NTT西日本は7月17日、福岡市のTKPガーデンシティ博多で自治体向けイベント「ミライ自治体Day 2026」を開催した。人口減少による人手不足が深刻化する中、AIやBPO、インフラ管理を組み合わせた自治体DXソリューションを紹介したほか、先進自治体の事例や最新の取り組みが披露された。
自治体DXの最新事例を福岡で紹介
「ミライ自治体Day 2026」は、NTT西日本が自治体向けDXソリューションを紹介するイベントで、2024年から開催され今年で3回目。西日本の主要都市で開催されており、福岡での開催は今回が初めてとなる。九州エリアの自治体が抱える課題をテーマに、約25自治体・50人が参加した。
会場では「地域DX」「社会インフラ」の2テーマを中心に、「行政事務のスマート化を実現するBPO」「ワークフロー型生成AIによる業務効率化」「道路維持管理業務の効率化と高度化」等の各種ソリューションを展示。
自治体によるDX事例のセミナーや交流イベントも開催され、メディア向け内覧会では各展示の解説に加え、兵庫県DX推進監・妹背勝幸氏による「兵庫県での地域DXの取り組み」が紹介された。NTT西日本は、通信インフラ事業で培ったノウハウとDX技術を生かし、人口減少時代を見据えた自治体DXを提案している。
AIとBPOで自治体業務を改革
人口減少による職員不足や財政制約が深刻化する中、NTT西日本は、AIとBPO(Business Process Outsourcing)を組み合わせた「行政事務のスマート化」を提案する。職員が担うべき業務とアウトソーシング可能な業務を切り分けることで、行政サービスの維持・向上を目指すという。
同サービスでは、オンライン申請や「書かない窓口」、AIによる問い合わせ対応などでフロントヤードをデジタル化し、バックヤードではAIやAI-OCR、BPOを活用して受付やデータ入力、審査などの業務を効率化する。
同サービスは令和8年度から福岡県小郡市で行政事務センター運営委託業務として導入。市庁舎内に行政事務センターを設置し、基幹・内部事務を含む約80に及ぶ事務処理の合理化・集約化を行う予定だ。
同サービスにおいて、NTT西日本はプロジェクトを主導する立場に立ち、さまざまな企業のサービスを組み合わせて提供している。例えば、申請管理システムに電通総研が開発した「minnect 申請管理」の活用を検討している。オンライン申請と紙申請を一元管理し、AI-OCRやRPAによって業務を効率化している。また、自治体クラウド(BCL)上に構築し、全国の自治体が共同利用できる「minnect 申請管理」はSaaS版も提供している。
「tsuzumi 2」を核に自治体向け生成AIを展開
NTT西日本は、NTTが開発したLLM「tsuzumi 2」を活用した自治体向け生成AIソリューションを紹介した。「tsuzumi 2」は、日本語や日本の行政制度への理解に優れ、安全性や運用性を重視した純国産LLMで、自治体業務で求められる文書作成や問い合わせ対応などへの活用を想定している。
会場では、医療福祉費支給制度「マル福」を題材にしたデモを実施し、日本固有の制度を適切に理解した回答を示し、日本語性能の高さを披露した。
行政システムでは、インターネット環境だけでなくLGWANやマイナンバー系など、ネットワークごとに異なる要件への対応が求められる。このため同社は、自治体ごとの利用環境に応じて、企画・導入から運用までを一体で支援し、ガバメントクラウドや閉域環境でも生成AIを活用できる構成を提案している。
また、今までAI活用が進んでこなかったマイナンバー利用事務系業務において、ガバメントクラウド・標準化の登場とAWSの閉域版GenU(Generative AI Use Cases )の登場により、住民記録、戸籍、税、後期高齢、介護、国保、国保年金、福祉などの業務で、ガバメントクラウド上での閉域型AIの実証・導入が可能となった。
会場では、「給与支払報告書」を題材とした複雑な要件の不備チェックを実施するAIエージェントのデモを実施し、制度や業務ルールを踏まえた判断支援を行うことで、職員の確認作業の効率化や業務負担軽減につながる可能性を紹介した。
AIで道路インフラの維持管理を効率化
イベントではインフラのサイバーセキュリティや、最先端の光技術を使った次世代通信基盤、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を実現する取り組み、ドローンやAIを活用した水道の点検・管理技術など、社会インフラの強化策に関するソリューションの展示も行われた。それらの中でも博多駅前道路や埼玉県八潮市などで発生した道路陥没事故など、今注目を集めている道路インフラの安全性を確保する維持管理業務の効率化と高度化技術を見ていきたい。
同社は既にNTTグループと地元建設会社でコンソーシアムを組み、自治体の道路や公園の維持管理業務を包括的に行うことで、業務の負担を軽減し、持続可能な自治体運営の支援を行っている。
それらのうち、最も気になるサービスがAI解析技術を活用して道路上の社会インフラの台帳整備・巡視巡回を行うサービス「Audin AI」だ。高度成長期に整備されたインフラの老朽化が進む中、同サービスは点検車両のドライブレコーダー映像をAIで解析し、低コストで道路点検を実現する。
AIによる判定も道路附属物の台帳整備、白線のかすれなどの路面塗装や、標識のさびなどの附属物の劣化判定だけでなく、路面のひび割れ・ポットホールの発見・点検もできる。
同技術は、すでに広島県府中市などでカーブミラー、ガードレール等の台帳整備で採用され活用されている。
自治体DXは次の段階へ
内覧会では、最後に兵庫県のDX推進監 妹背勝幸氏が、同県で進めるDXの取り組みについて講演した。兵庫県では「スマート兵庫」戦略のもと、「行政」「産業」「暮らし」「デジタル基盤」の4分野を柱に、全庁横断でデジタル施策を推進している。
同氏は県独自の地域社会DXとして「ひようごTECHイノベーションプロジェクト」も紹介。同プロジェクトでは健康・福祉やインフラ、防災など幅広い分野で実証を進め、令和4~7年度に47の課題に取り組み、40件の成果につながったという。
また、兵庫県内市町が取り組む地域社会DXの代表的な成果として、観光客が訪れる灘五郷エリアにおける自動運転技術を活用した新たな移動体験の実証、灘五郷エリアにおける酒蔵や飲食店と連携たビジネスモデル構想の検討、交通データを活用した渋滞状況の可視化とデジタルツインを用いたシャトルバスの実証運行 なども紹介された。
今回のイベントを通じて見えてきたのは、自治体DXが単なる業務効率化ではなく、人口減少社会における行政サービスの持続性を支える取り組みへと発展していることだ。NTT西日本は、AIやBPO、インフラ管理などを組み合わせたソリューションを通じて、その実現を支援する姿勢を示していた。












