NTT西日本は、地域DXや社会インフラをテーマにした地方公共団体職員向けイベント「ミライ自治体 Day」を7月22日に開催した。会場は、大阪市京橋の本社敷地内にあるオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE」と同社研修センター「PRISM」。
同イベントでは、地域課題の解決や住民サービスの向上につながる最新の事例やサービスを紹介する展示やセミナーなどを行っており、屋外ではアバターオペレーター「バスあば」を搭載したレベル4自動運転EVバスの試乗も行われた。
自動運転バスに乗客見守るアバター搭載、収益アップもねらう
地域の重要な交通インフラであるバスの運営は、人手不足や利用者の減少といった影響を大きく受けているサービスのひとつだ。NTT西日本では、西日本エリアを中心に20地域で、ドライバーフリーのレベル4自動運転EVバスを社会実装する取り組みを進めている。
現在、走行環境にあわせて3タイプの自動運転車両を採用しているが、仏Navya Mobilityが開発するEVバス「EVO」を使うケースが最も多く、国土交通省の採択を受けて実施されている自治体でのEVO車両活用は、2024年度は15件、2025年度は10件(2026年度は未公開)となっている。
また、総務省は地域社会DX(デジタルトランスフォーメーション)推進パッケージ事業として、レベル4自動運転事業の早期実現を後押ししているが、2026年度に採択された先進事例12件のうち4件がEVO車両を使用した取り組みだ。なかでも、デジタル庁が集中支援する自動運転先行的事業化地域として、EVO車両を使用する香川県三豊市が採択されており、いち早く社会実装されることが期待されている。
全国で複数の実証実験が行われる中で、NTT西日本の強みのひとつが通信機能だ。地域によっては、バス走行エリアが山間部となる場合、同社の強力な通信機能で自動運転を安定して運用可能。積雪などの厳しい気象条件にも対応でき、通常のバスでは通行が難しい細い道もスムーズに走行できる。その他にもケースとしては少ないが、自動運転では難しいとされる踏み切りの通過も対応できるよう、近鉄日本鉄道と連携しているという。
さらにNTT西日本が独自に取り組んでいるのが、AVITAと開発するアバターオペレーター「バスあば」を搭載した車両の運用だ。車内にある大型ディスプレイに音声でやりとりできるアバターを表示し、乗客とコミュニケーションを取ることで、「人に見守られている安心感」を提供できる。加えて、周辺地域や店舗の情報、クーポンなどを提供するといったサービスにより、大きな課題である収益面を支援することで、持続可能性の高い運用につなげる。
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今回の試乗会では、NTT西日本の本社敷地内を7人乗りEVOでゆっくりと回りながら、遠隔で対応するオペレーターに話しかけてコミュニケーションしたり、クーポンの表示を確認したりする体験ができた。
乗客はマイクを使ってアバターに質問できるが、逆に画面の向こうにいるオペレーターが車内の様子をカメラで見て質問するなど、いろいろなコミュニケーションが楽しめることがわかった。自動運転バスは最大時速が20kmと比較的遅いため、アバターと会話する時間もとれそうだ。
アバターを通じて、乗車客どうして交流を深めるきっかけにするといったこともできそうだ。しかしこの試乗会もそうであったが、他の乗客に遠慮してアバターに話しかけるタイミングがなかなかつかめない場面もあった。実際の運用でも、車内でアバターと音声でどのような対話をするのか少し検証する必要があるかもしれない。
バスの走行に関してはブレーキングがやや慎重すぎる感じはあったが比較的スムーズで、横断歩道を歩く人を検知して自動で止まるデモも問題なく、この点は現地で調整すれば問題はなさそうだ。
課題はどのように運用するかで、現時点ではバス1台に対して1人がリモートで管理しており、今後は複数名で複数車両に対応できるようにしていくという。アバターのオペレーターも含めて人手不足を解消できるのか、今後はAIの活用もあわせて検討しなければならないだろう。
メンテナンスに関しても地域で対応できるよう調整しているが、ひとつの自治体だけで対応するのは負担が大きいため、広域で複数の車両に対応できるようにすることをめざしているとのこと。いずれにしても、技術や規制面での課題はほぼクリアできており、実証実験からいよいよ本格的な実装が近づいていることが伺えた。
住民サービスに資する窓口・バックヤードの改革の推進
ここからは話題を変えて、展示会場からふたつのソリューションを紹介する。
自治体業務で最も課題となっているのが、住民サービスの提供に必要な窓口・バックヤードの改革だ。デジタル庁では窓口業務のDXに必要な機能を「窓口DXSaaS」として提供しており、“書かないワンストップ窓口”の実現を支援している。具体的には、手続きガイダンスや申請書類作成、マイナンバーカードの利活用、API連携など4つの機能を提供している。
NTT西日本では業務プロセス改善(BPR)につながるツールとして、自治体にあわせた「窓口DXSaaS」の開発を伴走支援しており、実現可能な“書かない窓口”運用パターンとして以下の3つを提案している。
- マイナンバーカードや運転免許証といった本人確認書類の読み取り、住所や氏名などの記入を簡略化する
- スマホやタブレットで事前登録した申請情報をQRコードにして窓口で読み取る
- 聞き取りで職員がタブレット等で入力する
また、バックヤード業務としてはガバメントクラウドとの連携や共通データベースを利用して、複数の課にまたがる業務をリアルタイムで共有するシステムも構築できる。最終的には、オンラインのみで来庁せずに申請を完結させることも可能になる。
水道DXによる点検業務・日常管理の効率化
高度経済成長期に整備された水道設備の老朽化は全国で大きな課題になっているが、人口減少により料金収入が減る一方で対策に必要なコストは増えており、対応する職員の負担を減らすソリューションが求められている。
上水の点検業務では、衛星の画像データを独自のアルゴリズムで解析する広域漏水検知をはじめ、ドローンによる施設や設備の点検、またAIで路の劣化を予測するといったソリューションを開発している。日常管理作業をスマートメーターの導入で負担を軽減したり、道路を掘り返さず点検できる非破壊検査を導入したり、トータルで業務の効率化を図る。
具体的な導入例としては、和歌山市で人工衛星アステラのデータをAI解析による漏水調査を実施しており、調査範囲を全管路に広げながら現地調査の従来の約4分の1に削減している。
また、山間部に位置する兵庫県朝来市では、地理的条件の厳しい地域の水道を少数の職員で維持管理するためにAIを活用した管路劣化診断で業務を最適化し、漏水の現場確認から修繕まで丸一日かかっていた作業を、いち早く確認することで漏水そのものを減らしている。
さらに下水の点検業務では、狭い管内でも点検できる水上を移動して360度をカメラで撮影できる専用ドローンをジャパン・インフラ・ウェイマークと独自に開発し、AIによる劣化診断を組み合わせて効率化している。
調査の依頼から申請、実施までを一元寛喜するワンストップシステムも構築しているが、対象を水道だけでなく、電気、ガス、通信といったインフラにかかわる6つの事業者と連携し、24時間ウェブ上から申請できるようにしている。主要なインフラへの共同受付を一括して行えるのはNTT西日本ならではだという。
自治体のDXはサービスの質を高め、税金のムダを減らすという点で住民にも大きなメリットがあり、これからもどんどん進めてほしいものだ。






