いや、ジュディ・シルならみんな知ってるよ。あなたどうしたの?」って言われて(笑)。どうやら私は世間知らずだったみたい。でも、彼女の音楽をちゃんと知ることができて、しかも聴いた瞬間に本能的に反応するような曲に出会えたのはうれしかった。「これは今まで聴いた中でも最高に美しい音楽の一つ。絶対に歌いたい」って思ったの。だから、カバーするのはすごく自然だったし、楽しかったわ。
ハルペリン:Lilith Fairはものすごく成功して、ものすごい勢いで駆け抜けて、それから突然終わりましたよね。
マクラクラン:地上から消えたみたいにね。
ハルペリン:その後は何があったんでしょう? さっき話したブランディたちのような動きや、今回のDaisy Chainが登場するまで、どうしてLilith Fairのようなものが再び現れなかったんですか?
マクラクラン:私は、いいところで終わらせるのが好きなの。それに、物事を新しい形に変え続けるにも、どこかで限界があると思ってる。正直に言うと、私は3年間Lilith Fairにものすごく深く関わっていたし、その一方でレコード会社からは「新しいアルバムを作ってくれ」ってずっとせっつかれていた。Lilith Fairの夏に向けてずっと準備をして、それが終われば今度は自分のツアーに出る。その繰り返しで、気づけば4年間ずっと「そろそろ新作を出さなきゃ」という状態だったのよね。
だから、「家に帰って、実際に土に触れて、少し普通の暮らしをしないとダメだ」って思ったの。そうしないと、自分が体験したことを客観的に見られないし、そこから何か書くこともできない。だから、ある意味では自分のためでもあったのよね。これに入り込みすぎて、自分を見失いかけてる。家に帰らなくちゃ、って。その時点でいったん休むのが自然にも思えた。二度とやらないと決めていたわけじゃない。ただ、本当に疲れ切っていたの。とにかく大変だったし、私も若かったから。
オリヴィア:想像もできないです。
マクラクラン:だから、あなたが若いのはいいことよ(笑)。今でも「またやるべきだよ」って言われると、「もう、またあれをやり切れるかわからないわ」って思うもの。
マルトッチョ:当時、これがこんなふうに──
マクラクラン:まったく想像してなかった。そもそも私の中では、”成功”の定義がかなり違っていたの。「一日の終わりに鏡の中の自分を見て、自分が成し遂げたことを誇りに思えるか?」。それが成功だった。「素晴らしいアーティストをラインナップに揃えたら、人は来てくれる?」。ええ、きっと来てくれるって。
でも、その先のことは本当に考えていなかった。今もそうだけどね。私は”今”を生きるタイプだから、これから何が起きるかもわからないし、未来の計画もあまり立てないの。「これはうまくいくはず。楽しそう。じゃあやろう」って始めて、あとはひたすら黙々と、実現させるために動く。だから驚いたし圧倒されたのは、必ずしも成功そのものというより、むしろ反発の大きさだったと思う。それまでのキャリアでは経験したことがなかったから。物事が本当はどう動いているのかも、まだよくわかっていなかったしね。でも結局、自分が信じているもののために立ち上がれば、必ず反発は起きるのよ。
ハルペリン:オリヴィアにとって、Daisy Chainの”成功”とはどんなものですか?
オリヴィア:ああ、こういうことって、どうしても陳腐に聞こえずに話すのが難しいんですけど……Daisy Chainに来た女の子たちが前向きな体験をして、何か素晴らしいことをしている女性たち、自分自身を信じて、コミュニティに還元している女性たちを見て、それに刺激を受けて、自分の人生でも少しそういうことをやってみようと思ってくれたら、本当にうれしいです。
世の中には、本当に素晴らしいことをしている人がたくさんいると思うんです。私は、そういう人たちを称えて、そこに光を当てられる場所を作りたかった。今の世界には、ネガティブなことや、人の心をくじくようなこと、残酷なことがあまりにも多いじゃないですか。だから、もしこのフェスがたった一人の心の中にでも希望の火を灯せたら、それ以上望むことはないですし、私にとってはそれだけで、このフェスをやった意味があったと思えます。
マクラクラン:全然陳腐じゃないわ。すごく素敵よ。
オリヴィア:ありがとうございます。
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From Rolling Stone US.
Production & Clothing Credits RODRIGO Styling by CHLOE AND CHENELLE for A-FRAME AGENCY. Hair by MARY KENDALL for DEW BEAUTY AGENCY. Makeup by KARISSA OHANLON for A-FRAME AGENCY.Vintage top. Vintage EDWIN DENIM via BLUEY DENIM. Styling assistance by ALEX BULLOCK, RYLEY CARR, JENNA BIERSCH.
DOECHII styling by SAM WOOLF. Hair by MATTHEW JEAN PIERRE. Makeup by CHELSEA UCHENNA. Vintage DOLCE & GABBANA bra via THE ARCHIVE X YANA. Vintage ROBERTO CAVALLI corset via THE ARCHIVE X YANA. Vintage choker and rings via THE ARCHIVE X YANA. Custom made Jeans by LEVIS. Shoes by CHANEL.
ROAN styling by GENESIS WEBB. Hair by VIRGINIE PINEDA. Makeup by DEE CARRION. Outfit custom made by COACH.
MCLAUGHLIN Hair and makeup by TYLER COLTON. Jewelry by PYRRHA.
Production by ZACH CRAWFORD for CRAWFORD PRODUCTIONS. Production coordinator RACHELLE PHILLIPS. Photographic assistance MIKE LOPEZ, JUAN ROMAN, ALEXANDER COOPER SMITH. Digital Technician BENOIST LECHEVALLIER. Production assistance by MIKE ROMAN and ROBBY FIORE. Flowers by THE PETAL WORKSHOP. Post Production by HOUSE STUDIOS
Video Interview Shoot Director JULIE GOLDSTONE. Video Interview DoP GRANT BELL. Video Interview Camera Operators LENE LEE, IRIS LEE and SARAH GREENWALD. Video Interview Gaffer LENA LEE. Video Interview Sound Engineer GLO MARIE. Video interview Location via MINT LOCATIONS.



