電通とunerryは7月24日、「猛暑下における生活者の外出行動調査」の結果を発表した。調査は2025年6月1日~9月30日、unerryが運営するリアル行動データプラットフォーム「BeaconBank」に蓄積された人流ビッグデータをもとに行われた。

猛暑時の外出行動を分析

近年、気候変動の進行に伴い、最高気温が35℃以上となる猛暑日の増加が全国的な課題となっている。さらに2026年4月には、気象庁が最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と定義するなど、暑熱環境への対応の重要性は一層高まっている。

猛暑日には、熱中症予防の観点から日中の屋外活動や外出を控えることが推奨されている。一方で、生活者は実際にどの気温水準で行動を変化させるのか、また、その影響は地域や曜日によってどのように異なるのかについては、十分に明らかになっていなかった。

そこで両社は、2025年6月から9月までの全国の外出行動データ(500メートル以上の移動を外出と定義)を分析し、気温上昇に伴う生活者の行動変容の実態を検証した。

土曜日の外出行動の変化は31℃前後から始まっている

全国都道府県の平日、土曜日、日曜日別に12時~14時台の外出率を調査。その平均外出率に対して、最高気温別の外出率を調査したところ、土曜日は、31℃前後から外出の抑制が始まっていることがわかった。

  • 土曜昼間 - 「その日の最高気温」と「夏季の平均外出率」の比較

    土曜昼間 - 「その日の最高気温」と「夏季の平均外出率」の比較

猛暑日の土曜日は、日中の外出が夕方へシフト

最高気温と外出行動変化の関係は、平日、土曜日、日曜日など、曜日別に違いが見られた。

土曜日の猛暑日には、最高気温が30℃未満の日と比較すると9時から16時台の外出率が低下する一方、18時から22時台の外出率が上昇する、外出時間のシフトが見られた。日中の外出率低下の最大幅は14時台の1.9%ポイント、上昇の最大幅は19時台の1.3ポイントだった。

平日の猛暑日は、最高気温が30℃未満の日と比較すると、日中の外出率がやや低下する一方で、18時以降の外出率上昇も最大幅の19時で0.4ポイントと小さく、夕方以降への外出時間タイムシフトは限定的である。

日曜日の猛暑日は、最高気温が30℃未満の日と比較すると日中外出率低下が大きく、13時台から14時台にかけては3.2ポイントの抑制が見られたが、夕方以降へのシフトは最大幅の19時で0.5ポイントと小さく、限定的である。

  • 平日・土曜日・日曜日で異なる最高気温別の外出率

    平日・土曜日・日曜日で異なる最高気温別の外出率

土曜日の外出タイムシフトに地域差も

土曜日の外出のタイムシフト(日中9時~16時台の外出抑制と、夕方以降18時~22時台の上昇割合)と、日曜日の日中(10時~15時台の外出抑制)を、県別に調査した。

土曜日の外出のタイムシフトは、宮崎県(1位)、佐賀県(2位)、長崎県(3位)などの九州地方に顕著に現れ、上位10県を見ても、比較的緯度が低い県が多い。

土曜日の外出のタイムシフトが起きづらい都道府県、日曜日の外出抑制傾向が大きい県には、さまざまな地方からランクインした。この結果から、気温の高さと外出行動の変化の大きさは、必ずしも単純に連動しないことが示された。

  • 外出行動変化に関する都道府県別の調査(上位10県)

    外出行動変化に関する都道府県別の調査(上位10県)

公共交通機関利用が多い都市はタイムシフトが起きにくい傾向

全国都市交通特性調査に基づき、休日の交通手段が、自動車(自動二輪車を含む)移動中心の都市と公共交通機関(鉄道、バス)利用度の高い都市を比較したところ、土曜日夕方以降の外出のタイムシフトに差が見られた。公共交通機関利用度が高い都市の方が、タイムシフトが起きづらい傾向が見られた。

本調査では、500メートル以上の移動を外出と定義したが、公共交通機関利用度が高い都市の方が、日常の買い物等が500メートル以内でも賄いやすいという都市構造なども影響していると考えられる。

  • 都市の主要交通手段の違いによる土曜外出率の比較

    都市の主要交通手段の違いによる土曜外出率の比較

地域や都市構造によって異なる行動変化

今回の調査から、猛暑による生活者行動の変化は、外出の有無や時間帯を比較的自由に選択しやすい土曜日に顕著に現れる一方、翌週への備えや休養を意識する傾向がある日曜日には、外出抑制の傾向が強まることが分かった。また、その影響は地域特性や暑熱環境への適応度、都市構造などによって異なることも明らかになった。

特に注目すべき点は、外出行動の変化が最高気温35℃以上の猛暑日だけでなく、31℃前後から表れ始めていること。この傾向は、WBGT(暑さ指数)31℃以上で熱中症リスクが高まるとされる基準とも近く、生活者が暑さを意識して行動を変え始める一つの目安を示している可能性がある。

一方で、すべての地域で同様の行動変化が見られるわけではない。兵庫県、大阪府、神奈川県、愛知県などでは、外出パターンの変化が比較的小さい傾向が確認された。地下街や駅直結施設などの都市インフラの充実に加え、暑さへの適応が進んでいることなどが要因として考えられる。

さらに、公共交通機関の利用率が高い都市では、外出時間帯の夜間シフトが起こりにくい傾向も見られた。こうした結果は、猛暑時の行動変容が気温だけでなく、地域の移動環境や生活インフラとも密接に関係していることを示唆している。

同調査に助言・協力した国立環境研究所 気候変動適応センターの真砂佳史氏は次のように述べている。

「ここ数年、日本では記録的な暑さが続き、気候変動による長期的な気温上昇がその背景にあります。暑さは、熱中症や睡眠不足、電気代の増加など、暮らしのさまざまな場面に影響します。こうした影響を減らすため、暑さに合わせて行動や暮らし方を変えることを"気候変動への適応"といいます。今回の調査は、人々が外出を控えたり時間帯をずらしたりして暑さに適応している様子を、実際の人の動きから示しました。地域や曜日、交通環境によって行動の変化が異なることから、適応の仕方は一つではありません。気候変動の進行を抑える努力とともに、それぞれの状況に合った備えや工夫を、できることから始めていきましょう。」