物語全体に目を向けると、全島民を穏やかに見守り、全力で治療に励むというコトーの姿は連ドラ第1弾から不変。主人公はコトーだが各話に事実上の主人公がいて、彼らのストーリーがじっくり描かれた。
コトー以外で物語の中心となったのは、彩佳、剛洋(富岡涼)、ゆかり(桜井幸子)の3人。彩佳は孤独な闘病に挑み、終盤のメインテーマになるが、剛洋とゆかりの物語もたっぷり描かれた。
剛洋は「コトーのような医師になりたい」と東京の私立中学に入学したもののレベルの高さに挫折寸前。さらに漁師を辞め、島を離れて働く父・剛利(時任三郎)にも危機が訪れる。一方、ゆかりは胃に腫瘍が見つかり、余命3か月の宣告を受けるなど、やはり重苦しいシーンが続いた。
そして現在『VIVANT』(TBS系)で話題をさらっている堺雅人も彩佳の主治医としてたびたび登場。コトーに僻地医療の現実を突きつけるとともに、自身の家族にまつわる厳しい現実を打ち明けるなど重要な役を担った。
その他でも、村役場の民生課長で島へコトーを呼んだ星野正一を演じた小林薫、村役場職員でゆかりの夫・坂野孝を演じた大森南朋、娘・ひな(尾崎千瑛)のぜんそく治療で移住してきた小学校教師・小沢を演じた光石研、妻を亡くし偏屈な「さちおじ」を演じた石橋蓮司ら名優の芝居も当作の醍醐味。名優たちがコトーを演じる吉岡と向き合うとき、与那国島の美しいロケーションと相まって高確率で名シーンとなっていた。
制作サイドでは、のどかな風景と不穏な出来事、温かい人々と苦しい生活、懸命な治療と僻地医療の限界など、真逆の要素を共存させた中江功監督の演出が出色。加えて、中島みゆきの「銀の龍の背に乗って」は、コトーが自転車に乗って走る美しいタイトルバックとともに、ドラマ史に残る主題歌と言っていいだろう。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。
